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「組織」があるからこそ「個」が問われる(2021/11/3 川崎vs浦和)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2021.11.04


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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お互いにボールを手前から繋ぐスタイル同士でそこの技量を比べ合うような試合展開だったこともあって、かなり引き締まった面白い試合でしたね。個人的には今季最も90分が過ぎるのが早く感じた試合でした。

とは言え、勝ち切れなかったうえに浦和のズッ友ことG大阪が横浜FMに勝利したことで川崎が引き分けながら優勝を決めてしまう場に居合わせることになってしまいました。目の前で優勝されてしまうのは気分の良いものではないですね。

川崎に対してはこれだけ圧倒的な勝ち点差をつけられてしまっているので素直に「おめでとう」という思いはありつつ、西野さん風に言えば今年は喜ばせておいてやるくらいに思いたいですし、そう言っても良くない?という試合ではあったかなと思います。


試合前にKMさんとtwitterのスペースでプレビュー的なことを話した時に言ったのは、川崎は全体でガンガンプレスに来るような選手のキャラクターではないのである程度ボールは持てるだろうということと、1トップのダミアンに対して2CB+2CHがどう立ってプレス回避していくのかという点がありました。

ここ最近は柴戸か平野のどちらかがCBの間に下りて3-1の形にすることが多かったですが、この試合では西川を使いつつ2CBが開いて2CHは下りずに残るというスタンスでした。特にゴールキックを繋いで始めた時に上手く前進することが出来ましたが、これも西川が軽くつついて平野のドリブルから始めるパターンではなく、平野は前に残しておいて西川の両脇にいるショルツ、岩波を使いながら相手を食いつかせて背中を取るというクリーンな前進でした。

川崎は1トップのダミアンが浦和のビルドアップの初手になる選手(この試合では主にショルツ)へプレッシングをかけて、逆側のCBにWGが絞ってくるというのがベースだったと思います。そうなった時にショルツが両足でボールを扱えるのがかなり活きていて、西川にパスを戻そうとする→ダミアンが西川へのコースを切りに行く→ショルツはパスをやめて縦に運び出す、という回避が何度もありました。9'02~のゴールキックからの前進はとても良かったと思います。

ただ、中盤を越えた位置で江坂が前向きになった時に小泉、汰木、関根が近すぎた感じには見えましたかね。関根がもっと外に膨らんで登里を引っ張りつつ小泉、汰木が登里と谷口の間、谷口と山根の間を狙えるともっとスクランブルな状況を作れたかもしれません。いかに相手を「外す」のかという部分だけ物足りなかったかなと思います。

24'59~のゴールキックでは逆にそのままショルツが西川へリターンして、西川→柴戸→岩波の縦+横の2本のパスでプレス回避も出来ています。こちらはそこから平野、小泉が繋いで関根の抜け出し、マイナスクロスに汰木、江坂のところでシュートチャンスという流れだったので、こういうところで点を取り切りたいところでした。


また、浦和はプレッシングでも江坂、小泉の2トップが谷口、ジェジエウに出て行くときには横方向を切って縦へ誘導、SBにボールが出た時はSHも内側から寄せることでさらに縦へ誘導という流れから、ボールの出し先になるエリアには人が待ち構えた状態を作ることが出来ていて前に蹴らせて回収というのを何度も成功させていました。

さらに前に蹴らせる前に関根や小泉が登里を潰してボールを奪ってしまう場面があるなど、ボール保持率では川崎が結構優勢だったように見えますが、浦和としては自分たちの思惑の中で試合をコントロールできていたような手ごたえはあったのではないかと思います。


かと言って川崎を上回れていたのかという訳ではなくて、川崎が保持、非保持の両面で中央を経由して逆サイドへ展開するためのターンにおける攻防は上回っていたのではないかと思います。

19'18に浦和が自陣右サイドの深い位置からボールを逃がしにかかって中央でフリーになっている江坂にボールを渡すところまでは行ったのですが、ここで脇坂が遅れてはいるものの江坂にスプリントで寄せに行って逆サイドのスペースへ走ろうとしている汰木に向かって右足を振るだけの空間を消しています。

江坂が上手くキックをやめてターンをすることでボールの保有権は変わらなかったものの、そこで汰木が左サイドの広いスペースへ出て行ってボールをペナルティエリア付近まで運んでいければチャンスになったかもしれない場面でした。


また、30分過ぎからの川崎の連続CKの流れからの失点の手前でも、浦和のビルドアップでショルツからの横パスを柴戸が受けて横方向にターンしようとしたところでボールコントロールにミスがあって、ダミアンがこれをつついてボール奪取、そこからするする出て来た脇坂が旗手からの斜めのパスをしっかり横方向にターンして逆サイドの家長へつないだ後に決定機という展開がありました。狭いエリアでの細かい技術、川崎が風間時代からこだわっているボールを「止める」ところの技術に差が出たシーンだったかなと思います。


浦和は山中の復帰以降、ショルツがボールを運んで山中を押し出すことで、山中の必殺クロスを繰り出しやすい状況がありましたが、この試合ではダミアンがビルドアップの初手に強くプレッシングをかけるので、最初にボールを持つことが多いショルツがなかなかオープンになる状態が作れず、それによって前半は山中が高い位置でボールを受けることが40分手前くらいまでは無かったように思います。

それを踏まえてか、後半に入ると柴戸がCBの間に下りてショルツ、山中を押し出すような位置関係になりました。明確にショルツの背後をケアしてくれる選手がいることも手伝ってか、48'05にはショルツがハーフレーンから運んで相手を中央に引き付けてから外の山中へボールを渡して山中のクロスという場面を作ることが出来ています。

ビルドアップの初手で上手く持ち運べれば、汰木、江坂、関根がそれぞれニアに入ったり、逆サイドまで膨らんでいったり、しっかりアクションが起こせていたので、またしてもこういうところで点が取りたいという場面でした。

しかし、柴戸が負傷で敦樹に代わってからはそこまで明確にCHを落とすことはしなかったので、後半最初の時間帯に良いアドリブが出たのか、敦樹には違うタスクを与えていたのか、このあたりはどうだったんだろうなという疑問は残りました。


序盤からお互いに中盤でのテンションが高い展開でしたが、浦和の方が消耗が早かったのか後半の飲水タイム前後からは川崎が中盤でのトランジションで優位に立つ場面が増え始めました。DAZNでは福田さんも絶賛していましたが、旗手のスタミナと当たりの強さ、次の展開への予測に基づくポジショニングの良さは時間が経つごとに際立っていったように思います。

ただ、浦和の方も久しぶりに出番がやってきた興梠がボール保持での1stアクションを積極的に起こしていて、それによって岩波やショルツからのボールを引き出したり、84'30には中盤ラインを越えて下りていくことで橘田を引き出していて、それによって空いたスペースにはしっかり関根が入れていました。

同点に追いつくスローインの手前のフリーキック獲得も興梠が下りて行くアクションに関根が呼応した流れがきっかけでしたし、大きなアクションは連動する人がいないと悪目立ちしてしまいがちですが、今の浦和はそのアクションによって生じるスペースを見つけて、使うことが出来るようになっているので、こうして大きな1stアクションをしてくれる興梠が入ることでまた1つ大きなオプションを取り戻した感じはあります。


ロングボールを理不尽に収めてくれる選手は今の浦和を見渡しても興梠くらいだと思います(木下には期待したいけども)。この試合では、まだ相手を背負わなければいけない、相手が強くアクションを起こしてきた時に跳ね除けるような場面があった時の強さはまだ足りないなと言うのは感じました。

また、これまでの文の中で「外す」「止める」という単語はあえて鍵括弧に入れましたが、そこは川崎が積み上げてきた部分で、今の浦和との差としてこの試合で見えた要素かなと思います。この試合を観ればわかるように、チームとして出来ることが増えた分、個人で何が出来るのかというところに改めて焦点が当たる段階に来ているように感じます。

リーグ戦の残り4試合、そして天皇杯の準決勝を勝ち抜いた先には再び川崎との再戦が待っているかもしれません。個人のフィジカルが急激に伸びることは考えにくいですが、それでも1試合1試合、あるいは1回のトレーニングごとに意識を持つことで一歩一歩伸ばして行ける部分だと思うので、「個」の部分でもさらなる成長を期待したいと思います。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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