同じ相手と中2日でしたが、まさに3日前の後半の延長線上にあるような展開から試合がスタートしたように見えました。浦和はCFがユンカーからシャルクに代わりましたが、それ以外はMD3の66分での4枚替えを行った後と同じメンバーでしたし、大邱の方はスタメンもスタンスもそのまま継続といった感じでした。
なので、試合序盤は右はモーベルグが外レーンからスタートして、そこにボールが入ったらどんどん仕掛けてもらう、左は明本、関根が裏を狙いつつ相手と競り合う強さを見せながら突破を図るという展開。
モーベルグは大邱のSH脇でボールを受けることが多く、WBからは距離が取れていたため、ボールを持ったら自分の間合いを作る余裕もあったのではないかと思います。また、そこで相手が引き付けられれば酒井か敦樹がモーベルグを内側から追い越して相手の裏まで抜けていくことが多かったのは前回の後半にプラスして出せた良かった点だったかなと。そのおかげで相手のWBが前に出にくくなったのかもしれません。
左の方は基本的には明本が外、関根がハーフレーンの奥をスタート位置にしつつ、大邱の中盤ラインのゲートへ江坂か関根が顔を出したら、シャルクが斜めに裏へ抜けようとするアクションがあったり、関根がそのまま裏へ抜けようとして明本が空いたり、手前と奥、それぞれへ誰かがアクションを起こすというのが連鎖的に出来ていたように思います。
ビルドアップ隊は酒井、岩波、ショルツを最後尾にしてスタートするので、前回の前半は被カウンターで高い位置を取ったSB裏が狙われやすかったですが、その位置を酒井とショルツで対応できるのでその部分では簡単にピンチを招かなくなりました。
試合の入り方としては前回の試合の反省点をきちんと踏まえた配置とアクションを作れていて、この流れのうちに点が取れればと思ってしまうような内容だったと思います。
大邱が浦和のビルドアップ隊にほとんどプレッシングを行わないので、序盤は岩波から左奥の関根や明本へ発射することも多く、それによって裏へのアクションも起こしやすかったということもあってか、少しずつ大邱は5-4-1のSHが前を覗いてボールの出所を押さえたがっていたようにも見えました。
相手の中盤が前を覗いてくれた時には、例えば湘南戦がそうだったように、前を覗いた選手の背中を使ってボールを前進することはきちんと出来るので、より浦和としてはやりやすい状況は生まれていたように思います。
後半になると大邱は再び5-4-1でブロックを構えて、中盤は入ってきたところを受け止めることを強調してきたのと、前半はWBとモーベルグの距離があってそこで良い状態でボールを持たれていたところを早いうちに距離を詰めさせて簡単には仕掛けられないように手当をしたのかなと思います。
65分に松尾、大畑を投入して左サイドをリフレッシュしましたが、松尾はモーベルグと同じように外に張ってボールを受けることが多かったものの、モーベルグとは違って相手WBに近い位置になっていたのと、大畑が後ろから追い越すのは当然いくらか時間がかかるので、ここからの突破は難易度が高かったかなと思います。早めにSHのプレスバックもあってカットインは難しかったですし、縦に仕掛けさせるなら左利きの大久保でも良かったかもしれません。
外にいる選手を内側から追い越す役割という点では、右サイドは敦樹が相手の中盤ラインを越えるくらいの位置にいることが多かったので、モーベルグにボールが入った時にすぐに裏へ出ていけるのですが、左CHの柴戸はアンカー役ですし、江坂も裏に抜ける動きはしますがスタート位置が必ずしも左ハーフレーンというわけではないので、松尾はどうしても単独での打開を求められる場面が増えてしまったように思います。
大畑がビルドアップ隊としてプレーできることと、ショルツが後ろから運んでいけることについて、この二人を隣同士にすることによってプレーエリアがかぶってしまう(その分、他で人が足りないエリアが生まれてしまう)という懸念事項が鳥栖戦などでも顕在化していました。
その解決策としてショルツと岩波を左右逆にしてきたわけですが、そうなると今度は右のSBとSHでタスク調整が必要で、モーベルグと酒井の関係性は変えたくないし、そこを変えると今度は敦樹のスタート位置も変える必要があるし、といった具合に一か所を変えようとしただけで色んなところに歪みが生まれてしまうのが悩ましいところ。ショルツの前は空けておきたいので、いわゆる偽SB的に柴戸の脇のエリアへ大畑を持っていくのも違うでしょうし、難しいですね。
平野が入ってからはまた浦和が主体的にボールを持てる時間が増えたように思います。交代で入ってすぐに相手CFの裏でボールを受けてターンしてから斜め前の敦樹にパスをしたり、左サイドでいったん詰まったところを後ろに下がらず中盤で横サポートとしてボールを受けて右サイドへ一発で展開したり、どの角度からでもボールを受けられて、どの角度へもボールを出せるスムーズさはとても良いですね。
ポジショニングでもショルツが運ぼうとするときには相手CFにぴったりつくようなポジションを取って相手を引き付けることも出来ていて、昨年も夏に彼が加入してビルドアップの質が一段上がりましたが、この試合でも彼の存在意義が発揮されたのではないでしょうか。
リーグではコンディションが理由で試合になかなか絡めませんでしたが、平野のピッチを横も縦も広く使えるしなやかさであったり、この試合ではなかったものの、最後尾に下りてボールを持った時には足元でピタッとボールを止めてしまって相手をよく観察してからプレーを再開するといった駆け引きの部分が今年の浦和のビルドアップには足りなくて、その分縦に急ぎすぎたり、自分たちでプレーの選択肢を狭めてしまっているように見えていました。
ここからどれくらい時間をかけてプレータイムを伸ばしていくのかは分かりませんが、「相手を見る」がベースのリカルドのチームにおいては彼のようなプレーが出来る選手が後方に増えるほど前線の選手に時間とスペースをより提供しやすくなっていくだろうと思います。
チャンス自体は試合を通して何度も作れていて、どれかを決めていれば、、というのは今年何試合も見てきています。沖縄キャンプでのトレーニングでもなかなかシュートが入らずにリカルドが頭を抱えていたといったことを記事で読みました。
「数打てばいくつかは当たるからもっと数を増やしていこう」という量的なところと、「一発一発をきちんと仕留められるようにしよう」という質的なところと、どちらも求めたいところなのですが、おそらく今のチームが先に解決できそうなのは前者でしょうし、ある意味、監督がやれるところは前者の部分しかないのだろうと思います。
シュート精度は単純なボール扱いの技術の問題と、その場面でいかに脱力できるかというメンタルの問題と、両方がかみ合わないとなかなか向上しないのだろうと思います。メンタルの問題は、試合で結果さえ出てしまえば勝手に解消されることもあるし、逆に結果が出ないと負のスパイラルとしてどんどん問題が重くなってしまうこともあるし、リカルドとは別の視点からのアプローチも大切になっていくでしょう。別の視点というのは、他のコーチやスタッフもそうでしょうし、現地でのサポートも多分に含まれると思います。
大邱との戦績が1分1敗となってしまったので、自力での首位突破は無くなってしまいましたが、リカルドが「プレシーズンに近いような状況でもあります」ということを試合後会見でも言っていたように、リーグ開幕からしばらく思うようにトレーニングや実戦経験を重ねられなかった分を取り返すという意味でもこのACLは活用できています。
大邱との2試合はメンバーを絞って戦ったので次戦はまたMD2の山東戦のようなメンバーになるかもしれませんので、そこでチームの総和が高まっていくことを期待したいですね。
とはいえ、仮に1位になれないとしても、GS敗退でリーグ戦に戻るのと突破して戻るのではクラブ全体の雰囲気に大きな差が出るはず。たとえ先の方でしんどい日程が待っていたとしても、リーグでの停滞感を払しょくするためにここで成功体験を一つ作って帰ってきてもらいたいです。
国内で声出し応援が出来るチャンスがいつ来るのかはまだまだ分かりませんし、決勝トーナメントがどのような会場で行われるかは分かりませんが、有志のチャント有の試合があと2試合で終わって欲しくありません。
やっぱりサポーターの声があってこそのフットボールだと思いますし、そういう風景を積み重ねることで少しでも国内の雰囲気が前向きな方向へ変わっていくことを期待したいです。そのためにも残り2戦しっかり点を取りながら勝って、次のステージへ上がってもらいたいと思います。
今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。