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相手の土俵に乗ってしまった残念な45分(2021/11/7 鹿島vs浦和)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2021.11.11


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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前日に神戸が先に勝利をしていたことで試合開始前の段階での勝ち点差は8。3位に入るためには間を離されないようにしなければいけないだけでなく、天皇杯で川崎が優勝した時にそちらの枠が転がり込んでくる4位に入るためにも同じ勝ち点で並んでいる鹿島と対戦するこの試合は勝ち点3が必須な試合でした。

結局、開幕当初からここまで自分たちよりも上の順位のチームには勝てておらず、上の順位にいるチームは今の浦和と「上手さ」は同じくらいのレベルにあっても、「強さ」「速さ」という点では上回られているという現状を突き付けられています。次の横浜FM、最終節の名古屋に対しても「上手さ」とは違う要素で試合の展開が左右されることは想像に難くないですし、リーグで優勝する、ACLで優勝するということを目指すのであれば「上手さ」だけではなくて「強さ」も必要というのが、この鹿島戦の前日にクラブ公式youtubeで公開された関根のインタビューとも重なります。



鹿島の守備は2トップ、2CHが中央を埋めることでサイドへ誘導し、SBの積極的な縦スライドと関川、町田という若いCBがSBの出て行ったスペースへ素早く横スライドするというもので、前線のプレッシングの方法こそ違うものの、後方から前向きな矢印を作るというのは10月頭の神戸戦に近しいものだったと思います。

それに対して浦和は特に試合序盤はビルドアップ隊がオープンにボールを持てた時には前向きな矢印を出したい鹿島のSB、CBの背後へユンカーを走らせるようなボールを入れます。ただ、22'28の関川の背後に走ったユンカーに対して町田が素早くカバーをすることで浦和の背後へのボールを無力化してボールを回収し、浦和の押上げが間に合わないFWとMFの間のスペースから素早く前進して浦和陣内に入り込んで安西がクロスを際どいコースへ送り込んだ場面が象徴的だったかなと思いますが、鹿島は守備時に横幅を非常にコンパクトにしておくことで隣の選手の背後をすぐにカバー出来ていたかなと思います。

結局、浦和の方はビルドアップ時に平野をCBの間に落として前進を試みつつ、相手の背後へ積極的にボールを入れますが、それがかえって自分たちのボール保持の時間を減らしてしまい、自分たちのバランスを整える間もなく攻め込まれるので非保持も安定しないという悪循環になってしまいました。


飲水タイムの段階でそれまでCHの片方をCBの間に落とす3-1の配置でビルドアップしていたものを西を後ろに残して、平野をアンカー、その両脇に敦樹、江坂という3-3の配置でのビルドアップに変更しています。

鹿島の2CHに対して間と両脇を取らせるような形にすることでSH、SBの動きを迷わせたかったのかなと想像しますが、この配置の取り方でも状況を好転させることは出来ず、鹿島の守備陣の素早い収縮によってボールを奪われるという現象は続きました。

また、浦和が高い位置からプレッシングに行こうとしても鹿島は繋ぐよりは早めに前へボールを飛ばしてこぼれ球を拾うという前提のもとにポジションを取っていますし、そこでの当たりの「強さ」を強調しているチームなので、鹿島の保持が増えれば増えるほど鹿島の土俵になってしまったのだろうと思います。

前半は「強さ」を強調したい鹿島の思惑の中で試合が展開することになってしまいましたが、浦和の方がそれを「強さ」で対抗して押し返すのか、「上手さ」という自分たちの土俵に引き込むのか、そこが曖昧だったというか、まだ自分たちの土俵へ引っ張り込むだけの力が無かったのかもしれないなと思います。


密集したサイドにどんどん追い込んでいきたいという鹿島の矢印の逆を取ることが出来なかった場面で9'28~のビルドアップの場面を切り取りたいと思います。

平野をCB間に落として3-1の配置。平野からの横パスをショルツがフリーで受けてハーフレーンを前向きに運んでいて、鹿島の中盤ラインの背後には山中、汰木、江坂が待ち構えている状態。ショルツが運ぶのに合わせて鹿島は全体的にサイドへスライドしていき、ショルツからのパスを受けた江坂はそのスライドと同じ方向へのパスを出しに行って三竿にカットされてしまいました。

この江坂の選択が悪手ということを言いたいわけではなくて、鹿島の右サイドの選手を見るとファンアラーノは元のボール保持者であるショルツに出ていて、常本は汰木に近い位置にいるのでこの2人の間にポジションを取っている山中は空いています。江坂のパスを出そうとしたコースを見る限りでは、江坂が空いている山中へパスを出そうとしていると常本が察して動こうとしている逆を突いて汰木へパスを出そうとしているように見えます。

もしこれが通れば汰木が常本の背後から抜け出してチャンスになったかもしれないですし、江坂はそんなパスを出せるだけの能力があるからこそ、そこへのパスを選択したと思うのですが、狭い局面の中でパスを通し続けることは相手にすぐ寄せられやすいので「強さ」を持って相手の寄せを耐えるか、川崎のように狭いところも関係なく繋げるぜと言うだけの技術を持つかどちらかになります。

リカルドが提示している大枠の中での「上手さ」は狭い網を突き破ることではなく、相手が密集するならその逆にある広い場所を使うというものだと思います。なので、リカルドのチームの正攻法で言えば同サイドへ展開することではなく、敦樹が上田とピトゥカの間に入ってターンをするか、江坂が敦樹に落とすかをして右に開いていた西や関根へ展開することなのかなと思います。


28'20~も自分たちから鹿島の狭いサイドに追い込まれに行ってしまったかなと思います。西川からのパスを2トップの脇でショルツが受けますが、この時に敦樹がショルツの方へ寄っていってしまったことでショルツの周辺が詰まってしまいました。

この場面で言えば、敦樹がボールの流れに合わせて上田ー三竿のゲートよりもショルツ寄りのポジションまで動いてしまったのでショルツとしては敦樹に預けても三竿のチェックを受けてしまうのではないかと思ってしまったのではないかと思います。その結果、そのまま同サイドの前へ蹴り出すことになってしまいました。

なので、例えばこの場面で敦樹がボールは左に動くけど自分はそのままの位置に止まって待てていれば、上田や三竿はボールに合わせて動いてくれることで勝手に自分が2人のゲートの間か奥のポジションになることが出来たのかもしれないなと思います。

後から落ち着いて振り返れば、鹿島の「強さ」が強調される展開ではなく、浦和の「上手さ」を強調できる展開へ持って行けたのかもしれないなと。


前半はCKの流れでの1点に留めたものの、シュート0という非常に厳しい数字となり、ハーフタイムでユンカーと汰木を下げて小泉、大久保を投入。0トップ型へ変更するとともにビルドアップ隊のヘルプ役を江坂から小泉へと入れ替えました。

さらにCBの間にCHを落とさないことでCBがあまり開かなくなり、48'25のようにハーフレーンの小泉が囮になる形で鹿島のCH間に入った江坂に岩波から直接ボールを当てて、レイオフしたボールを前向きに平野が拾って左に開いた山中へ展開したり、53'46は岩波からの縦パスをピトゥカの脇に入った小泉が平野に落としてから再び逆サイドの山中へ展開したりと、一度鹿島の守備陣形を片方のサイドにスライドさせてから逆サイドへ展開することで、鹿島の「強さ」を表現させにくい展開、つまりは浦和の「上手さ」を表現しやすい展開を作れるようになりました。

特に小泉は平野の右側に下りることが多く、鹿島の2トップ脇でボールを引き取ると左足で逆サイドまで大きく展開することで鹿島の守備の矢印を裏返す役割を果たしました。左足を振れる選手が右のハーフレーン低めの位置から逆サイドへ発射するというのは、昨年リカルドが徳島で小西にやらせていたような役割と同じなのかなと思います。体が開けた状態かつ、相手から遠い方の足でボールを扱えるので、低い位置に人数をかけることにはなってしまいますが、相手の矢印を裏返す手段としてリカルドの引き出しにあったやり方でしたね。


また、左SHに入った大久保は常本が積極的に前に出たいという矢印を利用するように裏へと走り出す回数が多く、63'57にはショルツから山中にパスを出した瞬間に常本の背後へスタートしていて、そのおかげで山中がファンアラーノの背後でフリーになっただけでなく、大久保の抜け出しに常本がついて行ったことで山中から江坂へのパスコースが空きました。

78'46も岩波がオープンにボールを持った時に大久保が常本の前から関川の背後へ走り出したことで常本を一瞬引き付けて大外の山中を空けることが出来ています。10月のG大阪とのリーグ戦では1stアクションを起こせていないことが課題かな?と思い雑感にも書きましたが、この試合では0トップの間も、興梠が入ってからも何度も自分から動き出すことが出来ていて、アタッカー陣の中でベンチには入り続けることが出来ている理由を見ることが出来た気がします。


ハーフタイムでの修正によって自分たちの土俵での展開を増やせたものの、0トップの難点であるゴール前にいかに人数をかけるか、ゴール前でいかにパワーを出すかという点はどうしても解消されませんでした。それだけでなく、少しずつ良い形でボールが前進できて来たところで関根が負傷してしまったのも非常に痛かったですね。何かが決まる最後の数試合で勝たせる選手になれるか、活躍できるかが大切と冒頭に貼った動画でも話していただけに残念でなりません。


「3年計画」という中期的な視点で言えば、来年に向けてまだ改善しなければいけない要素が炙り出されていることをポジティブに捉えても良いのかもしれませんが、今年の目標はACL出場権獲得であって、それを手にすることが出来るかどうかの瀬戸際の試合で2戦2敗という現実は重く受け止めなければいけないですね。

勿論、酒井や明本といった浦和の中で「強さ」が際立つ選手がピッチにいたらこういった展開でも違った内容になったのかもしれませんが、そこも含めてチームの総力として足りない部分を突き付けられてしまいました。

リーグ戦での3位争いはほぼ終戦となってしまいましたが、ACL出場権は天皇杯の優勝、あるいは川崎が天皇杯を取った時にはリーグ4位のチームにその権利が転がり込んでくるので、残り3節も消化試合ではなく9ポイントを取るための試合になります。代表ウィークが入ることで選手のコンディション、メンタルの回復であったり、チームとして改めて強調したい部分を調整することが出来るはず。

次節も難敵ではありますが、ACLに出るためにはどんな相手だろうと乗り越えないといけません。試合の振り返りは負け試合でもポジティブになるために色んな要素を思い返しますが、もうそんな時期じゃないんだ。勝った上でここをこうすればもっと良かったねと思わせてくれ。以前も書いた気がしますが、強くなってから勝つのではなく、勝って強くなろう。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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