この記事でわかること
- 3バックのメリット
- 攻守のポジション移動の弊害
ミッティランからCBを本職とするアレクサンダー・ショルツの獲得が発表されました。
デンの怪我もあって岩波と槙野が出ずっぱりの状況だったポジションに、欧州での実績が十分にある選手が加わります。
もちろん、藤原や工藤といった期待の若手もいますが、ポジションの特性を考えればJ1の舞台に立つことはそう簡単なことではないはずです。
リカルドのサッカーを進めていくうえで、攻撃の最初の一歩を必要最低限のリソースで行えるようになることは重要なことです。
そのために相手を見て適切な立ち位置を取り、良いアングルでボールを受けたり持ったりして、相手の横から運んだり、相手を十分に引きつける。
そういった面はCBに求められますし、会見を読んでもショルツがその能力を有していることも獲得の一因になっています。
センターバックとして彼はビルドアップの能力もありますし、斜めのパスや相手の背後へのパスも出せます。
また、ここまで全ての試合で2人のCBがピッチに立ってきましたが、3人、つまり3バックの導入も現実味を帯びてきたのではないでしょうか。
そこで今回は、3バック導入によるメリットを考えていきます。
3バックオプションの導入に向かうか
リカルドのサッカーを観るうえで、最初にフォーメーションの数字を語ることはあまり意味がありません。
あくまで相手にダメージを与えること、相手のやり方に対して効果的な配置をとって試合を優位に進めることが目的であり、フォーメーションの数字はその過程で現れるものに過ぎないからです。
とはいえ、初期配置とどこを本職とする選手を何枚置くか、という面が試合に影響を与えることもまた事実です。
そういった意味で、ショルツ獲得を契機にリカルドがチームに3バックのオプションを導入する可能性があるのではないでしょうか。
リカルドの会見ではオプションとして持っていることは言及されていて、既に練習で試験はしているかもしれません。また、徳島時代にも採用していました。
我々は2センターバック、もしくは3センターバックという形の両方を持っていますので、良いセンターバックをそろえるのは重要なことです。
「元からいる場所」が変わる
そこで、3バックのメリットについて洗い出しみようと思います。
今季の浦和は基本的に、ボールを保持して試合の主導権を握ろうとします。そのためには安定したボール保持、クリーンなボールの前進による攻撃とそれをベースにした切り替えの守備が必要になります。
4月からCB+柴戸のアンカー、西が状況に応じてヘルプに入る形が機能して結果も出始めました。
一方で、例えば直近の広島戦や名古屋戦ではそれが封じ込められる場面や、そもそもその形が効果的ではない相手である場合も出てきました。
それに対して柴戸を完全にDFラインに降ろして3バック化したり、敦樹を左の3枚目にして解決を図ることもありました。
攻守のポジション移動
もちろん、ボランチを3枚目として動かしても良いのですがこの場合は攻守でポジションの移動が発生します。
その場合、攻守両面で別のポジションを取ることになります。
例えば柴戸や敦樹は最初のビルドアップでは最終ラインにいてほしいが、ボールが前に進んで攻守の切り替えが発生するときは中盤にいて欲しい。
CBも幅を取るために横に移動するが、やはりボールが相手に渡れば中央に戻って守らなければいけない。
攻撃のことだけを考えてポジションを取るわけにもいかないわけですし、守備のときにいるべきポジションから離れるということは、切り替え(トランジション)が発生したときにある程度はリスクを背負うことになります。
3バックを導入すると、元からCBを本職とする選手がそのまま3枚でビルドアップすることになります。
そういった意味では攻守のポジション移動は少なくなりますし、役割も明確化しやすくなるのではないでしょうか。
もちろん、相手も対策はしてくるので例えば今度は3バックから4バック化するという動作も中期的には求められます。
しかし、オプションとして複数のパターンを持っているということは、相手にとっても対策を取る必要があるパターンが増えるというメリットもあるのではないでしょうか。
相手にダメージを与える立ち位置
4バックときにCBがより運んでほしいという側面もありますが、そのためには相手の脇から進むための立ち位置取りも不可欠です。
そして、その場所を取るためには移動が伴い、味方とのスムーズな入れ替わりも必要です。
その点、3バックでは左右のCBが元からその場所にいることになるため、良い立ち位置を取りやすいという利点があります。
また、やや苦戦が見れられる5バックを相手にする時にもメリットがあるかもしれません。
5枚が最終ラインに並ぶ相手はその分、4バックと比べると中盤や前線を1枚削っています。
浦和としてはその脇を起点とすることが求められますし、ゴールに迫るために相手のWBを最終ラインから引き出し、その裏を攻略しようとする意図も見られます。
そのためにSHやSBが状況に応じて幅を取りますが、適切なタイミングでの入れ替わりが必要なので、SBがCBのサポートに下がった時にSHはまだ中にいるという場面もあります。
3バックにするとWBのポジションが生まれ、大外に立ち位置をとる選手が明確化される側面があります。こちらも「移動が少ない」ことで、立っていたい場所に立ちやすいという利点が生まれやすいのではないでしょうか。
もちろん、選手としての質の部分で純粋に上積みとなることを見越しての補強にもなるでしょうが、デンの復調やショルツの加入によって3バックというオプションが見えてくるかもしれません。
個人的には五輪中断期間に本格的に着手するのではと考えていますが、みなさんが考えるショルツ獲得による影響をぜひシェアしてください。