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あの日やりたかったのはこれだ!(2021/9/11 横浜FCvs浦和)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2021.09.14


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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ルヴァン杯のグループリーグで同組だったので、これが今季4度目の対戦となりましたが結果としては4戦4勝となりました。過去の浦和の歴史からしても大きな試合というか、劇的な試合があるとそこで燃え尽きてしまってその次の試合はあっさり負けてしまうなんていうことがあったりしました。

しかし、前日の定例会見でリカルドが「選手たちに話をしたのは、『この試合は戦術が40パーセント、あとはメンタルが60パーセント、もしくは70パーセントくらい重要』という話をしています。」と発破をかけた通り、厳しい場面になっても最後の局面でシュートコースを空けない、角度を制限するといった集中力がしっかり表現されていて、それが88分のロングカウンターからのゴールを生んだと言えるでしょう。大久保、初ゴールおめでとう!


この試合での浦和の基本スタンスはルヴァン杯の川崎戦から継続していて、江坂と小泉の両方が中盤でのプレーに参加する0トップ型でした。そして、この試合はさらにそこから選手の流動性が向上していて、ここまでの対5バックでの試合の中では最も自分たちのやりたいことが表現できたのではないかと思います。ざっくり図にするとこんな感じでしょうか。

黄色の枠がビルドアップで最初に狙いたいスペースだったであろうシャドーの背中から脇のスペースです。浦和はこのスペースへ常に人を配置し、それ以外の場所についても、図で名前を入れてある箇所以外は人が入れ替わりながら、それでもそれぞれ場所に必ず誰かがいるという状況を作り続けました。

このスペースを使うために白枠で表した通り横浜FCのWBを押し下げるためにWGとして高い位置を取る選手を置いており、横浜FCのボランチとCBの間のスペースにも選手を置くことで、ボランチの選手がスライドすれば中央や逆サイドの中盤が空き、CBの誰かが縦スライドすればそのスペースへ中央か大外のどちらかにいる選手が斜めに走り込むスペースを空けてしまうというジレンマを突き付けます。

さらに、それぞれの場所を取るのが誰というのが決まっていないので横浜FC側からすればそれぞれのマーク担当を捕まえていれば良いという訳ではなくなるので、浦和は初手で突き付けたジレンマを最後まで使い続けることが出来たと思います。


5-2-3(3-4-3)の守備に対してシャドーの背中を取ろうとするというのは7月の大分戦でもトライしていて、その試合の中継で拾っていた音声について雑感で記載しました。

前半の浦和は前節の仙台戦に引き続き、外レーンにSB、内レーンにSHという配置でほぼ固定しています。これが上手くいった場面は見られませんでしたが、狙いについては25'50あたりで通訳の小幡さん?の指示から推測することが出来ます。
「コウヤ、もっと近づいて良いぞ」
「コウヤ、背中で良いよ、コウヤにかかればキャスパー空くから」

大分戦の前半では今回の試合のように相手のシャドーの選手(小林)の背中に汰木がポジションを取っており、汰木がなるべく小林の背中に近い位置を取ることで右CBの上夷から距離が開くことになります。そうなると、上夷が汰木まで出て行く(ここでは「かかる」と表現)とCFのユンカーが走り込むスペースが空くぞ、という算段だったわけです。大分戦の時に作った図を置いておきます。

この試合の雑感では小幡さんの言う「背中」について「汰木が上夷を自分の背中に置く」と解釈しましたが、それよりは「汰木が小林の背中を取る」という意味合いだったのだろうと今は解釈しています。


この大分戦の前半ではもう1つビルドアップで気になっていた部分があって、それは5-2-3の守備隊形に対して浦和のビルドアップ隊は2CB+2CHの2-2あるいはボランチを1枚下した3-1の形を作って相手のプレッシングにハマりやすい形にしていたことでした。

この時は「なんでハマりやすい形にしちゃうんだ」とやきもきしてましたが、8月の広島戦、湘南戦などを見るとあえて相手にハマりの良い形にすることでプレッシングを誘発し、相手を前に引き出したことによって空く背後のスペースを使うという狙いもリカルドの考え方の中にあることが伺えます。

つまり、7月の大分戦でも同様に相手を前に来させておいてその背中を使いたい、そうすればシャドーの背後にいる汰木にスペースを空けることが出来て、そこでボールを受けて前を向くことが出来れば3トップ、2ボランチの2つのラインを一気に突破するということを狙っていたのだろうということが推測できます。そして、あれから2か月経ったこの横浜FC戦ではそれが表現できたと言えるのではないでしょうか。


これは選手個々の成長もあるでしょうし、CBにショルツというボール扱いに不自由せず相手から距離を取ったポジションを的確に取れる選手が加わったことや、この試合では0トップなので中盤に人数を割きやすく横浜FCの最終ラインの選手がシャドーの背中を取る浦和の選手に対して出て行きにくいという状況を作ったこと、大分に比べれば横浜FCの方がライン間のスペースが広かったこと、など色々な要素があったことは間違いないと思います。


ちょっと話は逸れますが、ビルドアップ時にショルツがポジションを取るのが速くて正確なのはとても興味深いです。特に西川までバックパスでボールが下がる時、西川がトラップをする頃には既に西川と同じ高さまで下がり終わっていて、その後西川からパスが来たとしても前を向いた状態なので、ボールの移動中に相手がプレッシングに来るかどうかを見ることが出来ています。

なので、ボールを受けた後にあたふたすることがなく、相手によほど強くプレッシングを受けていればボールを前やタッチラインへ捨てることもありますが、基本的にはしっかりフリーでポジションを取れている味方を見つけてパスを出せています。

現状、岩波・槙野・ショルツの3人がCBをローテーションしていますが、こうしたポジションを取る速さという観点で言えば岩波とショルツが序列が上なのだろうというのが、川崎との2試合とこの試合、さらには湘南戦で岩波を休ませたところからも推測できます。岩波もここはかなり向上してますからね。


また、ボランチの左右の配置についても興味深い点がありました。これまで柴戸と敦樹のセットの時は柴戸が右、敦樹が左というのがほとんどだったと思います。その中でビルドアップ時は柴戸が相手FWとCHの間(各選手が言うところの「へそ」の位置」)かCBの間に下りるかで、いずれにしても中央に留まっていて、敦樹が左CBの脇に下りたり、中盤の左ハーフレーンに立ったり、柴戸がCB間に下りたら「へそ」の位置へ移動したり、と左から中央にかけて動いていくというのが多かったです。

ところが、この試合では柴戸が左、敦樹が右という配置でした。時間帯によって左右が入れ替わることもありましたが、この試合において大半の時間は左柴戸、右敦樹だったと思います。これは恐らく右SBと左CBの人選が影響しているのだろうと思います。

先述の通り、CBのポジショニングについて相手からしっかり距離を取った位置へ速く移動し、前を向ける状態でボールを受けるという点において槙野が遅れることがあったり、左足でプレーをすることが少ないこともあって相手ゴール方向に対して正面を向くよりも右側に傾いた角度になることが多かったように思います。プレッシングをかけて来る相手から遠いところにボールを置こうとするとそうなってしまいがちなのですが、それによって自分たちのプレー範囲が左よりも右に寄りやすくなっていて、それを避けるために槙野よりも外側(ライン際まで開くことも辞さない)に敦樹を下ろしてプレー範囲に左側の選択肢を残せるようにしていたのではないかと思います。

↓は5月福岡戦の時に作った図です。


また右SBも西が出ている時は「魂はシャドーやボランチに近いものがある」と言うくらいに、外に開くよりもハーフレーンでプレーする方が彼の器用さを活かすことが出来るので、西が使いたいスペースを残しておくために中央固定の柴戸を右側のボランチで起用していたとも言えると思います。

そう考えると、この横浜FC戦では左CBがしっかり正面を向いて相手から距離を取ってプレーできるショルツで、右SBが外側をダイナミックにオーバーラップしていく動きが強みの酒井という、槙野&西の組み合わせとは特性が左右反転しているのでボランチの左右もそれに合わせて入れ替えたということだろうと思います。

しかもこの試合での敦樹は柴戸と横並びになるよりは、この試合のキーである相手のシャドーの背中を取る役割にも参加していて、松尾の背中を取りつつ5'00のように外側から関根が抉った時にハーフレーンでマイナスのボールを受けたり、ネガトラでハーフレーンを素早く封鎖することで相手の前進を阻みながら外へ追い出したりと、攻守両面で彼の強みであるダイナミックで力強い走力が発揮されていました。


小泉がコンディションの都合でハーフタイムでユンカーに代わると、0トップから1トップになったことで中盤に割く人数は減るわけで、それによって横浜FCの3バックがシャドーの背中で受けようとする浦和の選手に対して出ていきやすくなったこともあったと思います。また、ユンカーもビルドアップでハマった時の逃げ道として苦手な空中戦を強いられたり味方からのパスがちょっとずれていて良い体勢では受けきれなかったりということもあってか、加入当初のキレとは違う状態になっているように見えました。

まあ、真夏のピークが去って涼しくなってきていたり、今月は週1回ペースでの試合で休む時間が取れたりするので、いよいよ勝負をかける11月にコンディションを上げていってくれれば良いかなと思います。その間に新加入の木下が馴染んだり、コンディションを落としている興梠が復活するきっかけをつかんでくれたらなと期待します。


文字数も結構来てしまったので、最後に守備面をちょっとだけ書くと、この試合では先月の徳島戦でやったように3バックvs2トップにSHを縦スライドさせて数的不利を解消させるような動きをしました。外に追い出していくことは何度も出来ていたものの、横浜FCのWBとシャドーがどちらも外外になっていることで浦和のSHとSBが上手くボールの追い込み先を作れないという形で前半に3回ほどサイドから突破されました。

これは15'03のシーンですがWBあるいはSHが浦和のSHの背後でボールを受けることで浦和のSBを引き出して、空いたスペースに入っていくというのは3-4-3vs4-4-2では起こりやすい現象ではあるのですが、横浜FCは特に61分にジャーメインが入ってきてからよりこのアクションが増えたと思います。

それでも最後のゴール前のところではしっかりシュートブロックをしたり、どんどんシュートコースを狭めたりということが出来ていたので最後のところは何とかするというのが出来ていたのでしょう。こういう勝負強さ、大事です。


次は好調だった4月に唯一敗れたC大阪との試合です。クルピ監督から小菊監督へ交代し、乾がスペインから加入し、と大きな変化が起きているチームですが、C大阪は水曜にACLがあるため中2日という日程で、メンバーをやりくりしながら挑んでくると思います。これに対してリカルドがいかに準備して迎え撃つのか、4月のリベンジを果たせるのか楽しみに1週間を待ちたいと思います。

今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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