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課題は勝ちながら見つけよう(2021/11/20 浦和vs横浜FM)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2021.11.22


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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今季、試合開始の段階で4-4-2以外の守備陣形を敷いたのは3月と8月、どちらも札幌との試合だけだったように思います。なので、メンバーを見た段階では関根と江坂が横並びになる配置を想像しましたが、始まってみると江坂が中央に1枚で立ち、その斜め後ろに敦樹と関根という4-5-1の配置。

ユンカー、小泉がメンバー外ということで前線で試合に絡んでいる選手の数が減ってしまっているということもあるでしょうし、なによりマリノスが得意な4バック泣かせとも言える高い位置で幅を取ってSBから芋づる式にゴール前のスペースを広げる攻め筋を意識しての守備陣形だったと思います。


試合を通してマリノスがボールを持つ時間が圧倒的に多かったですが、それでも危ない場面を最低限にすることが出来た要素がプレッシングと撤退時にそれぞれあったと思います。

まずプレッシングにおいては普段の4-4-2であれば両SHは自分から前に出ていくことはあまりせず、相手を自分よりも外側に置くようなポジションを取って待ち構えることが多いですが、この試合では大久保も田中も積極的に相手のビルドアップ隊へ縦方向、あるいは少し外へのコースを切るように出て行きました。

マリノスはビルドアップの初期配置は高い位置に幅を取る選手を置きつつ、手前は2CB+2CH+ティラートンがあまり外に開かずに流動的にポジションを入れ替えながら、相手が動いたらその背中を誰かが取るという動きを連続させていきます。

「偽サイドバック」という言葉が出てきて久しくなりますが、マリノスはティラートンも小池もビルドアップのスタート位置がピッチの内側、CBから見て縦から中向きになる場所にいることが多くなりますし、マリノスのCBは開くとしてもペナルティエリアの幅くらいになるため、CBから出せるパスの方向を限定し、敦樹、平野、関根が縦に入ってくるボールをカット、あるいは入ってきたボールを受けた選手を素早くチェックするような場面を作ることが出来ました。

関根にしろ、敦樹にしろ、強く相手に当たっていける選手が、味方の矢印の出し方によって自分のところへボールが来そうだという予測をしやすくなったことで、しっかり前向きに守備をすることが出来、ボールを拾えた時にはドリブルで運びながら全体を押し上げていたように見えます。


また、4-5-1での守備は撤退時にお互いのカバーをする動きがとてもスムーズでした。マリノスの得意技であるSBの脇に開いた選手にボールを当てて、SB-CB間、あるいはSBのカバーに行ったCBと中央に残るCBの間にできるスペースに選手が入り込むパターンに対して、SBが引き出された時の全体でのカバーが上手く機能していました。

20'06は浦和から見て右から左へ展開され全体でスライドする必要があった場面で山中が外でボールを受けた仲川へ出て行きましたが、この時に生まれたショルツとの間のスペースを敦樹が埋めています。一旦マリノスがボールを下げて20'21に再びチアゴから山中の脇に開いた喜田へパスが出て、山中が外に出て行く背中のスペースへ仲川が走り込みます。今度はショルツが横スライドで山中の背後をカバーし、ショルツが出て行った背中は敦樹、平野がカバーしに行ったことでゴール前への侵入を防ぐことが出来ました。

さらに大久保や田中もしっかりプレスバックすることでサイドの局面で相手に対して2vs1を作って突破を防ぐ場面もあり、誰かを攻め残りさせずFP10人がコンパクトな陣形を保って連動した成果は出ていたと思います。


それでもマリノスはビルドアップの場面では高丘が浦和のWGの頭上から縦スライドした選手の背中にボールを入れたり、扇原、喜田、ティラートンに加えて前線から前田が下りてきて縦、横のパスで浦和のWGの背中へ通したり、この辺りの相手の矢印を認知し、利用できるのは流石だなと思います。

また、後半になってからは外で開く選手を少し下がり目にすることで浦和のSBをより引き出すか、WGを押し下げるかの変化を強要したように感じました。前半は浦和の中盤5枚が横幅もコンパクトになることでマリノスの縦パスをカットできる場面を作れましたが、後半はマリノスの幅の取り方の変化によってそうした場面はあまり作れず、より一層マリノスの保持の時間が増えて行きました。

さらに、浦和は撤退時にFP10人が自陣にいるわけですから、当然ボールを奪った時にボールを出す先は手前になってしまいますし、中盤に5枚使っているということでポジトラの預け先は基本的に江坂になるので、マリノスからすれば奪われた時にどこに気を付ければ良いのかは分かりやすかっただろうと思います。


お互いボールを失った後のアクションが非常に早く、そこでやれるかやられるかという緊張感のある展開は神戸戦でも鹿島戦でも課題になった点でしたが、この試合では少なくともこの要素で劣勢になることは無かったと思います。

勿論、理想は試合の流れの中で自分たちの保持の時間、自分たちが試合のペースをコントロールする時間を増やし、上回ることですが、力関係や選手のコンディションも含めて今できることの中でやれる方法はこれだったのだろうと思いますし、3月とは違う結果を掴むことが出来たのはとても良かったと思います。


では、ここからは浦和がマリノスを上回れるために何か出来たのでは?というところで気になったシーンをあげておこうと思います。

キックオフ直後のビルドアップの段階で3月からは変わったなと言うのは見せられたと思います。0'14にショルツから西川にボールが渡りますが、この時に岩波は幅を取りながら西川と同じ高さまで下りてエウベルから十分な距離を取った状態でボールを受けて前を向けています。西もエウベルの矢印を意識して脇のポジションを取れており、それによってティラートンが出てくるまでの時間で前を向くという良い流れ。

ここで西→田中、落としのパスというところで西には上手く渡らずサポートに来ていた平野がボールに触れて江坂の方へボールを出すことになったわけですが、田中から西へボールが落とせていれば関根はマルコスと扇原のゲートの奥にいたので、そこから敦樹を経由するか、一発で山中まで展開するか、いずれにしてもマリノスが強く出した矢印を裏返す展開が出来たかもしれません。

ただ、逆サイドにいたCBがきちんと手前に深さを取る、その隣のSBも相手の矢印を意識しながら相手から距離を取ってサポートすることがこの場面での岩波、西が出来ていた部分になるのですが、これが上手くいかなかったのが3月の試合でした。その時の雑感記事を抜粋します。

第1段階の「初期配置を取れていますか?」という点はどうでしょうか?ここでの初期配置は西川までボールが下がった時の配置になります。リカルド体制では始動の段階から最終ラインの選手がキーパーの高さまで下りることが求められており、キーパーに対しての横のサポートをしながら前向きにボールを受けられる状態を作ることが必要ですが、槙野が西川の脇に下りるために移動を開始したのは、岩波が西川へのバックパスを蹴る体勢に入った時です。西川にボールが届いた時はまだ移動途中でした。

人が走るよりもボールの移動の方が早いので、完全に西川と同じ高さまで下りることは難しいと思いますが、槙野の移動開始があと少し早ければ西川からのパスは下がりながら対応する阿部ではなく、前を向いた状態の槙野へ出せたかもしれません。

第1段階の初期配置を取るところで後手を踏んでしまったのであれば、そのツケをどこかで清算しないといけませんが、先述の通り阿部のパスのバウンドが合わずに岩波のボール処理に時間がかかったこと、宇賀神がエウベルから離れてサポートできなかったこと、下がりながらサポートに来た敦樹が扇原の存在に気付けなかったこと、それぞれ難易度の高い低いはありますが、それぞれが上手くいかずにボールを奪われてしまいました。

この中で現実的なのは宇賀神がエウベルから離れてサポートして、無理に繋げられなかったら前に蹴ってしまうという感じでしょうか。ただ、かなり難しいけど敦樹が扇原のプレスをターンで外すことが出来れば逆に大きなチャンスが生まれたかもしれません。


また、39'59にスローインから岩波→西川と渡った時に仲川がショルツへのコースを切りながら西川へ寄せます。そこへ平野がスッと西川から縦のコースへ入ると仲川に隠されていたショルツへ渡してプレスを空転させました。

そして、この場面でもやはりSBの山中が相手から距離を取った状態で前を向いてボールを持てており、仲川の背後のスペースを埋めるべく小池が出て行った裏には大久保がいて、喜田も山中の方へ出て行っているのでチアゴの周辺が手薄になっており江坂はそこへ走り込んでいます。残念ながら山中が出した浮き球のパスは思ったほど高さを出せず小池で引っ掛かってしまいましたが、ここで江坂に通っていればチアゴの背後へ大久保が抜け出してチャンスを作れたかもしれません。


このように3月と似たような場面になった時に上手くポジションを取れるようになっていることはポジティブに捉えて良いと思います。ただ、良いポジションを取れたら1点もらえるわけではないので、そこからしっかりボールを前進させないといけません。ここでいわゆる「止める」「蹴る」という個人のスキルがものを言う訳で、来年マリノスと対戦するときにはこの部分を伸ばした状態で挑んで、しっかり内容でも上回れるようになりたいですね。


少し感傷的になるような話題が試合の前に続いてしまいましたが、そんなことを吹き飛ばすような気持ちのこもったスタンドの拍手と、ピッチに立っている選手が実力でその権利を勝ち取っていることを証明するようなプレーを見た気がします。

押し込まれる時間が続いて気持ちがなかなか落ち着きませんでしたが、8月もそうだったように残り4試合も勝ちながら自分たちの強さを掴んでいきたいですね。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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