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【雑感】2022/5/13 浦和vs広島(J1-第13節)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2022.05.15


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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ボール保持者に対して斜め前でサポートしたり、前がいなければ後ろの選手が保持者を追い越していく広島と、後ろから一つずつつなげて前進を図る浦和という、保持の局面では対照的なスタンスを取るチーム同士の試合だったかなと思います。

浦和は前節イマイチだったCBの配置を逆にして、右岩波、左ショルツとしました。CHは平野は継続でしたが、柴戸に代わって敦樹が入ります。CHは右敦樹、左平野でしたが、CBが逆になっていたことで前節起きた不具合は解消されたように思います。

2トップの間に平野が立って中を閉めさせて、SBは明本も馬渡もCBに対してあまり角度をつけない低めの位置からスタートして広島のIHを引き延ばしことで、内にポジションを取る小泉、敦樹にボールを差し込める場面もありました。モーベルグ、関根は状況に応じてポジショニングは変えますが、高めの位置で幅を取ることでWBを縦スライドさせないように出来ていたことも広島の中盤を引き延ばせた要因の一つだったかもしれません。

ただ、広島の選手たちのスライドが早かったのと、20'20やその後に平野が森島に寄せられてからは、平野がCB間に落ちて、平野がいたへその位置に小泉が落ちる、小泉が落ちた分は敦樹が前に出ていくといった変化もつけるようになりました。


正直、今の浦和は平野がへその位置でボールを捌けるのかどうかによってボールが前進するまでの手数が変わってしまっています。平野がへその位置で2回ボールを触ってボールが前進できた9'30~9'45は彼の真骨頂ではないでしょうか。

作図センスの問題で分かりにくいかもしれませんが、平野が使いたい中央のスペースに対して、1回目はそこへ入りながらボールを受けて、なおかつ明本に向かって出て行った森島の背後へ少しだけ運ぶ素振りを見せたことで、森島とサントスを引き付けた状態で明本へボールを戻します。(ここまでが1枚目)

そうすると、中央のスペースがぽっかり空くので、すぐに体の向きを変えて今度は逆方向からそのスペースへ入りながらボールを受けて逆サイドの敦樹へボールを展開します。

1回目のところで明本にボールを下げたら顔だけはボールの方に向いていても体は行きっぱなしという選手の方が多いと思いますが、平野は中継映像を見ているかのように、自分が動いたことで誰がついてきてどこが空いているのかをイメージ出来ているのか、空いたスペースに対して体を向けてすぐにボールを受けられる状態を作っています。

このおかげで最終ラインに下げずに逆サイドまで展開できるので、広島は3MFのスライドが追いつかずに敦樹が右ハーフレーンから運んで、最終的にはシャルクのシュートまで行き切りました。


そうなると、相手が平野のところを消そうとしてくるのは当然だと思いますし、柏戦同様、広島も後半の頭から選手交代を行って5-2-3へシステム変更し、サントスが平野を消して、森島と満田でCBをケアするという手段を取ったように見えました。

48'55~は岩波→ショルツの横パスをきっかけに森島がショルツ、手前に引いた明本へ藤井が猛然とプレスをかけていきました。この場面は明本のスタート位置が少し前になっていてショルツからのパスを後ろ向きに受けることになっています。明本は頑張ってターンして藤井の外側に張り出した関根へ繋ごうとしますが、藤井にすぐに左足からのコースを切られ、森島のプレスバックにも遭ったためボールを失ってしまいました。

浦和は数字にすれば4-1-2-3のような配置で保持をしていましたが、広島が後半から採用した5-2-3は、プレッシングに出ていく距離はそれぞれのポジショニングで変わりますが、誰がどこへという担当は分かりやすくなります。

73分に柴戸を入れて平野と横並びの選手を作ることでハマりやすさは解消しようとしましたが、それまでの時間でピッチの中の選手たちで工夫しきれなかったのは残念なところです。


また、後半は広島がCHを2枚にしたこともあって浦和のプレッシングに対して逃げ道が増えたので、なかなか浦和はボールを取り上げることも出来なくなっていきました。

江坂、ユンカー、松尾も投入して前への勢いを出そうとはしたものの、関根は状況に応じて外で藤井を留めたり内に入ったりとポジションを移しながらのプレーでしたが、松尾はベースが内~中になっており、明本は手前に立って相手を引き出す役割のままになっていたことで左の外に誰もいないという場面がありました。

終盤は疲労もあるでしょうし、広島が保持になるとどんどん人が前に出てくるというのもあって、浦和はリスクを避けるために後ろ重心になる守備陣と、なんとか点が欲しいので前で待つ攻撃陣で分断されているように見えました。


さて、この試合で最も意見が二分しそうな場面について、ここで少し考えたいと思います。

43'30に自陣ゴールラインでショルツが相手のスルーパスを回収して西川に渡したところからビルドアップが始まり、右サイドから中央の小泉を経由してスピードアップするか!?という場面です。

結果的には敦樹のパスが小泉の足元に入りすぎたのと、小泉が体勢を立て直して前を向いたときには正面に野津田が立っていたので前進できませんでした。小泉が前向きにボールをコントロールしきった時の状況を図にしていったん整理します。

最も理想的な形は敦樹から小泉へのパスが足元に入りすぎず、小泉が自分の前に流しながらコントロールすることで野津田を越えられないまでも同じラインまで進んで関根、シャルクと荒木、塩谷を含めた3vs3のような形で、小泉がドリブルしながら塩谷か荒木のうち先に動いた方が空けた選手を使うようなイメージがあります。

ただ、小泉は足元にボールが入りすぎてスピードがつけられなくなった上に、関根は左、シャルクは右へと抜けていくのに、敦樹と明本はスピードを抑えて小泉の横サポート、モーベルグもシャルクが流れた方向と同じところへ走っていて、関根は塩谷の脇を取ったところで漂っています。

初見の段階では「佳穂!!そこで止まるなよ!!」と思っていたのですが、よくよく見返してみると周りの選手がゴールに迫るためのアクションを起こしていないことが気になりました。


基本的にはオープンな展開にしたくない、試合のテンポはあまり上がらない方が良い、というのがリカルドのスタンスです。それは先ほど切り取った平野のポジショニングのようにボール保持者に対して横サポートを作って、相手を横に振ってスライドが間に合わない場所から進む、進んだ先でまた横に振って相手のスライドが間に合わない場所から進む、ということを繰り返していくイメージだと思います。リスクよりは安全性を重視しているとも言えます。

ボール保持者の小泉に対して、周りの選手が取ったアクションで言うと、明本と敦樹は同じラインに立っています。横サポートの位置です。これは、リカルドのチーム構築の中では正解とされるポジショニングと言えます。


一方で、浦和がクラブのコンセプトとして掲げているのは相手ゴールへ向かってスピードを持って迫っていくことです。それは、前節の雑感でも引用した西野TDのACL総括にもあったように、「今だ!」という時にはリスクを冒してでも選手が前に出ていくアクションを求める、ということになります。

なかなか点が入りにくいフットボールにおいて、点が入りやすい場面というのは守備側の陣形が崩れている時、あるいは守備側の人数が足りていない時です。この場面は浦和陣内深くまで広島が攻め入った後のプレーなので、広島の守備陣形は崩れている状態です。

これこそが「今だ!」というタイミングなのでは?と思えてきます。

その場合、浦和の選手たちが取るべきアクションはより相手のゴールに近い位置に入ることであったり、ボール保持者よりも前に選手が飛び出していくことだと思います。

スピードアップして仕掛けに行ってボールを失えば、当然カウンターを受けてオープンな展開になるリスクはあります。なかなか勝てていない、なかなかゴールが入っていない、そうした理由から先に失点をしたくないことが頭に浮かんでリスクを回避したくなる気持ちは想像に難くありません。

ただ、冒すべきリスクを取れないのであれば、守備戦術が向上してきている今のJ1の試合で、流れの中での得点はなかなか期待できないでしょう。なにより、リスクを冒さず安全にプレーしてくれる相手は守っている側からすれば怖くないはず。秩序をもって正しくプレーすることは悪いことでは決してありませんが、目的はゴールを奪って勝つことであって、秩序を保つことはあくまでも手段の一つです。

余談ですが、昨年4月のC大阪とのアウェー戦での轡田さんのレビューで「秩序と混沌の変化の間際は個性と組織性がかみ合って結果が出ることが多い」といったことを書いていたことを思い出しました。(有料記事なのでそのままの引用はしませんが)

リカルドはここまであまり最後の1/4、1/3のエリアでの崩し方(≒リスクのかけ方)についてパターンを作らず、その部分は選手たちに委ねているような印象を受けます。それは昨年に比べて器用な選手が増えたことで、試合に向けての枠組みをはっきり設定しなくても、ある程度の大枠さえ用意すれば選手たちが上手くポジションを取って前進できるようになっていることの延長線上かもしれません。昨年はそもそもどうやって相手のプレッシングを越えるかのところに時間をかけて取り組んできて、ゴール前の部分の構築が後回しだったのかもしれません。

ただ、リスクの冒し方を自分たちの中で共有しきれていないように見える現段階では、指導者が先にプランAを設定してしまうなど、選手の迷いを減らしてあげる必要があるのではないかと思います。連戦真っ只中なので、そうしたパターン構築のためにトレーニングをする時間が取れないのが難しいところですが。


ないものねだりかもしれません。ただ、安定的にプレーできているからこそ、どこでアクセルを踏むのかという部分に物足りなさを感じた試合でした。チームとしてやるべきことはある程度やれている上での話なので、とても難しい課題だと思います。そして、リスクに対する捉え方は個人の感覚が分かれる部分なので、その目を揃えるのは選手間もそうですし、スタンドや画面を通してみているサポーター間でも、簡単なことではないでしょう。

「決める」と「委ねる」のバランスについては2020年、2021年の総括記事でもテーマにした事柄ですが、どれだけやれることを積み上げていってもこのバランスには永遠に悩み続けるのでしょう。

それでも、ここまで積み上げてきた論理の上に、そうした強引さ、理不尽さが積み重なった時にはとんでもないブレイクスルーが待っているはずです。誰のどの記事で読んだのか忘れてしまいましたが、ポケモンなどでのレベル上げも、最初はどんどん上がっていくけど、ある程度まで行くと1つレベルを上げるために必要な経験値がたくさん必要になるので成長している実感が得にくい、というのを見て納得した記憶があります。

本当に今が後者の段階なのか、もしかしたら行き止まりについてしまったのか、それは誰にも分かりませんが、私は後者の段階だと信じたいし、そうなんじゃないかと思えるプレーはあちこちに見えているので、1試合でも早く勝ち点3と自信を得られることを願います。クラブ通算450勝が5試合続けてお預けですが、もうそろそろ達成してもらって良いですよ。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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