この記事でわかること
- 浦和の準備してきたこと
- 想定外だった大邱の布陣
- 前半、硬直した理由
- 体感したACLの強度
- 困った時にどうするか
支配的な試合を続けて2連勝を飾った浦和は、グループ最大のライバルと目される大邱との一戦を迎えました。
ボールを保持しながらも、浦和対策を採ってきた大邱のコンパクトな布陣を崩せず、結果は1-0の敗戦。
事前の準備が外れたことや、ACLの経験不足が影響したのかなと思うので、解説していきます。
想定外の布陣と硬直
この試合のボール保持率も70%超え。浦和がボールを保持する基本構図は、これまでの試合と大枠は同じでした。
大邱は、5-4-1で縦にコンパクトした布陣でスタート。
ミドルゾーンに構えてなるべく動かず、浦和の体勢が悪くならないとプレッシングには出てこない構えでした。
それでいて、最終ラインのコントロールがかなり緻密に行われており、縦のコンパクトネスを維持。
ボールの場所や、パスの方向に合わせたラインの上下は最後まで徹底しており、かなり細かい上下動・スライドが行われていました。
浦和が使いたい「間」と「背後」は徹底的に消す、という強い意識が見てとれました。
スタメンから推測する事前の狙い
相手の配置ややり方を見て、それに対して最も効果的な方法を、自軍のできることからピックアップして戦うのが今の浦和です。
しかし、アンカーがいる3-5-2を想定して準備していたようで、大邱の布陣は想定外でした。
「相手が3-5-2以外の形で来ることは予想できていませんでした。」
浦和は右肩上がりの3バック化で、3-2-5の布陣。
大邱の布陣を3-5-2で想定していたことを考えると、浦和の当初の狙いも見えてきます。
相手の2トップに対して3バック化で数的優位を確保しつつ、定位置をキープするボランチ2枚で相手のインサイドハーフを引き出す。
大外の高い位置に酒井と松尾が立つことでWBを押し込み、その手前にスペースを創出。
すると、相手の中盤3枚の脇や、アンカーの横が空きやすくなるので、そこに江坂と小泉を配置する狙いだったと推測できます。
先日のジュビロ磐田戦で狙った布陣のイメージに近いでしょうか。
求められる"想定外"時の対応
しかし、試合が始まってみれば、大邱は高いコンパクトネスを維持した5-4-1の布陣。
浦和としては事前準備通りに布陣して試合を始めますが、相手の布陣が想定と違うので、様子を見ながらボールを回す形になりました。
本来、相手2トップに対する優位確保のための3バック化でしたが、5-4-1の4-1の幅に収まってしまう格好になったと思います。
15分ごろから浦和は、岩尾や敦樹を落として幅をとった、4バックに移行するシーンもありました。
32:30の岩波から江坂へ縦のパスが入ったシーンでは、その移動の過程で相手中盤4枚の「間」を広げることには成功しています。
ただ、MFを広げた背後には5バックが相当な近距離に布陣していたので、その先でチャンスを作れそうかというと、難易度は高い印象でした。
相手を見て狙いを変えられるか
5−4−1で縦にコンパクトということは、DFラインの背後はリスクとして差し出しているということです。
そのコンパクトネスを広げるためにも、背後への長いボールを狙っても良かったかもしれません。
手前を空けるためには、深さを、ということです。
狙いを変更する難易度は高い
ただ、これはある意味、事前の準備とは真逆の狙いになります。
確保した優位で相手を引き出して、DF-MF間に作ったスペースを小泉と江坂が使う狙いを準備していたと推測されますし、そのためのメンバー構成をしていたはずです。
ここから11人の方向を変えて揃えて、別のことをやろう、というのは難しさもあるでしょう。
また、ボールは保持できていましたし、引き分けでもOKという立場でした。
ボールを捨てる可能性が高い、という選択を取りづらかった面もあったと思います。
ゲームを落ち着かせて、修正が行えるハーフタイムを迎えること自体は悪くはない選択でしょう。
ACLにおける、局面の大切さ
ビルドアップに対するプレッシャーは強くはなかったので、後半に入って大畑を内側の背後に上げるローテーションを噛ませて、ビルドアップに関わる人員を減らします。
相手DFラインに対峙する味方を5+1の形にして、相手WBに二択を突きつけた上で、裏への長めのボールを織り交ぜる狙いがあったと思います。
これで一定の成果は出ましたが、こういった構図が固まる前に失点してしまったことは残念でした。
ゴールキックの競り合いから素早く始められたスローイン、サイドに展開されて早めのクロスと、大邱が狙っていたことで失点。
また、右の大外を担っていた酒井のコンディションが良いようには見えず、細かいミスが続いたのはもったいなかったです。
交代策で圧力は強めたが・・・
その後、モーベルグが入ってからは彼が大外高い位置の担当。
岩波とショルツのサイドも変えたことで、岩波がやりやすい角度から、長いボールが通るようになりました。
モーベルグの対人突破はレベルが一段違う感があり、チャンスも作れていたと思います。
左も球際で戦える明本と関根を配置して、積極的なアクションを起こしてもらうこと、そこにショルツの運びを絡めて、サイドからの攻略を狙いました。
ただ、大邱のラインコントロールとスライドは引き続き強度が高く、狭い場所を連続的に、ミスなく進んでいく必要に迫られる場面が多かったと思います。
もしくは、狭くても球際を勝利してなんとかしてしまう、みたいなことも考えられますが、そこの強度は出しきれず。
ACLの強度を体感
ロングカウンターや、4バックに対するWBの幅をシンプルに使ったクロス攻撃に活路を見出していた大邱ですが、それをある程度許してしまったのも痛かったです。
攻→守の切り替えの、最初の球際で勝ちきれないシーンが目立ちました。
岩尾のところで負けてしまう場面もありましたが、全体としても勝ち切れたかというと微妙なところでした。
やはりACLでは、この局面の重要度がリーグより上です。
ACLの経験がないメンバーがほとんどなので、そういう影響もあったかもしれません。
ミシャ期の浦和でも初めて出たACLがそうだったように、これは通る道なので、そういう意味では良い経験になったかと思います。
押し込む浦和、人海戦術の大邱
大邱はボールを持たれている前半から、かなり細かくラインコントロールとスライドを行っていました。
そのため、終盤に差し掛かると、さすがに運動量が落ちてくる部分がありました。
浦和が後半から狙いを強めていたこともありますが、サイドや裏に振って両翼を使う展開が増えます。
しかし、最後までゴールは奪えず。
大邱はラインが下がっても、最後のペナルティエリア内にはかなり人数をかけていました。
そのため、わずかなシュートチャンスしか許してもらえず。
また、最後まで攻→守の切り替え時の強度で上回れず、ボールを収められて回復の時間を与えてしまいした。
試合はそのまま終了し、1-0の敗戦を喫しました。
まとめ - 困った時にどうするかと、ACLの経験
出場停止選手がいた影響もあったかもしれませんが、大邱が浦和に対する個別の対策を行ってきました。
5バックから極端に間と背後を消された格好で、昨季の大分戦とかに近い構図になったかなと思います。
浦和は今回、大邱の布陣を3-5-2と想定して準備を進めて、その準備を実現するためのスタメン選考もしました。
ただ、こういった事前の準備が外れてしまうと、困ってしまう傾向があります。
これは昨季にも見られた現象で、改善を期待したいところ。
もちろん言葉で言うのは簡単で、実際にプレーしながら11人の共通認識を変えていくというのは、大変な作業だとは思いますが。
経験値を貯めていこう
また、ACLの経験値という壁にぶつかる、というのは個人的には想定内でした。
この経験をするためにも、なんとかACL出場権は欲しい、というのは昨季から言っていたことなので、糧にしてくれることを期待しています。
中国勢のスタンスが変化して、最初の二戦では実現しなかった「ACLらしい」試合だったと思います。
ただ、これでグループ2位に後退。
全体の得失点差より、直接対決の結果が優先されるので、次戦のリベンジは必須です。
ACLらしいゲームに敗れてしまった今節。レビューを読んでの感想や意見はぜひ下記Twitterの引用ツイートでシェアしてください!
📝戦術分析レビュー
— KM | 大邱戦レビュー書いた (@maybe_km) April 22, 2022
経験値と修正力 - ACL GS 第3節 大邱FC vs #浦和レッズ
⏰読了まで:約5分
◆浦和の準備と、想定外の布陣
◆前半硬直した理由
◆ACLの経験値
◆困った時にどうするか
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