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Cover Image for 【レビュー】今やれることと、やりたいこと - 2021 J1 第24節 浦和レッズ vs サガン鳥栖

【レビュー】今やれることと、やりたいこと - 2021 J1 第24節 浦和レッズ vs サガン鳥栖


この記事でわかること

  • 鳥栖の可変と成熟度
  • リカルドの最適解
  • 浦和の保持の狙い
  • 新戦力の貢献
  • 「やり直し」の重要性

五輪中断期間明けの初戦を落としてしまった浦和は、駒場に鳥栖を迎えました。

前回対戦は第2節に遡り、この時は鳥栖の配置に前からのプレスがかけられず、敗戦してしまいました。

今節も主力を欠く中で酒井、平野がいきなりスタメンに名を連ね、どちらかというと守備の局面を重視して試合に入りました。

その結果、手放しで褒められる内容ではありませんでしたが、3位の相手に2-1の勝利。

今できることで勝ち点3を得られたことは大きかったですが、改善を期待したいと思うところもあったので、そういった点を中心に振り返っていきます。

前半① - 鳥栖の可変、浦和の守備

最初の位置は3−4−3と表記されましたが、攻守で形を変えていくのが鳥栖でした。

ボールを持った時は前回対戦時と同様、GK+CB+ボランチで組み立てを行います。

仙頭を中心に浦和のラインの背後と間を出入りしながら優位を作ってビルドアップを完結できることが多く、WB的な飯野と大畑が幅を取る役割として浦和のSHより背後に立ち位置を取っています。

このWB的な2人がボールとともに自らの立ち位置を前へと進めることで、浦和のMF背後で5レーンを埋めつつ、さらにもう1人のフリーマンを生み出す仕組みになっています。

GKの朴がボールを扱えることや立ち位置の良さをベースに、浦和の各ラインから出入りする入れ替わりもスムーズで、よく組織されていました。

前回対戦時も同じような構図で、浦和はその時は前に出ることができませんでした。

リカルドの選択

リカルドはリアリストです。理想のサッカーを持ちつつも、相手との力量差や自チームの状況を考慮し、最適解を探って採用していきます。

今回の場合、順位もそうですが、失点数を見ても、チームとしての習熟度において鳥栖が上回る部分が多かったと思います。

また、浦和は攻守の要となる選手が出場できませんでした。ボールの保持を諦めたわけではありませんが、前線からプレスをかけ続けること、どちらかと言えばトランジションに勝機を見出そうとしました。

前線は明本と江坂の組み合わせになりましたが、これまでのようにサイドに追い込んで中盤で奪い取るというよりは、外に展開させないような追い方になりました。

特徴的だったのが、大久保と田中のプレッシャー。横に広がった鳥栖のCBを外から切ることでサイドへの展開をさせず、中央にパスを入れさせて奪うような形を目指しました。

9:30ではその流れからボール奪取に成功しますが、鳥栖のGKを使ったやり直したや、背後へ抜ける動きと降りる動きのオートマチックさを前に奪い切るシーンはそこまで作れませんでした。

また、鳥栖は背後へ人をしっかりと残せていることから、ボールを失うリスクがある浦和MFライン背後へのパスが失敗しても、切り替えのプレスが素早くかかります。

これにより、平野や江坂を起点にカウンターに出たい浦和のトランジション攻撃は防がれる場面が多かったと思います。

前半② - 浦和の保持の狙い

守備の局面でどう振る舞えるかを優先した人選だったとは思いますが、ボールを持って攻撃することを捨てたわけではありませんでした。

浦和は前半、右サイドから前進する狙いを持っており、それに成功する場面が複数回見られました。

鳥栖の守備陣形は3-4-3のような形で、今季浦和が苦戦しがちな5バックが前に出てくるような方法。

これに対して浦和は、右SBの酒井がポジションを下げることでWBを前へと引き出し、その裏や横で江坂が受けるようなパターンでの前進を試みました。

田中が大畑を牽制する高さを維持しているため、このスペースへアプローチする鳥栖の選手を排除できていたと思います。

中央で良い立ち位置を取っていた平野を経由することも含め、江坂が狙っているスペースで受けることに成功すると、田中のスピードを活かした裏抜けへ。7:50や22:00のシーンが特にわかりやすいと思います。

もう少し特徴を活かしたかった左サイド

一方で左サイドは少し詰まってしまう場面が多かったと思います。今節は西が左SBに入りましたが、その利点を活かし切ることはできませんでした。

右利きの西が左にいるということは、背中を向けていても中央にボールを叩けるということ。

11:50なんかは、西の特徴を活かしたり、敦樹の立ち位置がもう少し良ければ、中央を使ったプレス回避が可能だったのではないか、と思える場面でした。

スローインのクリアボールから江坂と明本のコンビネーションで先制に成功するも、鳥栖の良い配置とライン間の出入りでサイドを変えられると、ひとつずつズラされて失点。同点でハーフタイムを迎えます。

後半 - 鳥栖の対策に嵌った浦和

後半に入ると浦和は敦樹を最初から最終ラインに落とすパターンを導入します。

一方の鳥栖は後半開始直後も積極的なハイプレスで攻勢を強めます。

前半終了間際、「長いボールを蹴らせれば良いから」と声を出していた金明輝監督の思惑通りになってしまう場面もありました。

前半同様にWBの裏を狙いたいところでしたが、ボランチがタイトに江坂について行くことなどもあり、出し先の余裕が奪われてしまいます。

その中でも49:15のように、マークにつかれながらも右サイドで前半同様に突破していくような場面自体は作れました。

オープン気味の展開へ

お互い前から激しくボールを奪いに行く守備なので、その分崩しの局面に移行するまでの時間が短く、クリアボールが中盤に返ってくる時間も短かったと思います。

その際、敦樹が最終ラインに降りている分、中央でひとりになっている平野が処理しなければいけない場面がありました。

トランジションのフィルターがかかりづらく、その結果ゲームのテンポが上がってややオープンな展開になります。

前からの守備も前半に引き続き、54:00に外を切る姿勢は見せますが、GKとボランチを使って回避される回数も増えました。

外を切って中央に閉じ込め、外に脱出させずに奪いたいわけですが、このあたりの練度はもう一歩といったところ。

55分前後からは前半同様に右から前進したい浦和に対する鳥栖の守備がより嵌り始め、詰まってしまう場面が増えます。

浦和は低い位置で定位せざるを得なくなると、MF背後の5+1の出入りをベースとした鳥栖の攻撃に晒され、決定機なピンチを何度か迎えます。

これをなんとか無失点で切り抜けた浦和。ゲームのターニングポイントでした。

平野への期待

この厳しい時間帯に狭い局面をドリブルでボールを運んで陣地回復に貢献できる大久保に加え、新加入の平野が状況を変えようとするプレーを披露。

右サイドで立て続けに奪われたり、リスクを回避した長いボールを拾われていたチームをコントロールするかのように、自ら最終ラインの中央でボールを持ちます。

アンカーの位置に入った敦樹へボールを入れて使う判断を見せると、その次は相手のFW間から運んで縦パス。

前半はトランジションで囲まれてボールを奪われる場面もありましたが、J2との強度の差があったと思います。

しかし、この時のボールの持ち方、晒し方、運び方、パスのスピードや判断などは、リカルドのチームにおける中央の選手に求められる役割であり、それを担える力量を持っていることを端的に示していた場面だと思います。

ただし、それまでの時間で立て続けに自陣でボールを奪われていた浦和は、全体的に相手の背後に立ち位置を移すことができませんでした。

中央を経由しながら相手の背後をつくパスは出始めましたが、それを背後で受ける配置については物足りなかったと思います。

このあたりは試合展開の影響もありますので、次節以降に期待しています。

チームを助けた推進力

飲水タイム後からは両チーム疲れも見え始め、浦和も前からプレスは行くものの75分のように中央からボランチが不在になってしまうことや、撤退を余儀なくされる場面も増えていました。

その中でも大久保や酒井、敦樹らの推進力を中心に前に出て行くこと自体はできていて、その結果として鳥栖の小泉に2枚目のイエローカードが出ていてもおかしくない場面が2回はありました。

特に疲れが出るこの時間帯、運動量を落とさずにプレスバックも継続しつつ、狭い局面から前へとボールを進めていた大久保の貢献は大きかったと思います。

その大久保のプレスバックとドリブルから得たセットプレー。その崩れから獲得したPKを江坂が決め、大きな勝利を収めました。

まとめ - やり直しの重要性

さて、配置を大事にしながらボールを進めていく両チームでしたが、やはり鳥栖の方が上手だったと思います。

そこには前進を試みながらも、やり直しができることに差があったかなと感じていて、前からプレスをかけても仙頭や朴を経由しながらサイドを変えられることが多かったと思います。

駒場で観戦していましたが、鳥栖のビルドアップが詰まりかけたり、ボールホルダーがプレッシャーを受けた際、GKの朴から「俺を見ろ!」と声が出ていたことが印象的でした。

浦和もそれを目指しているとは思いますが、例えば32:35のシーンはそれができずに苦しくなってしまった場面です。

鳥栖のパスミスから自陣でボールを回収し、岩波から西川へパスが渡り、鳥栖がそのままプレッシャーをかけにきた場面。

リカルドも指示しているように槙野へボールを動かしてボールの保持をスタートさせたいところでした。

おそらくこの場面はパスのスピードが遅く西川が複数の選択肢を持てる体の角度、ボールの持ち方ができずにクリアするような形に。これを拾われて二次攻撃を受けることになりました。

後半もそうですが、右サイドから作っていきつつも詰まりそうならGKを使ってやり直す、敦樹らが中央の間に入って経由地となり、サイドを変えるなど、これができればもう少し楽になるのに、という場面は散見されます。

昨年から徐々にできることは増えていますし、今季の開幕の頃から比べてもかなり大きく成長していると思います。

しかし、来年の優勝を狙うのであればもう一、二段階の成長は必須で、それこそ今節の鳥栖のように中央を使ったプレス回避や横のボールの移動、粘り強く何度もやり直すことができる力が求められると思います。

一方で、優勝・ACLを目指すなら、内容に関わらず勝ち点3を取っていくこともまた求められます。

正直、後半開始から60分前後まではいつ失点してもおかしくなかったですが、それ以外では主力を欠いた中での現実的な手法で試合を運び、結果を手繰り寄せたことは大きかったと思います。

また、新加入選手の起用もしているので、戦術的な面だけでなく、シーズンを通した戦略的なメリットを得たことも良かったと思います。

次は天皇杯。J2首位を走る京都は簡単な相手ではないですが、過密日程の中で必ず勝たなければいけない試合です。

台所事情が厳しい中でも粘り強く結果を追うことができるか。注目です。

新戦力をデビューさせながら大きな勝ち点3を獲得した今節。レビューを読んでの感想や意見はぜひ下記Twitterの引用ツイートでシェアしてください!



浦和レッズについて考えたこと

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