この記事でわかること
- 小泉の中央起用がもたらした奪う守備
- 配置変更の応酬
- 相互理解が深まっている兆し
- クロスへの入り方
- 自信と余裕を取り戻せ
動画でも配信中!
浦和レッズサポーター間での議論活性化を目標に戦術を解説するマッチレビュー。今回はJ1第21節、FC東京戦です。
ミッドウィークに2-2の引き分けで終わった浦和は、ホームにFC東京を迎えました。
内容が妥当な結果に繋がらない中で、内容も落としてしまうような流れがあった中で、良い内容を妥当な勝利につなげられた試合だったと思います。
1点目に象徴されるような非保持守備のところと、配置の変更を駆使して相手の空いている場所を使えたボール保持について解説します。
小泉の中央起用がもたらす奪う守備
今節は小泉がトップ下、2トップの一角で起用されましたが、特に守備面での貢献が大きかったです。
昨年はユンカーと小泉や、小泉と江坂が最初のプレッシングを担当して成果が出ることも多く、規制や誘導によるボール奪取でのボール保持回復や、ショートカウンターがチームを支えてました。
一方で今年は、サイドハーフも含めて前線の選手がそれなりに入れ替わったことや、過密日程の影響でトレーニングができなかったこともあって、少し物足りなさがあったのは事実です。
トップからの誘導と規制
その中で、1得点目をショートカウンターで奪ったように、前からのプレッシングの面で成果が出せました。
東京は後方からある程度繋いでビルドアップしていくことを目指しながらも、そこまで成熟度が高くありません。
なので、ここを狙ってショートカウンターを出したい側面もあって、久しぶりに中央で起用された小泉には期待していました。
トップ下よしおに非保持守備を期待したい
— KM | FC東京戦アップした (@maybe_km) July 10, 2022
嵌め込む守備
東京の保持を見ると、CBとアンカーの配置をあまり動かさずに、+1をサイドバックか梶浦or松木でカバーする仕組みでした。
浦和はアンカーへのコースを消しつつ、CBにプレッシャーをかけてサイドに誘導することから始めます。
こうなると、東京のサイドバックかインサイドハーフが降りながら受けるので、その背中から強襲する形で、それぞれ浦和のサイドハーフとボランチがついていく整理ができていたと思います。
最初が嵌るかどうかが大きい
その分、中央のスペースを多少は許容するので、蹴らせたとしてもディエゴ・オリベイラとレアンドロに強さを見せられるほうが嫌でしたね。
ただ、そこまで大きな問題にはなりませんでした。
小泉は中央で最初のプレッシングラインを担当する時の追い方や、距離を詰め始めるタイミング、詰めていくスピードの調整がうまく、トップに求められる規制と誘導がかなり上手で、概ね東京のビルドアップを阻害することができました。
松尾もトップの守備の役割に徐々に慣れてきたかなと感じます。
バックパスを切る重要性
また、小泉はサイドに誘導したあとの、選択肢の奪い方も良かったです。
例えば先制点の一つ前のプレーで、29:50のシーンがわかりやすいのですが、森重に対してバックパスを切る追い方が効果的でした。
右サイドから左の森重へボールを移動する東京に対して、小泉はアンカーを消しながら、横からジリジリと詰めていきます。
一番嫌な中央の経由に蓋をしつつ、それでもボールホルダーに対して一気には詰めないので、浦和の後方の部隊がスライドする時間があります。
そのため、浦和の陣形は右サイドに圧縮できているので、密度を高められている状態、つまりサイドでボールを奪う準備ができています。
相手を意図的に前に進ませる
次に浦和が狙うこととしては、その場所にボールを進ませることになります。
この時の小泉の寄せ方が秀逸で、森重の斜め後ろから寄せるコースを取ります。
なぜなら、この状況で狙いたいのは浦和が張っている網の方向に進ませることで、避けたいのはバックパスをされて、やり直されることだからです。
バックパスをされると、組織全体が再び中央に戻ってセット、一番前からサイドへの規制・誘導をもう一度やることになります。
もっとも嫌なのは、ゴールキーパーを経由して素早くサイドを変えられることで、特にこのシーンでは右サイドからボールが循環しており、東京の選手が逆サイドに複数人残っています。
そのため、小泉が森重からバックパスの選択肢を奪ったことは重要で、浦和の守備組織が密集しているエリアに強制的に進まざるを得ない状況に追い込み、最終的には敦樹が縦パスをカットすることに成功します。
先制点も含めて東京のビルドアップを封じながら、浦和が意図したエリアに追い込んでボールを奪う守備が出来ました。
最近はこういうシーンをなかなか作れていなかったので、そういう意味でも良かったと思います。
配置変更の応酬
攻撃に関しては、浦和が主体的にボールを持つ時間が長くなりましたが、前回対戦時と同様に配置の動かし合いは頻繁に起こりました。
浦和はこの試合、ボールを持った際は4-3-3気味を基本とした配置で試合に入りました。
事前の想定とは違ったはず
これはおそらく、東京が4-3-3で入ってくる想定で準備したものでしょう。
最終ラインの4枚を維持しつつ、東京の外から来るウイングと、1枚インサイドハーフがが前にくるので、その過程で発生するスライド、及びアンカー横のスペースを使うことを前提とした配置だったのだと思います。
しかし、実際は4−4−2でした。ディエゴオリベイラとレアンドロの2トップですが、レアンドロはアンカー配置の岩尾へのマークを強めに意識したものでした。
最初の10分は積極的に裏に入れて様子を見つつ、その後は相手の配置をに合わせてディエゴの脇から運ぶことが多かったかなと思います。
もちろん東京はサイドハーフを前に出したいわけですが、バックラインのパスや運ぶドリブルと、それに合わせた両サイドの3人のローテーションを軸にして相手に的を絞らせませんでした。
浦和にとっては大きい飲水タイム
ただ、致命的なチャンスを作るためにもサイドだけではなく、相手のボランチ横を使いたい意図はあったのだと思います。
東を釣りだそうと徐々に敦樹がポジションを下げる動きもありながら、迎えた飲水タイムで4-4-2に対するオーソドックスな3-2-5気味に変更。
酒井が最終ラインに入って、大畑が上がっていく左肩上がりの形で、小泉を右に回しました。
まずは2トップに対して+1を確保、サイドハーフを引き出したうえで、中央のボランチに対して同数を当てて、その横や裏で小泉や大久保に受けさせる狙いがあったと思います。
飲水タイムがあるとハッキリと修正は効きますが、相手が想定と違う4-4-2で入ってきたことを認知して、試合中に変化ができるとより良いですね。
想定通りの4-3-3への対応
後半開始直後から東京は紺野を投入、4-3-3にしてきたので、浦和は再び4バック維持の形に戻しています。
おそらく事前の想定通りの形で、準備していたのでスムーズにプレッシングを外して前進できました。
後方から繋ぎつつ、外切りのWGが出た裏に起点を作ったりと、相手のやり方と配置が変わってもそれに対応した前進を見せられました。
例えば馬渡のビッグチャンスでも、江坂が相手のWG裏に降りた代わりに馬渡が最前線に移動していました。
ポジションの交換は行いつつも、裏と手前で人数のバランスを崩さなかったことは、G大阪戦からの反省としても良かったと思います。
機能する右サイドのローテーション
クリーンに前進できれば相手を押し込むことができます。
最近の試合で機能性の高い酒井・敦樹・モーベルグの右サイドのローテーションを加えながら、相手陣内の奥深くを取れていました。
ボールを失う位置が高くなり、切り替えのプレスを深い位置で仕掛けてボールの再回収、という試合展開を作れました。
敦樹の2得点目も、こういった展開から生まれました。
相互理解が深まり始めているか
中断前の試合では、選手同士でやりたいプレーが一致しないことが多く、課題としてありました。
特にC大阪戦なんかは顕著だったのですが、受け手と出し手のタイミングが合わないという場面が散見されました。
中断明け以降徐々にですが、その相互理解が深まりつつあるのかなと感じています。
得意なプレーと判断の傾向
3得点目は左サイドのスローインから一気に右のモーベルグへ展開したところからでした。
あえて孤立させることで1対1を作ってあげる配置は狙ってやれていることで、京都戦の2得点目はフリーキックから、今回はスローインから同じような展開です。
右サイドに展開したあとはモーベルグの得意な角度に入り、江坂が回り込んだわけですが、京都戦でもほぼ同じようなシーンがありました。
また、敦樹が内側に入ってくる動きも他の場面であったことで、モーベルグの特徴とそれに合わせた連携が見せられているのかなと思います。
クロスへの入り方
この日は後方から西川含めて繋いでビルドアップができていましたし、組織全体で前への移動ができてたこともありますが、クロスに入っていく人数の確保もスムーズにできていました。
ニアに入っていく選手、その延長線上のファーにいる選手、一歩引いた位置にいる選手、という感じで「特定の誰かが」というよりは、その時にエリアの近くにいる選手たちで役割分担ができるようになってきたと思います。
1得点目は顕著な例でした。
明本がいる時は大体ニアの潰れ役になるので、ゴールを奪う面では少し損な役回りな気はしますけどね。
もう一工夫とリンセンへの期待
ただ、クロスへの入りが良くなっても高さと強さで上からぶん殴るみたいな選手はいないので、ゴールに繋げるためにはもう一工夫といった感じです。
3得点目はエリア内に入ってからもう一つ奥を取れたので、大久保がフリーになれました。
他にはニアで潰れるところを通過させてファーにいる選手に届けるとか、クロスをあげる選手が一歩引いた位置にいる選手を見れるかというところですね。
例えば湘南戦の江坂のゴールなんかがこのパターンです。
ついに合流を果たしたリンセンが上からぶん殴れるパターンも期待します。
いずれにしろ、選手個人個人の得意なプレーとか判断の傾向、そういった部分の相互理解が深まっているようなシーンが見受けられるので、引き続き向上を期待したいです。
まとめ - 結果から自信と余裕を取り戻したい
良い内容で順当な結果を得た試合になりました。
東京のビルドアップがイマイチだったとはいえ、前からのプレッシングで嵌める回数も多かったですし、クロスへの入り方など、昨年と比べて今季物足りなかった部分の向上が見られたのは良かったと思います。
引き分けがリーグ断トツで多いですが「引き分けでよかったね」という内容よりも、「勝てなかった」という内容が多かったのがこれまでです。
結果が付いてこない中で、焦りもあると思います。少しずつゴールが生まれている事実で自信と余裕を取り戻してもらって、内容を結果に繋げる流れを作ることを期待したいと思います。
ついに内容と結果がリンクして3得点の快勝を飾った今節。レビューを読んでの感想や意見はぜひ下記Twitterの引用ツイートでシェアしてください!
♦️戦術分析レビュー
— KM | FC東京戦アップした (@maybe_km) July 12, 2022
小泉の中央起用がもたらした守備 - J1 第21節 #浦和レッズ vs #FC東京
◆復活した奪う守備
◆配置変更の応酬
◆相互理解が深まっている兆し
♦️東京戦RVアップ。感想・意見ぜひ引用RTやコメントで!
📝https://t.co/4fggAUF1MC
▶️https://t.co/9VPlrIUFx0#urawareds #fctokyo pic.twitter.com/IdsAua1I0L