◆前書き
昨年はリーグ戦の試合の直後にアンケートを取って、自分の評価と比較しつつ三年計画のプレーコンセプトが表現できていたのかをまとめていました。ですが、協力してくれた方もアンケートの項目が多くて面倒だったんじゃないかとか色々自分なりに考えて、今年は試合ごとの記事はその試合の内容によってピックアップする事象を変えた雑感として出しつつ、月の終わりに月報のような形で三年計画のプレーコンセプトについての定点観測をしようと思います。
目次
- ◆11月の戦績
- ◆プレーコンセプトは表現出来ていたか
- ◆12月の試合予定
◆11月の戦績
11/3 (Wed) J1 第34節 (A) vs 川崎 △1-1
11/7 (Sun) J1 第35節 (A) vs 鹿島 ●0-1
11/20 (Sat) J1 第36節 (H) vs 横浜FM ○2-1
11/27 (Sat) J1 第37節 (H) vs 清水 ●0-1
※リーグ戦 1勝1分2敗 3得点4失点(-1)
川崎の優勝を見送るところから11月が始まり、中旬の代表ウィークの間には阿部勇樹、槙野智章、宇賀神友弥という10年以上クラブに関わってきた選手たちの引退、契約満了に伴う退団が発表され、ホーム最終戦の前には他にもコーチやレンタル移籍中の選手も含めて一通り今オフのoutについてのリリースを出し切ったのかな?という形になりました。
寂しい話題に加えて、試合の内容も相手のスタンスをリスペクトして挑んだ横浜FM戦以外は結果を出すことが出来ず、リーグ戦の結果によるACL出場権獲得は逃すことになってしまいました。
川崎戦、鹿島戦は連続して相手の強度に押されてしまったような印象が残りました。チームとしてのボール前進やプレッシングの方法は積みあがってきたけど、個人vs個人で強度の勝負になるとまだ物足りないなと言うのがこの2試合での感想。
特に川崎戦では相手のプレッシングを外すことが出来るもののその先での力不足や、特に旗手、脇坂といった中盤の選手のトランジションのスピード感には手を焼いたように見えますし、続く鹿島戦でも選手のいるスペースをどんどん狭くして球際の局面を増やしてくる鹿島の土俵の中でプレーする時間が多くなってしまい、10月の神戸戦がフラッシュバックするような展開でした。
鹿島戦の試合後会見では以下のような質疑応答がありました。
(今日はヴィッセル神戸戦のように、ボールを受けるときに強く来られていて、ナイーブなところがあったように見えたが?)
「彼らにフィジカル的な強さがあることは、もちろん分かっていました。一方、我々は高さはないですが、技術のところで彼らと違った特長の選手たちを抱えているので、そういった違いが出たのかなと思います。我々にはつないでいける選手や若さのある選手がいて、彼らには彼らのやり方があり、そういった違い、メリット・デメリットは両方出るのかなと思います」
(今後、フィジカル的に強い鹿島のようなチームに勝っていけるようになるために、何が必要だと考えているか?)
「そういった部分は今後も考えながら改善していくべきところだと思います。やはりタイトルを狙っていくのであれば、どういうふうに成長、進化していけるのかが大事だと思っています。神戸であったり、川崎フロンターレ、今回の試合と、こういう強い相手に対してアウェイで戦うときに、我々がどうすれば勝てるのかを、今後も考慮しながら進んでいければと思います」
雑感でも取り上げましたが、例えば川崎戦では19’18~のシーンとか、鹿島戦では9'28~のシーンとか、相手のいない広いスペースへ横ターンして展開したい場面でやりきれなかったところは、プレー強度が落ちる相手であれば難なくやれていたと思います。
こういうところで、もう一つ上のレベルに上がるためにはどういうスタンスの相手であってもこういう場面で相手を上回ってピッチの幅をしっかり使って、相手選手の少ない場所にボールを進めていくことで、相手の組織バランスにダメージを与えて行きたいというのがリカルドが積み上げてきたボール前進の思想だと思います。
シーズン終盤というだけでなく、9月や10月に比べてより上の順位の相手との対戦なので、それらの試合と比べれば相手により強くターンを牽制されることになる訳で、そこを外せるか止められるかという個人の技量に改めて焦点が当たってきているわけです。
代表ウィーク明けの横浜FM戦は自分たちの台所事情もありつつ、相手のスタンスを強く意識して4-5-1で構えて、これまでの外向きなプレッシングではなく、縦方向、前向きなプレッシングを行いました。
CBからすり鉢状に広がっていく、手前には幅をあまりとらない横浜FMのビルドアップに対して、ボールを内側に入れさせることで敦樹、関根、平野が前を向いた状態でボールを奪えるような形を作っています。結果的に2点とも相手ボールを奪ってから相手のSBがいなくなったスペースを上手く使ってチャンスの起点を作りました。
ちょうど昨年の今頃、リカルドが浦和の次期監督という噂が出てから見た徳島vs磐田はボールを持つ磐田に対して徳島の方は前列の選手が消しているコースからボールが入ってきそうな場所を後列の選手が予測して素早く前向きにプレッシングをかけてショートカウンターから得点をしていました。
ボール保持だけでなく、非保持も上手く構築するんだなという印象をその時に持ちましたが、この横浜FM戦でもリカルドのそういった面が強調されたように思います。
そして、この試合では特にIHに入った敦樹、関根の2人が前向きに相手のボールを奪いに行く、奪ったら出て行くという姿勢を強く見せていて、強度の高いプレーをしていました。宇賀神がブログで関根を称えていましたし、鹿島戦の前にクラブ公式youtubeで出た関根のインタビューの内容がそのまま反映されたようなプレーでした。
だからこそ、そこからの落差が次の清水戦にはあったのですが、ユンカーが鼠径部を負傷していたり、明本がG大阪戦の負傷以降戻ってこれていなかったり、興梠、木下もなかなか試合に絡めていなかったりという中で、誰がより相手ゴールに近い場所でアクションを起こすの?という課題が改めて浮き彫りになってしまいました。この試合についていろいろ思ったことは雑感を見て頂ければと思います。
相手を見るとしてもアクションは必要(2021/11/27 浦和vs清水)
ざっくりまとめてしまうと、シーズンもいよいよ終わりが目の前になってきて、放出選手もあらかたリリースが出たことで、来季はどういう編成にするのか、どこを課題としてとらえるのか、というのが残念ながら明確になってしまった1ヶ月だったのかなと思います。
◆プレーコンセプトは表現出来ていたか
※各項目5点満点
1) 個の能力を最大限に発揮する
→3点(3月=3点/4月=4点/5月=4点/6月=4点/7月=3点/8月=3点/9月=4点/10月=3点)
2) 前向き、積極的、情熱的なプレーをする
→3点(3月=2点/4月=4点/5月=4点/6月=5点/7月=4点/8月=4点/9月=5点/10月=3点)
3) 攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをする
→2点(3月=2点/4月=3点/5月=3点/6月=4点/7月=3点/8月=3点/9月=5点/10月=3点)
1) 個の能力を最大限に発揮する
→ 3点
清水戦のショックを引きずってしまいますが、1ヶ月トータルで観れば良くも悪くもあったというのが正直な感想です。特に川崎戦は9月のルヴァン杯よりも渡り合えている感覚がありました。
渡り合えた点で言えばまずはショルツの攻守両面での能力かなと思います。自分より前にスペースがあればしっかり運んでからボールを出す、高い位置を取りがちな山中の背後のスペースの清算をするという特にこの2点は、夏に加入してから槙野をベンチに追いやるだけでなく、クラブが契約延長をしない決断をさせるほどのものだったと思います。
出場機会が多かった大久保についても鹿島戦は積極的に相手の背後へ動き出したり、ボールを持った時に相手ゴールへ向かって行く回数は増えてきていると思います。敦樹も横浜FM戦で見せたダイナミックな動きも彼の長所が出たと思います。
ただ、そういう良さが自分たちのアクション不足で発揮しきれない場面が清水戦はたくさん出てしまいました。先述の通り、川崎戦、鹿島戦では相手に良さを消されてしまいました。リカルドの言葉になぞらえるのであれば、悪くはない、でも素晴らしくはないという感じでしょうか。
2) 前向き、積極的、情熱的なプレーをする
→ 3点
なんとかしようとする姿勢は見えたものの相手を上回れなかった川崎戦、鹿島戦、相手のスタイルも相まって情熱的な姿勢が発揮しやすかった横浜FM戦、今度は逆に相手のスタンスによって情熱性を削がれてしまった清水戦。相手のいる競技で、その試合がどのようなテンションになるのかは相対的になりがちですが、そういった要素をより強く感じる1ヶ月でした。
清水戦では前半飲水タイムまで田中達也がハーフレーンから相手の裏へ出て行くような役割だったように見えましたが、どうしてもそういった矢印を出せなかったり、大久保が試合後に言っていたように少し慎重になりすぎて積極性を失ってしまったのは残念でした。
3) 攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをする
→ 2点
攻守の切り替え、トランジションのところでは、試合ごとにポジトラ、ネガトラのどちらかが良くて、どちらかは物足りないなと感じていて、特に清水戦は奪われた後のネガトラが今一つな印象。それは保持で相手にダメージを与えるような動き出しが出来ていないので、清水の方は全体のバランスは保ったままボールを取れていて、浦和がネガトラで相手の選択肢を奪いにいききれなかったかなと思います。
こういう局面で強さを発揮していた柴戸や、相手にダメージを与えるような動き出しが出来るユンカー、明本が負傷していたことも影響しているとは思います。ただ、そういう点も含めての総力が無ければリーグ戦は勝って行けないよねというのも改めて感じました。
◆12月の試合予定
12/4 (Sat) J1 第38節 (A) vs 名古屋 (65pt / 19 / 8 / 10 / +14)
12/12 (Sun) 天皇杯 SF vs C大阪 (48pt / 13 / 9 / 15 / -3)
12/19 (Sun) 天皇杯 Final
※()内は11月終了時点でのリーグ戦の 勝点/勝/分/負/得失点差
※浦和 (62pt / 18 / 8 / 11 / +7)
いよいよリーグ戦はラスト1節になりました。名古屋とのアウェーゲームと言えば昨年の悪夢が頭をよぎってしまいますし、ここ最近の対戦相手と同様に名古屋は稲垣が象徴的ですがいわゆる球際での強度であったり、ゴール前での撤退守備の固さがあります。
そうした相手に対して10月、11月で課題になっている、チームとしてのボール前進は上手く出来るが、相手を外す、ゴールを奪うという局面で強さをいかに発揮するのかというところが求められる相手です。
5月のホームゲームの時には以下のようなことを雑感で書きました。
それでも、ACL圏内を狙って自分たちよりも上位のチームを食っていくためには、汰木からのクロスであったり、関根に訪れた2度のシュートシーンのどれかをゴールに繋げる必要がありますし、後半の論理的に開けた米本の脇のスペースをターン一発でかいくぐれるような物理的な力が強くなれば中谷も木本ももう少し早めに対応するために食いついてスペースを空けてくれる可能性も出てきます。つまり、個人の質が高くなるほどチームの論理の有効性が高まるということになります。
この辺は川崎戦のあとに小泉が話していた個々の技術的なレベルアップという話になってくるんでしょうし、ここ最近噂が出てきているように選手を補強して解決していくという話になっていくのかもしれません。
論理を増強するのは個人の質(2021/5/30 浦和vs名古屋)
組織で出来ることを増やす(選手の能力バランスを整えて誰が出ても出来るプレーを増やしていく)というフェーズと、個人の強みを伸ばす(選手個々の長所をチームとして出来ることに足していく)というフェーズを行き来しながら積み上げをしていきます。
4月~5月中旬にかけて前者のフェーズをこなした上で後者のフェーズへの移行を意識させられたのが名古屋戦でした。選手の成長だけでなくクラブによる補強という形で個人の強みを伸ばすフェーズを一度乗り切って、9月以降再び前者のフェーズで積み上げたことで、またしても後者のフェーズがやってきたわけです。
名古屋戦、そしてその後に続く天皇杯に向けて、残り3試合はクラブが後者のフェーズを助けることは出来ません。あくまでも今いる選手たちがこのフェーズを乗り切る必要があります。そこで乗り切れなければ、今試合に出ている選手よりも、もっと能力のある選手を連れてくることで個人の強みを伸ばすフェーズをクラブが賄ってしまうかもしれません。(お財布事情は分かりませんが。。)
クラブとして来季ACLに出られるのかどうかという点もありますが、ピッチに立つ選手それぞれも来季をどのような立場で迎えられるのかという分岐点になる3試合になります。この3試合での姿勢がいくつものタイトルを勝ち取ってきた功労者を退団させるというクラブの決断の追い風になるのか、その逆になるのかに大きく影響するだろうと思います。なにより去っていく人たちが「こいつらならやれる」と思ってくれるような追い出し方をしてもらいたいです。
リカルドが定例会見で話していた光景が実現しますように。
(今週のレッズの大きなニュースは阿部勇樹選手、槙野智章選手、宇賀神友弥選手が今季限りでチームを離れることだと思うが、彼らについてどんなおもいか聞かせてほしい)
「クラブとしても監督としても非常に難しい決断でした。人間として、彼らにすごく愛情を感じていますが、プロとしての決断を下さなければなりませんでした。彼らはそれぞれいた長い期間、全てを出し切ってくれたと思います。チームに喜びを与えてくれましたし、必要なときに彼らはいてくれました。一日に何時間も一緒に過ごす仲間ですから、非常に大きな愛情を感じています。そして私は常に選手のサポートをしたいという気持ちでいますが、逆に彼らにはサポートされたと思っています。本当に難しい決断でした。
彼らの今までのチームへの貢献は残るものですし、この状況を私は逆にモチベーションに感じています。例えば1ヵ月後に阿部が天皇杯のカップを掲げる姿を想像しながら、その気持ちを持って残り1ヵ月、一緒に闘っていきたいと思っています。」
いいシーズンではなく素晴らしいシーズンにしたい」リカルド ロドリゲス監督(定例会見 11/19)
今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。