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数字では表記しにくいタスク割り(2021/8/25 浦和vs広島)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2021.08.27


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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京都、徳島での連戦から帰ってきて、さらに中3日、そして蒸し暑い気候と、現場の厳しさは想像するに難くない状況でした。リカルドも試合前の段階から十分なトレーニング時間が取れないので試合の中でいろいろ探っている状況と吐露しています。

そんな中でスタメンが出た段階で3バックなのか4バックなのか、だれがどのポジションなのか、と色々な意見がありました。これについては、どの場面を切り取るのかで数字の表記の仕方が違うのかなと思います。

ボール保持で言えば、ショルツ、槙野、岩波が最終ラインで、その前に平野と敦樹が並ぶ3-2のビルドアップ隊と関根、酒井が両サイドで幅を取り、最前線にユンカー、そこに並ぶか少し下の位置に明本、さらにそこから低めの位置に江坂が立っていて、3-4-2-1や3-4-1-2と表記できるでしょうし、非保持もプレッシングの段階では4-4-2をベースに関根か江坂が縦スライドしていっていましたし、撤退時にはショルツの外側(幅を取る長沼)に関根が下りて行って対応したので5-3-2と表記することも出来ると思います。

つまり、リカルドはそういった数字表記をベースにした配置をしているわけではなく、誰がどのあたりのエリアを担当しているのかの役割をベースにした配置にしているのだろうと思います。


序盤に浦和がボールを前に出せていた時間帯で言えば、広島が5-2-3でプレッシングしてくるのに対して、浦和は3-2のビルドアップ隊なのでハマりは良くなりますが、広島のボランチが平野と敦樹をロックする状況になった時に江坂がその脇のスペースにポジションを取っています。

そこへ左CBの佐々木がついていった時には明本が佐々木の裏のスペースへ走り込んで、最終ラインからそこをめがけてロングボールを飛ばしたのが試合序盤に3回はありました。

10分の江坂のシュートに至るまでも、佐々木の背後へ抜け出そうとした明本へ岩波がロングボールを入れて、その流れで前目の位置でスローインを獲得したところからでした。

広島は人への意識が強く出る守備が特徴で、誰が誰に出てくるのかというのをある意味で浦和の方も噛み合わせを良くすることではっきりさせてしまって、だからこそ誰が動いたらどこが空きやすいということも共通認識を持ちやすかったのではないかと思います。


また、広島はいわゆる「ムービングフットボール」という名のもとに、選手たちの自由なポジション移動を促し、それぞれが持つ長所を生かしやすい場所でプレーすることを奨励しているように思います。ただ、その分チームとしてのバランスというのは整えにくく、トランジションは不安定になりがちです。

そのため、13'38に藤井が酒井を抜きにかかったところを阻まれてネガティブトランジションになった時も中央の平野がフリーでボールを持てており、広島の選手たちは撤退を余儀なくされます。浦和の方は守備のバランスが整った状態からこのトランジションを迎えてて、広島の選手たちより先に攻撃のための配置を取れています。

藤井がドリブルでつっかけて行ったところで奪われたという点はあるにせよ、13'57に平野が前向きにボールを持っているタイミングでは、ボランチの松本が藤井のカバーのためにサイドに流れてしまっており、3トップ+2ボランチで浦和の前進を食い止めたいところが、ピッチの中央はハイネルだけという状態になっています。

浦和のボランチに対しては広島のボランチが後ろから出て行くのが約束事だったとすると、浅野は自分とサントスとのゲートにいる敦樹をケアする意識は薄かったのかなと。まずは中央のパスコースを埋めて、ボールを外回りにさせることで自分たちの陣形を整える時間稼ぎをするのが常套手段かなと思います。

平野と敦樹はこのゲートを見逃さず、さらに松本不在に加えてハイネルがゆっくりピッチ中央に移動していることで浅野の背後はがら空きになっており、平野から敦樹へ「そのままターンしてね」というメッセージ付きのパスが通り、さらに関根が長沼の外側から回り込むように裏に抜け出してライン突破することが出来ました。こぼれ球にきっちり詰めたユンカーも含め、その瞬間に空いている場所を素早く使えた良い攻撃でしたね。

広島側とすれば、例えば長沼は内側に体を向けるのであればもう少しポジションを下げて敦樹と関根を同一視野に入れられるようにした方が良かったのかもしれないですし、体を外向きにしながら野上との間は閉めておいて自分よりも外側にボールを出させるような対応でも良かったのかもしれません。


前半の飲水タイムまでは江坂が18'33や23'44のように広島のボランチの脇や背中でボールを受けることが出来ており、そういった時にはゴール前までボールを進めることが出来ていましたが、佐々木がここをしっかり捕まえに出てくるようになってからは浦和はなかなか良い形でボールを前進できなくなっていったように思います。

それでも後半開始直後のユンカーの超絶ターンの場面も広島の3トップ+2ボランチに浦和の3-2のビルドアップ隊をロックさせておいて、前がかりになったボランチの背中に起点を作るという構図は変えず、そこで外せるかどうかの勝負を挑んでいったという感じでしょうか。

リカルドは後半にこの場所でなかなか起点が作れなくなったと判断して、ここに江坂と小泉を並べたかったと試合後にコメントしていますが、その場合は誰に代えて小泉をいれようとしていたのでしょうね。一旦交代ボードに「28」が出ていたので、ショルツを下げて明本を左SBに回すとかを目論んでいたのかもしれません。


さて、浦和の方には連戦の疲れもあったと思いますし、広島がビルドアップ時を3バック+2ボランチで行いますが、ボランチのどちらか1枚が下りて4-1のような配置になると浦和のプレッシングに対して十分な数的優位になり、シャドーの柴﨑も積極的に下りてきてボランチ周辺のサポートをするので、ここをハメて奪いきるという場面はなかなか作り切れません。

また、関根がプレッシングに行かない時には幅を取るWBについていくという運用なので、広島としては野上の方からボールを前に運びやすい構造ではあったと思います。


ただ、ボールを運ばれて自陣に撤退する状況になった時には、右は江坂が内側を閉めておいて、その外側にボールが出たら酒井が前向きに対応しに出て行く、という前節と同じような役割分担をしていて、左は中盤で構えている時の流れのまま関根が外をケアするのでショルツを出来るだけゴール前に留めておいて、中央に3CB+3CHのように構えることが出来ました。これだけ固めればそう簡単にシュートコースは空かないですし、密集していれば誰かが外されてもすぐにカバーが出来る状態ではありました。

それだけでなく、関根が間に合わずにショルツが外に出たときには、最終ラインのスライドであったり、ボランチが落ちたり、関根が内側のケアに回ったりと、槙野の言うように「臨機応変」な対応が繰り返されていて、誰がどこにいたとしてもこのスペースは埋めようねという原則が共有できているのかなと思います。

広島側からすれば、ゴール前までは行けているので最後の崩しが出来なかったという見方になるかもしれません。特に後半になってからは野上や佐々木が積極的にWBやシャドーを追い越してスクランブルを起こそうとする動きもありましたし、前の選手を入れ替えて違うアイディアでというトライもあったと思います。


関根のSH兼WBというタスクで言えば、前節の前半は汰木が幅を取る岸本にある程度ついて行くというのもこれに近いと思いますし、3月の札幌戦なんかは関根が右サイドでこのタスクをやっていました。そういう点では目新しいことをしたわけではなく、これまでに作ってきたオプションから対3バックに適したものを選択出来たと言えます。

前回対戦で最後に川辺のゴールが生まれたのは、大きなサイドチェンジをされて純粋な4バックではケアできない逆サイドの外側を使われてしまったことが一因でした。その課題に対する回答がこの関根のSH兼WBというタスクだったと思います。明本もこのタスクは十分に出来るとは思いますが、先述したボール保持で相手の左右CBの背後へ飛び出していく選手が欲しいとなると、そっちに明本を使った方がしっくりくるということだろうと思います。


そして、盛大な夏補強の最後にやってきた木下がこの試合でデビューしましたね。敦樹、ユンカーに代えて大久保、木下の投入ということで明本と小泉をIH、柴戸が中央の4-5-1のようになり、宇賀神が入ると5-4-1になりました。

守備の場面では木下はユンカーと同じように最初は中央のコースを塞ぐ、サイドに出て行ったら横方向に寄っていって逆サイドへ行かせないように蓋をする、といった具合に後ろの選手たちに対して自分はどこのコースを切っているよというメッセージが分かりやすいなと思いました。ボールを持った時も終盤で1-0という状況を理解して、すぐにボールを離したり突っ込んでいったりせずに、ゆっくりキープしています。

興梠ではなく木下を出したというのは、勿論一度試してみたかったというのもあるでしょうが、こういった「やるべきことをきちんとやれる」というのがトレーニングの中で出ていたのだろうと推測できます。試合をクローズしに行く場面なのでストライカーとしての振る舞いはあまり見られていませんが、このまま少しずつ出場時間を延ばしていきそうですし、ユンカーのコンディションや相手との兼ね合い次第では湘南戦でポンとスタメンに入ってくる可能性もあるかもしれません。


3位を争うライバルチームは、横浜FMと対戦した鳥栖以外は軒並み勝利。ここについていくという意味でも、試合の内容自体は思ったようなものではないながらも勝ち点3を拾って行けているのはとても大きいですし、それを可能にする武器を手に入れたのがこの夏の補強だと思います。

そういえば、この試合は夏に補強した5人が全員出場したんですね。他の選手のコンディションなども理由としてはあるのかもしれませんが、その選手たちがしっかり持ち味を出してくれているのは、しっかりチームに合う選手を取ってこれているということで良いことですね。


次はアウェーでの湘南戦。前回対戦では技術的なミスから失点を重ねてしまいましたが、WBの裏を取りに行く動きは出来ていた試合だったと思います。あの時に上手くハマった大久保、田中はプレータイム的には良い状態で週末に臨めると思うので期待したいですし、湘南のCBはあまりサイズが無いので上から叩くという意味では木下がこの試合に絡むこともあるのではないかともいます。

次の試合のマッチコミッショナーは誰かな。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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