五輪による中断明けから続く連戦もこれが6試合目。しかも前半の途中から強い雨が降ってきたり、湘南がプレッシングを受けそうになったらシンプルに前線のロングフィードを入れることで前に出て行く勢いをそがれたりと、体力的にも精神的にもしんどさのある試合になったのかなと思います。
それでも、前半と後半に1つずつ決定機がありましたし、これは浦和の方が狙いたいスペースを使えた場面だったと思います。
湘南は5-3-2で構えたところから2トップ脇はIH、外のレーンはWBが積極的に前に出て行き、アンカーというか3MFの中央の選手もスペースを埋めるよりも前や左右にどんどん動くのが特徴的で、浦和としては湘南のその全体的に前へ出てくる動きを利用して、特に3MFの背後に出来るスペースを使おうとしていたように見えます。
20'30あたりの平野からの縦パスを小泉が田中ー茨田のゲートの奥で受けてターンした場面もそうでしたし、湘南が前節の広島とは違って人基準でロックしてくるわけではない分、各々がスタートポジションを取った段階での窮屈さはあまりなかったのかなと思います。
ただ、前半は直輝や茨田の背後で起点となるべくボールを受けるのがユンカーになる回数が比較的多く、前節の後半開始早々の超絶ターンのように上手く外せることもありますが、基本的にはポストとして後ろ向きにボールを持ってからプレーするのは得意ではないように思うので、34'35~の大久保と入れ替わって相手DFの脇に流れたように最初から前を向ける状態でボールを受けられる状態を作ってあげたいなと思いました。
この決定機について言うと、小泉がスルーしたユンカーからのパスは左足から出されてこともあって、大久保からすると自分の走る方向とは逆方向に曲がるボールになってしまったのでちょっと難易度が高いシュートにはなってしまったかもしれません。また、大久保が右利きの選手であればあと一呼吸遅れてスペースに入っていってドンピシャのタイミングでシュートが出来たのかなと思います。
杉岡の背中に回るために外に離れて行きながら、内側にある方の足できっちりミートするのは簡単じゃないですが、大岩と杉岡の間に空いたスペースを小泉が先に狙っていてユンカーがトラップをするくらいのタイミングまでは同じ場所を大久保も狙っていて、そこから外に開き始めたのであと1秒でも2秒でも早く杉岡の外側のスペースを見つけて走路変更が出来ていたら、左足でももう少し余裕をもってシュートを打てたかもしれません。
後半に入る段階で浦和は小泉と関根に代えて江坂、明本を入れて3MFの背中のスペースで起点になる役割を江坂に託して、ユンカーと明本が裏抜けを狙いつつ江坂に湘南のDFが出て行きにくい状況を作るようになります。
55'30~のシーンはショルツが一発で湘南の2トップと3MFを置き去りにするパスを通して5バックの前で江坂がフリーで前を向き状況を作ることが出来ました。ショルツが外にいる酒井の方に体を向けながら軽く運んで、直輝の体の向きが外に向いたところでズバッとボールを通したのは素晴らしかったですね。
江坂が前向きにボールを持つと、ユンカーも明本もすぐに裏のスペースへ向かって動き出すことで江坂はフリーのままパスを出すことが出来ていますし、ユンカーは前半の決定機と同様にすぐに3バックの脇のスペースでボールを引き取ってゴール前から湘南の選手を外に引きずり出しています。
ユンカーのおかげで大久保から江坂への花道が開きましたが残念ながらシュートは枠外へ。大久保のシュートよりもこちらの方が難易度としては低いかなと思いますし、江坂はこういうところで決めて来たのを見ているのでこっちこそ決めて欲しかったなと思います。
DAZNの中継の画角が近かったこともあってボールから離れた場所でどのような駆け引きがされていたのかを知ることは難しいですが、後半の浦和のボール保持では明本がユンカーと2トップのように並び、江坂がトップ下のような位置に入ることで右外の高い位置からスタートする選手がいなくなったため、次第に左CBの杉岡が大胆に中央に絞って江坂や下りてボールを受ける明本を潰しにかかる場面が目立つようになりました。
飲水タイムの後に浦和は5バックに変更しますが、ボール保持での中盤から前は2CH、トップ下で江坂、ユンカーと明本が2トップという構成から変化させなかったように思います。WBを置いたことで両外でスタート位置が高い選手を用意しようとしたのかもしれませんが、湘南はWBがこれに対応すれば良いので浦和は攻撃においてはあまり奏功しなかったのかなと。
ただ、これらは湘南が前回対戦を踏まえてこの試合の守備の準備をしてきたということもあったのではないかと想像します。
以前もどこかの試合の雑感で書いたように5-3-2の場合は中央の3レーンに8人が集結しており、3CB+3MFが揃っている状態を崩すのは簡単ではないので、4バックvs5バックであれば外レーンで2(SB+SH)vs1(WB)を作りやすく、前回対戦ではそこを利用しながら侵入を試みました。
また、全体で積極的に前向きのアクションを起こしたことによってDFラインは高くなり、その裏のスペースをユンカーに走られてゴールを決めれています。
これらを踏まえて前半から低い位置がスタート位置になる宇賀神、酒井に対して古林、高橋の両WBは早めに縦スライドすることを決めて、浦和のSBから次にボールが出やすい場所(内レーン)をはっきりさせて対応したり、前の選手がプレッシングに行っても全体の間延びは覚悟で最終ラインはあまり上げすぎずに裏抜けするスペースを作らないようにしていたのではないかと思います。1vs1の当たりの部分を見ると杉岡の帰還が湘南にとってはかなりのプラスになっているように見えます。
湘南はボール保持も手前からボールを繋ぐというよりは早めにロングフィードを飛ばすことで、中盤の選手がポジションを取りなおす時間を作って局面のバトルの回数を担保することが出来ていたと思いますし、後半途中にウェリントンが入ってからはなお一層この傾向が強くなったと思います。湘南は池田が後半から入ったにも関わらずスプリントが12回、直輝も試合トータルで18回と、中盤のところで良く走ったんだなというのが見て取れます。
また、後半は浦和の方も手前から運びながらボールを前進させるよりは少し長めのパスを使いながら前に出てくる湘南の中盤の背後や最終ラインの背後を狙ったため、間延びしやすくなってトランジションに対応できる人数が少なくなってしまいます。湘南のプランにある中盤のバトルを制することについては浦和のプランがそれを助けていたという面もあったのかもしれませんね。
浦和は試合の入りではユンカー、関根、大久保の3枚が湘南の3バックをチェックして、小泉が中盤に入る4-5-1の守備隊形で手前から繋いで入ってこようとするところを待ち構えながら、SBが外に引き出されても中央の3枚が最終ラインをカバーしようとしたのではないかと思います。前節の広島戦の後半途中でも見られた方法でしたし、実戦の中で引き出しを増やしていっているように感じます。
しかし、湘南はその構えた選手たちの上を通すボールで前進させてきたり、大外→ポケットの流れで崩すよりシンプルにクロスを入れて来たためあまり効果が出ず、前半の飲水タイムあたりで小泉を前に出したおなじみの4-4-2に変更しました。
どちらかと言えば、攻守とも湘南の方が浦和のやりたいことを外せていたのかなとは思います。ただ、浦和の方はまだ連戦が続くわけで、リカルドの試合後コメントにもあるように、中2日で迎える川崎戦もにらんだ選手起用になったことはこの試合に向けてのプランや試合中の修正内容にも影響していたと思います。
試合前の段階ではSBが下がり目でWBを引き出す役割になるとすれば、自分でスペースへ出て行く明本よりも宇賀神の方が良いかも、と思いましたが、槙野→宇賀神とボールが入った時に右足で捌こうとするとパスを出せる角度は中方向に限定されてしまうので、左利きの明本が左足でライン際にボールを置くことが出来ればWBの裏へも、中方向へも、どちらにもパスを出せる体勢が作れます。前に出てもそのまま裏を使われてしまうと思えば古林のプレッシングの出足が鈍くなったかもしれません。
ただ、それなら右サイドで右利きの酒井の側からこれをやって、高橋の背後を狙っても良かったのかなと。関根は昨季からSHに入った時のスタート位置が内レーンになることがかなり増えていますし、この試合では後半から右SHが江坂に代わったので酒井の前(高橋の背後)のスペースを使おうとする選手がいない状態になっていたのはあったと思います。
またCBのところで槙野よりショルツの方が自分で持って運んだり、パスを出したりできるので、ショルツがボールを持った時に個人の能力差としてvs高橋の局面(ボール有無問わず)は酒井が自分で外せるよね?という期待はあったかもしれません。
連戦なのでトレーニングはリカバリ重視になるのは仕方ないですし、選手の疲労度やプレータイムの配分を考えた時にその試合でやれることが制限されてしまうのはやむなしかなと思いますので、この試合については関根、小泉、江坂、明本のプレータイムを抑えられたこと、岩波はお休みできたこと、その中で最低限の勝ち点1は積み上げられたことをヨシとした方が良いのかなと。タイトルにもしましたが、これだけ縛りがある状態なので、そりゃ難しいですよね。
来年ACLを闘う、さらにリーグ戦でも優勝を目指すということであれば、シーズンを通してこのように選手をやりくりしながら戦えないといけないわけです。J2はリーグ戦は長丁場としても、カップ戦は天皇杯だけでシーズンと並行して行う試合数も多くないですし、リカルドが悩みながらもこういうスケジュールを経験していることはプラスになると良いなと思いますし、それは選手たちも同様で、敦樹、明本、小泉などこのように次々試合がきて、なおかつ試合が進むつれて緊張感が高まるものになっていくというのをこの段階で経験していることは大切です。このスケジュールの中でタイトルやACL出場権を勝ち取ることが出来れば、監督、選手、クラブ、それぞれに大きな自信になるのではないかと思うので、しんどいけど頑張ってほしいなと思います。
これで、8月の試合はすべて消化して、リーグ戦は3勝1分1敗、天皇杯は勝ち上がって準々決勝進出と、結果だけを見れば目標としているACL出場権獲得に向けて前進できていると思います。月が変わるので1ヶ月のまとめはしようと思いますが、さすがに8/29の次の試合が9/1、9/5と詰まっているので8月分のまとめは8月+ルヴァン杯川崎戦(H&A)までにして、川崎戦が終わってからやろうと思います。
疲労は見えているとはいえ、かなり馴染んできた酒井がこのタイミングでいないのは残念ですが、川崎の方も三笘、田中碧が抜けたことに加えて右SBでほとんどの試合にフル出場している山根が代表に選出されているので、お互い選手のやりくりのところはどうなるのか注目したいところです。
今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。