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【雑感】2022/5/8 柏vs浦和(J1-第12節)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2022.05.12


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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数日前にLine Newsから出ていた西野TDのACL総括での以下の部分を改めて考えないといけないような試合になってしまったのかなと思います。


現状では、ある程度のリスクを冒して相手ゴール前に人数を掛ける。ボックス内に2人しかいないのではなく、チャンスのときには4人、5人と入っていく。ただ、チームとしていつリスクを冒して集中投下するのか。「今だ!」という意志決定や判断が不十分。それがチームとして未成熟なところだと認識しています。
選手たちがピッチ内で「今だ!」と判断できるようになるのが理想ですが、その前に「こういうときは行こう」とか、「前半はこうしよう」とか、チームの決まりごとを構築する必要もあるでしょう。


試合の序盤はACLでも見られたように裏を狙うアクションがいくつもありましたし、あと少しのところを柏のDF陣が頑張って詰めたことで浦和のシュートチャンスの芽が摘まれてしまったと思います。

試合の全体としては浦和の保持vs柏の非保持&カウンターという構図でした。浦和のビルドアップはへその位置に入った平野が柏の2トップのゲート付近に立ち、柴戸は平野の左側をスタート位置にしつつ、岩波が中に絞れば左に落ちたりするなど周囲の状況に合わせてポジションを取っていました。左は明本が外、関根が内を取り、右はモーベルグが外、馬渡が内と、それぞれが柏のIHの脇と背中の位置になるようなポジションがベースだったと思います。

「今だ!」という判断のトリガーになるのはあくまでも裏へのボールを出せる選手が作れてから問われるものだと思いますが、序盤に浦和が裏へのアクションを起こせていたのは、岩波、ショルツ、平野、柴戸の4人のいずれかがオープンにボールを持てている場面が多かったというのが理由としてあったと思います。


決定機未遂に終わった13'04~の前進では左に下りた柴戸へサヴィオが縦スライドしており、その脇を取った関根を経由して2トップ裏の平野が前向きにボールを持てました。

相手のプレッシングを越えたところでオープンな選手を作ることで、相手が出した矢印の逆を取ることが出来ます。平野がボールを持つと、中盤の選手の背後にいる江坂、シャルクに対して上島と古賀が対応しようと前に矢印を出しており、モーベルグはその矢印の逆を取りに裏のスペースへ向かってアクションを起こしています。

この場面は古賀の背後のスペースに対しての三丸のカバーリングが素晴らしかったですね。敵ながら天晴れな対応だったと思います。

浦和としては6'30に中盤で平野がすぐにリスタートして、江坂がオープンにボールを持った時にモーベルグが裏抜けしてPA内へ侵入した場面、10'55に岩波から内レーンを裏へ抜けていく馬渡へロングボールを出した場面など、オープンな状態でボールが持てれば裏へのアクションを起こすということが出来ていたと思います。


一方、柏の対応がどうだったかというと、序盤はサヴィオが外にいる明本に意識を取られていたのか椎橋との距離が空きやすくなっていて、柴戸が左ハーフレーンをスタート位置にしていることもあって、椎橋が少しサヴィオ寄りにズレると中村との距離が空いてしまって、16'24の岩波が2トップ間、椎橋ー中村間をズバッと一発で江坂まで通したように、サヴィオー椎橋か椎橋ー中村のいずれかのゲートが開きがちだったと思います。江坂がボールを触る回数が多かったというのは、こうしてゲートが開いていて、そこへボールを刺せる状態の選手が作れていたからだろうと思います。

前半の途中からサヴィオが外側に気を取られずに内側を塞いだポジションを取ることが増えていて、それによって3MFのゲートが狭くなるのでそこで待っている江坂にボールが入りにくくなったのかなと思います。左の中村は序盤から内側をきちんと塞いでいて、それによって外のモーベルグには三丸が早いタイミングで詰めることが出来ており、この試合ではモーベルグは外に開いたときにはほとんど良い状態でボールをもらうことが出来ませんでした。

それだけでなく、5-3-2という陣形がWB以外は内側3レーンに密集しているので、そこをきちんと閉められているということはお互いの距離も近くなるので、前列のゲート(DFからするとMFのゲート)を通るボールに対して前に出てもすぐに自分の空けたスペースをカバーしてもらえるという安心感もあって、思い切って潰しに行きやすくなったというのも言えそうです。


後半に入ると柏は2トップを縦関係にして細谷に平野を監視させているように見えました。森がショルツと岩波の間のコースを塞ぎ、平野も細谷がマークしているので、浦和はCBのところでボールを持った時に逆サイドへ振ってやり直すことの難易度が上がりました。

ただ、こうなった時に例えば49'48は平野がボールサイドによって細谷を引き連れて、柴戸が代わりにへその位置へ入って縦になった細谷ー森のゲートの奥でターンしながらボールを受けて逆サイドへ展開することが出来ていたので、必ずしも相手の変化で苦しんだかというとそうとも言えないかなと思います。

ただ、平野を交代して以降、柏の2トップが浦和のCB間のパスを規制したことと、柴戸と敦樹のタスクと配置がショルツと岩波のキャラクターに合わなかったことが浦和のビルドアップの精度を下げてしまったように思います。

敦樹は平野に代わってそのまま右CHに入りましたが、平野が担っていたへその位置でボールを捌くタスクは柴戸に移譲されたように思います。そうなると、ショルツが運びたいスペースは敦樹が埋めてしまっていて、岩波は右足の方向から相手に寄せられるのでパスを出せる角度が限定されてしまって、柴戸は細谷に貼りつかれてしまって、と前半にオープンにボールを持てていた場所で同じような状況を作りにくくなってしまいました。

73'00は馬渡がショルツの脇まで引いて三丸から距離を取ることで敦樹が小屋松、三丸を越えた位置でボールを受けて、関根が相手に囲まれながらも前を向いてグイグイ仕掛けたことでPA内まで入り込めましたが、5バックがゴール前に集結するのが早く、シュートコースが空きませんでした。

この場面のように決定機未遂の場面はいくつもあったものの、柏の5バックは左右CBが出ればWBがきちんと絞っていて、簡単にはゴール前にスペースを空けてくれませんでした。「未遂」という言葉を使うのは、決定的な場面でシュートを打つまではいけなかったからです。

対5バックは一人でも相手のDFを前に引き出してゴール前にかけられる人数を減らした状態で裏を取ってゴール前に迫りたいですが、平野の交代以降は特にオープンにボールを持てる状態が作れないことで裏へのアクションが起こしにくい、起こしてもボールが出てこないような状況を作ってしまったように思います。

モーベルグを下げて松尾を入れて関根を右に持って行ったのは、関根or馬渡という右利きの2人が右外、左利きの明本が左外になることで、WB裏をとってクロスを入れさせたかったのかなと想像しますが、裏を取るための配球が出来る状況を作れなかったのでこの策は奏功しなかったのかなと。


たらればですが、敦樹を入れたタイミングでショルツと岩波を左右逆にすれば、岩波は右足を振りやすくなるし、ショルツの前は少なくとも味方が埋めてしまうということは回避出来たのではないかと思いました。86'30~の岩波から明本へのパスを大南にカットされてピンチを招いた場面も岩波が右足を振ろうとしても細谷が近いので難しくなってしまっていて、そうなると外方向へボールを出すのが自然になるよねということで大南は明本へのパスを読んで素早くアクションを起こせたのではないかと思います。


リカルドがビルドアップ隊の中で右利きの選手を左に配置することは徳島時代にも岩尾を左CHで起用して左に下したり、昨年も敦樹が同じような動きをして右足を振れるような状況を作ったりはしていました。これは昨年5月の福岡戦の時に作った図です。

大畑がSBに入った時は左CB岩波、右CBショルツで右上がりにして左利きの大畑が左、岩波を中央、ショルツを右という並びにしたりもしましたが、明本はスタート位置を高くするのでビルドアップ隊の左側にはCBがズレるかCHを下すかのどちらかになります。そうなるとキャラクター的にはショルツ左、岩波右の方がしっくりきますし、交代策としてどれくらい可能性があったかは分かりませんが控えには左利きの知念もいたので、岩波→知念として、柴戸を後ろに下しつつ知念を左へ押し出すような方法もあったかもしれません。これはまだ知念がそこまでの信頼を勝ち得ていないのかもしれませんし、リカルドは他の部分を手当てすることの方が優先度が高かったのかもしれません。


丸1日かけて5/2に帰国後も3日間ホテルで隔離、そしてこの試合の前日もホテルで前泊と、イレギュラーな日々の中でのこの試合ということもあってか、試合終盤は柏の選手と浦和の選手で疲労度に違いがあったようにも見えましたが、そういう要素が出てくる前に優位に立っておけなかったことを考えた方が良いでしょう。

さて、ようやくホームで試合が出来ます。いい加減巻き返さないといけない試合数になってきてしまっていますので、ここからのホーム3連戦で流れを変えていってもらいたいですね。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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