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「戻るべき場所」で這い上がれ - AFC Champions League GS 第1節 セーラーズ vs 浦和レッズ


この記事でわかること

  • 浦和が支配的に試合を進めた要因
  • 5レーン攻撃のお手本
  • 更に良くなった後半の配置
  • ACLを良いきっかけにしたい

浦和レッズサポーター間での議論活性化を目標に戦術を解説するマッチレビュー。今回はACLグループステージ第1節、ライオン・シティ・セーラーズ(シンガポール)戦です。

「戻るべき場所」へ戻ってきた浦和は4-1の勝利。現地に赴いてくれた仲間による力強いチャントが響く中で、素晴らしい船出となりました。

レベル差は感じましたが、前半に左サイドを、後半も良いサッカーで殴り続けた要因は、浦和がしっかりと配置を取れていたからです。

浦和が支配的に試合を進めた理由と、今節見えた、改善に向けたきっかけになりそうな内容を振り返ります。

配置で相手を殴るデモ

浦和は前半、左サイドからこれでもか、というぐらい崩しました。

もちろん松尾がドリブルで上回ったこともありますが、ビルドアップから崩しに繋げるスムーズさ、それを実現する配置が大きな要因でした。

定石通りの構図

セーラーズの守備はオーソドックスな4-4-2。

浦和は2トップに対してCB2+1(大畑or敦樹)で脇を取る配置からスタートしました。

最近の浦和CBは、岩波が中央、脇に出るのはショルツが基本なので、2人の配置を見ればどちらにズレたビルドアップ隊を作るのかがわかりやすいです。

今節は右肩上がりでスタートしたので、岩波が左、ショルツが右で起用されました。

ここに2トップ背後の岩尾や右の酒井を加えたビルドアップに対してプレッシングはかからず、余裕を持ってボールを保持できました。

そこからは特に左サイドで、4−4ブロックに対するお手本のような配置で殴り続けることに成功します。

立ち位置で相手に複数の選択肢を突きつける

それは、幅とハーフスペースを使った攻撃です。

4バックの相手には、4枚の間に味方が立てば複数の選択肢を突きつけられるという、5レーン・ハーフスペースを使う理由のデモンストレーションみたいな展開になりました。

この試合では、松尾がタッチラインを踏むWGとしての役割を担って先発。

トップ下の江坂は左サイドを基本とする配置で、左ハーフスペースを主戦場としました。

浦和がセーラーズの2トップ脇・右SH前でボールを持ったとき、セーラーズの右SHが出てこようとします。

ただ、前からの規制が強くかかっているわけではないので、相手SHを越すパスを簡単に松尾まで通すことができました。

目一杯幅を取った松尾にボールが入ると、セーラーズの右SBが出てくるわけですが、そこで生まれるCBとのギャップをどうするか?という点で明らかに混乱していました。

J1レベルの相手だったら、CBがズレるのか、ボランチがカバーに入るのか、といった仕組みがあると思います。

しかし、セーラーズは明らかに混乱し、そのギャップに入る江坂がフリーになることが多かったです。

また、1on1でも松尾が右SBに対して上回れる質的優位も確保していたので、左サイドから抉ってクロスというシーンは多く作れました。

崩しの局面に移る前のビルドアップの時点でも、一旦大外の松尾に入れて戻すだけで、SBがズレた後どうする?という混乱もありましたし、敦樹を加えたローテーションで裏を取ることも割と簡単でした。

事前分析でこのクセを見抜いていたからこそ、幅を取る役割で特長が出しやすい松尾の起用だったかもしれません。

これに対してセーラーズは21:50に、SHを松尾まで下げるような動きこそ見えますが、そこまで確信めいてプレスバックするわけでもなかったです。

その後、セーラーズは23分に右SHを交代。よりプレスバックをするよう指示されて入ったと思います。

浦和の優位は変わらず

ただ、浦和が支配的に試合を進める展開に変わりはありませんでした。

個々の技量の差もかなりあった印象ですが、余裕を持ってボールを保持から相手を押し込めていたので、ボールの回収もスムーズ。

ボールを失う局面を優位な状態で迎えてボールを回収し、殴り続けるという理想的な展開で進められました。

キム・シンウクは脅威だが・・・

セーラーズはボール保持時、CBがGKと同じ高さや開いた位置を取って、繋いでいく意思は見せていました。

ただ、ユンカー・江坂の規制から始まる浦和の守備に対して中央を使うとか、プレスを外していくことは難しかったように見えます。

最終ラインが追い込まれて、前線のキム・シンウクに放り込まざるを得ない状況でした。

確かに彼の高さと強さは脅威でした。

しかし、相手陣内深くから蹴らせて、浦和ゴールから遠く離れた場所で競り合わせたので、問題になることはなかったです。

4-4-2の相手に対して、優位を取れる配置を取り、殴り続けた浦和が前半を3-1でリードして折り返しました。

殴り続ける展開で、実際に点を取れて試合を決められたことは良かったです。

仕組みを変えた後半、昨季に近い形

後半、セーラーズは5バック気味に変更して対応しました。

一方の浦和は、メンバーは変えずに岩波とショルツの立ち位置を変更。

左肩上がりの配置で、酒井をビルドアップに関わらせる形にしました。

前半は前線のモーベルグの外側を酒井がオーバラップする形や、モーベルグが内側に入ることが多かったです。

ただこの2人は共に大外が主戦場ということで、右の内側のハーフスペースの活用は左に比べて質が落ちる印象でした。

後半は酒井をビルドアップ隊に残してモーベルグが大外で幅を取る役割に変更します。

5+1の受け手配置

その分、内側のハーフスペースには敦樹が早いタイミングで位置取る役割分担でした。

後半は前半よりも、よりバランス良く相手MF背後に人を置けたと思います。

大外は松尾とモーベルグ、中央3つのレーンに江坂、ユンカー、敦樹。ここにタイミングを見て大畑が上がっていく役割でした。

昨季を考えても、相手MF背後に5レーンを埋める5枚+フリーマン的な江坂が受け手として立っている形が理想なはずです。

前に人を残せばゴール前も人が増える

後半開始早々、最終ラインに落ちた酒井から、大外高い位置に張ったモーベルグに長いパスが入り、いきなり4得点目が生まれます。

このとき、ペナルティエリア内に前線3人+敦樹を加えた4人が入れています。

モーベルグが時間を作ったこともありますが、基本配置の時点で相手MF背後に入る役割を課した良い影響でした。

相手とのレベル差があり、少人数でビルドアップが問題なくやれるという、確信を持てたことも大きいでしょう。

ただ、ビルドアップ後に前線の選手が足りない局面があるリーグ戦に向けて、良いきっかけになったら良いと思います。

高温多湿の環境下で、60分ごろからはさすがに運動量の落ちた浦和。試合状況もあって省エネな展開になったと思います。

ACLの規定上、外国籍選手は1試合に3名まで。ユンカーがフル出場したということは、次節はシャルクの出番ということでしょうか。

戻るべき場所へ戻ってきた浦和。4−1の勝利で船出しました。

まとめ - 勝つことできっかけを掴む

前提として、個々の技量に大きなレベル差があったことは事実でした。

ボールを奪われる心配がなく、普通にやってればボールを安定して持てるので、前線で待っていてもボールは来るという確信が持てたと思います。

それでも前半の左サイド、後半はモーベルグを加えたチーム全体の立ち位置で、十分な人数で幅を使いつつ崩す体制が久々に見れました。

リーグでなかなか結果の出ない浦和は、ビルドアップ後の相手MF背後に配置する人員が不足するという課題があります。

直近の清水・FC東京戦でも、相手4バックに対して、幅を使って複数の選択肢を持ちつつ、崩しを実行する場面が少なかったです。

今節は昨季の良い時期のような、相手の最終ラインやMFラインに複数の選択肢を突きつける配置が取れました。

ゴールが生まれる順序

このような配置が取れると、ゴールまでの道筋を逆算できます。

十分な人数の受け手が前線にいて、そこに相手のFWラインやMFラインを越えたボールを届ける。

相手の配置に対して、複数の選択肢を突きつける配置を全体が取って優位を得ているので、その優位使ってゴール前まで侵入する。

フィニッシャーが時間とスペースを確保した上で良い状態でシュートを打つことができる。

相手はゴールを守る守備で手一杯になるので、ボールの再回収も可能、また同じ構図で殴り続けるという展開ができたと思います。

勝つことで這い上がる

勝つことや、「うまくいった」という感覚から自信や確信を深めることは、よくあること。

アジアは浦和にとって特別な舞台。どのクラブよりもここに懸ける想いが強いからこそ、ここで結果を残すことで、内容の向上を期待したいところです。

「戻るべき場所」へ戻るために、這い上がってきた浦和。

今度は「戻ってきた場所」で、這い上がるきっかけを掴んでほしいと思います。

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