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相手を見るとしてもアクションは必要(2021/11/27 浦和vs清水)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2021.11.30


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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用事があってリアルタイムで観られなかったので試合の翌日にディレイ視聴しましたが、試合後のセレモニーはとても感傷的というか、心を強く揺さぶられる内容でしたね。

阿部勇樹については引退会見で一通り気持ちの整理というか、寂しい気持ちを出し切ったつもりでしたが、契約満了になった3選手のスピーチ、特に宇賀神がマイクに向かって歩いて行く姿を見た時に、本当に彼らがいなくなってしまう、クラブが大きく変わるところに来ているんだというのを感じました。

だからこそ、この試合では前節のようにクラブに残ることが出来る選手たちが、その価値を示すような試合を期待しましたが、清水の残留するために必死にゲームプランを完遂しようとする力を押し切れませんでした。リーグ戦での4位もなくなり、非常に悔しい、残念な試合になってしまいました。


この試合の前提として浦和はリーグ4位に入る可能性を残すために勝ち点3が是が非でも欲しい、清水は自力残留の権利を残すために勝ち点0は避けたい、という状況があって、それに加えて浦和はリカルドのもとで出来るだけクローズドな展開、秩序だった試合内容を志向し、清水もロティーナ前監督が求めていたのは同じように秩序を大切にした試合内容を志向してきたので、前節の横浜FM戦とはまるで違うテンポになりました。

横浜FMは攻守両面で自分たちからアクションを起こし続けることを信条としてここ数年のスタイルを作ってきていて、常に相手を見る、相手に応じて自分たちの取るべきポジションとそこからのアクションを判断するリカルドのチームからするとある意味では対峙しやすい相手だったと言えます。相手が自分たちのやるべきことを限定してくれるという言い方も出来るでしょうか。

ただ、この試合の清水は、特に試合序盤の20分間については中盤にブロックを作って浦和が入ってくるのを待つような体制を取りました。縦横の距離をコンパクトにしつつ、ボール保持者には基本的に縦方向から詰めて斜め後ろを次の選手がカバーする、横パスが出れば隣の選手がまた縦方向から詰めて、次の選手がその斜め後ろをカバーというロティーナが作ってきた守備の原則がしっかりと残っていることが感じられました。

また、ペナルティエリア付近まで押し込まれた時には、例えば原のカバーにヴァウドが出たら速やかに竹内が下りてスペースを埋めていたり、ペナルティエリアの中央には中盤や前線の選手も戻ってきて人垣を作ってシュートコースを消していたり、これは4月にセレッソと対戦した時にも似たような状況だったかなと思います。


そんな中で浦和は前半飲水タイムまでは特に左右ともSBとSHのどちらが外、どちらが内というのを固定せず流動的にポジションを移動していました。リカルド体制になってから山中が内側にポジションを取っている時間がこれほど多かったのは初めてではないかと思います。

それでもチャンスになりそうな場面というのは19'25~のように山中が外に開いているところへ大きなサイドチェンジのボールを飛ばして逆サイドの選手(この場面では田中)がゴール前に入っていくという形でした。

また、江坂がフリーマン、関根は右のハーフレーンでビルドアップの出口になる役割を担っている都合上、清水のCBとの駆け引きをする選手は場面によって変わる、あるいはいない状態が多く発生するため、例えば9'03に左外で山中がボールを持った時に大久保が原の背中へ流れて鈴木を引き出した時に生まれた井林との間のスペースを狙う人がいなかった場面なんかを見ると、9番の選手がいれば違った展開になったんだろうなと言うのは思ってしまいますし、試合後会見で記者から「興梠(慎三)選手をラスト5分まで投入することを引っ張ったが、ゴール前で仕事をできる選手を早めに入れようかという考えはあったのか?」という質問が出たのはそういうことだろうと思います。

敦樹は左のハーフレーンが主担当だったように見えますが、ショルツとの距離が近いことが多くそのエリアで詰まっているようにも感じました。個人的には前節のようにダイナミックにハーフレーンの前の方へ飛び出していくアクションがあると良いなと思ったりはします。

図にした9'00の場面もショルツが運ぶ先のスペースに敦樹が清水の中盤ラインよりも引いた位置にいましたが、理想はライン上に立ってショルツが使えるスペースを残してあげて、原のカバーに出た鈴木のいたスペースも狙えるような場所にいても良かったかもしれません。


前半の飲水タイムで浦和はビルドアップの形を変更しました。左は山中、右は田中と外レーンの担当者を決めて、後ろに残るのは岩波、ショルツ+酒井or平野の3人に限定してあげることで30'08のように左ハーフレーンでショルツがボールを持った時に敦樹は西澤ー松岡のゲートの奥で待てていて、ここへズバッと縦パスが入っています。

この場面は江坂から山中へのパスがちょっと弱かったというか、山中がそのまま清水の最終ラインの裏へ抜けて行ってスルーパスが出たりすると、一気にスピードを上げて清水のゴール前まで迫っていけたのかもしれません。

敦樹については35'22にヴァウドのクリアボールを拾ってシュートを打った場面のようにビルドアップに絡むことから少し解放してあげてより高めの位置でプレーしている場面を見るとやっぱりこっちの方が良いよねと感じますし、ショルツについても42'12にも左ハーフレーンで一番奥の大久保までズバッと縦パスが入った場面を見てショルツの前はスペースを空けてあげた方が良いんだなと感じます。

飲水タイムの修正でビルドアップの質自体は上がったように感じますが、パスが入った時のトラップがちょっと大きくなったり、パスがもう少し早く強いボールであればスピードアップできたかもしれないなと言う場面があったり、それは試合後に大久保が言っていた「少し慎重に行き過ぎてしまった」「緊張だったり、いつもと違うようなことがあると思うので、そこに対する僕らの慣れが必要」というものがあったのかもしれません。


清水の攻撃については前半最後の鈴木唯人のドリブル突破はありましたが、竹内を落として松岡をへその位置に留めながら行ったビルドアップに対して田中、大久保は前節のように縦方向にアクションを起こして隣のCHや後ろのSBがその斜め後ろをケアするような流れで概ね対応できていたように思います。

清水の方は大枠としてそれぞれの選手が立つ場所は悪くないと思いますが、ボールを受けた時に前を向くためのポジションの微調整という点で苦しんでいたように見えました。


ハーフタイムで浦和も清水も1枚ずつ選手を交代。浦和は田中に代えて小泉を投入し、前半は中盤のハーフレーン付近をスタート位置にしてビルドアップの出口役だった関根の役割を小泉にして、関根はより相手ゴールに近い位置からプレーできるように変更しています。

49'00~や57'38~などショルツのが持ち運んで清水の1stラインを越えたところからゴール前まで迫っていくような場面はありましたが、最後のゴール前でパスやクロスが合わないというやきもきする展開。

61'40もハーフレーンから敦樹が抜け出してヴァウドを引っ張り出して中央に待ち構える関根へパスを送るも、そのスペースを先に竹内が埋めておりパスが通らず。ロティーナが指揮した時のセレッソで藤田がそうであったように、CBのスライドに対する素早く的確なカバーリングでした。


終盤に汰木を投入し、敦樹のポジションもどんどん高くなり、78分~79分にかけてはしっかりペナルティエリアの中に人数が揃った状態を作るものの、中にいる選手がボールを待ち構えている状態で、例えば誰かがCBの間に走り込んで相手のリアクションを引き起こすような動きが欲しかったところでした。

1stアクションを誰が起こすのかという課題については10月のG大阪とのホームゲームでも表出した点ですが、最もゴールの匂いがするスペースを狙って走り込む選手がいれば相手もそこをケアするために動かざるを得ない(動かなければ決定機になる)わけで、そうするとまた別のスペースが生まれるという連鎖が発生しやすくなります。

79'05あたりのシーンで言えば、例えばヴァウドと鈴木義の間にあるニアサイドのスペースに向かって敦樹が走り込んだりすると、鈴木が動かざるを得なくなり、そうすると今度は片山の前のスペースが空くのでそこに関根が入ったりすると、今度は大外の酒井が空くかもしれないという連鎖を想像したりします。


ただ、最初の方で取り上げた記者会見での「興梠のようなゴール前で仕事が出来る選手を入れないのか?」という質問へのリカルドの回答が「交代に関しては、人を前に増やすかどうかだけではなく、我々が狙っていきたいスペースをうまく埋めていけるかどうか。入っていけるかどうかも大事だと思いますので、そういった意味で、前線に人数を増やせばいいというものではなく、狙いとして思っていたスペースをうまく使えるか。それが大事だと思っています。」というものであったように、前に人を増やすためにはそこへボールを運ぶ人を減らすことになります。

となると、そもそもビルドアップにもっとGKを関与させてFPの配分を変えるか、9月の横浜FC戦などのようにビルドアップ隊をあえて相手のプレッシングにハマる人数まで削るといったリスクを負うか、あるいはそもそも中盤に無理が効く選手を入れて個人の質で解決するのか、明本が怪我から戻ってきたら他の選手の3割増しの運動量で解決してしまうのかもしれないし、他にも方法はあると思いますが、ACL出場権を獲得するための残り試合でいかにこの課題を解消していくのかはとても気になるところ。


相手を見ることを信条としていも、相手が動かず止まっているのであればこちらから1stアクションを起こして相手を動かしていくことも必要です。何かが出来れば良いというだけではなく、出来ないことを減らさない限り色々なチームと1年をかけて戦うリーグ戦で勝ち抜くことは難しいです。本当に来年優勝するためには越えなければいけないものですから、残り3試合のうちに光明が見えると良いですね。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。



浦和レッズについて考えたこと

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