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【雑感】2022/3/19 浦和vs磐田(J1-第5節)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2022.03.23


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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(磐田戦では『ケチャップドバドバ』を期待したいが?)
「まずは勝つことです。いい内容で勝つことができ、しかも大きな点差になればより良いですが、まずは勝ちたいです」


定例会見での一つのやり取りですが、良い内容でも点が取り切れないで先制できない、先制してももう一つ先にいけない、というもどかしい展開が多かったですが、磐田に対してきちんとボールの前進方法を準備して、それがすぐに得点に結びついたのはとても良かったですね。気分が良いので早速、先制点のCK獲得に至るまでのビルドアップを振り返りながら前半の浦和の狙いを見て行こうと思います。

まずCBはショルツが右、犬飼が左ということでちょっとした驚きはあったのですが、ビルドアップ時は大畑を残して酒井を前に押し出す右上がりの配置でした。昨年の左SBは明本にしろ山中にしろビルドアップ隊として手前や内にポジションを取るよりは大外から裏を取ったり、クロスを入れたりすることが得意な選手だったので、ビルドアップ隊は2CB+2CHで3-1を作ったり、西や酒井を残して左上がりにしたりというパターンでした。

大畑は山中や明本と同じ左利きですが、これまでの試合でのプレーからも見られるように、手前に引いて相手から距離を取りながらボールを受けることが出来て、さらにそこから前へ出ていける躍動感が魅力。そういう選手が入ったことでまた一つビルドアップの形のバリエーションが増えましたね。良い補強です。


で、最終ラインを右上がりにしたことに加えて、今日のCHは岩尾が右、敦樹が左でスタートしました。これは前節の鳥栖戦と逆になったわけですが、鳥栖戦で気になっていたのはビルドアップでは敦樹がへそのポジションを取って、岩尾が左ハーフレーンをスタート位置にしていたことで、後ろから運び出すショルツ、外の低い位置にいる大畑、ハーフレーンの前目の位置からは江坂が下りてくる、ということで、岩尾がプレーするスペースを味方同士で消しあっているのでは?ということでした。

この試合では最終ラインは右上がり、中盤は左にズレるという配置になったため、岩尾がへその位置に入って、敦樹と小泉がハーフレーンをスタート位置にするという、それぞれのキャラクター的にこれが一番しっくりくるよなという形に落ち着いたように思います。

これが早速チャンスになったというのが5'55~のビルドアップでした。このシーン自体は磐田のロングボールを回収したところから始まっていて磐田の配置が崩れているので、整理しやすくするために図は静的な状態のものにしておきます。

磐田の3トップに対して浦和の最終ラインは3枚になってスタートするので一見すると嚙み合わせが良くて嵌められやすいような配置ですが、3トップそれぞれの背後に小泉、岩尾、敦樹がいるので、磐田の3トップのうち誰かが食いつけばその背中を取っている人が空くというジレンマを磐田側に突きつけます。

加えて、浦和の最終ラインは3人ともボールを運んで相手の意識を引き付けることが出来るというのも磐田の3トップを悩ませたのではないでしょうか。前半終了間際のように、状況によって岩尾が最終ラインに下りてていて、へその位置に誰もいないとなった時には犬飼が入れ替わりで前に出てパスコースを提供していたことも磐田側からすれば浦和のビルドアップを捕まえきれない要因の一つだったと思います。これが出来るCBはそうそういないです。これもまた良い補強ですね。

また、関根と酒井が外に張っていることで磐田はWBをプレッシングに使いにくくなりますし、シャドーの背中をCHがスライドすれば江坂がフリーマン的に間に入れるし、左右CBが縦スライドすればユンカーがその裏へ走りこむ、ということで、あちらを立てればこちらが立たずという理想的な状態を作れていたと思います。


この試合の良かったところはすぐに追加点を取れたことだと思いますが、この場面は磐田のビルドアップの形が意図しない状態になってしまったことと、その状態が浦和のプレッシングのやり方にとって都合が良かったからだろうと思います。

先に磐田のビルドアップの原則について整理しておくと、最終ラインは右上がりになって後ろを4枚にしつつ、CHの片方が最終ラインに下りる、さらに前から大森も浦和の中盤ラインを超えたくらいの位置まで下りてきて、最後尾では確実に数的有利な状態にしてオープンにボールを持てる選手を作ることが多いです。

そして、「オープンにボールを持てる選手」が遠藤になるとそこから長短問わず高精度のボールが出てくるので、前線の選手はそれを信じてアクションを起こすのが早くなるというイメージでしょうか。

ただ、10'10~の場面では最後尾は森岡と大井がいて、その前は山本が1枚だけ、遠藤と大森はどちらも前目にポジションを移しているという状態でした。ここで江坂が大井に対して山本(内側へのコース)を切るように寄せることで選択肢を制限し、大井がプレー選択を躊躇したところを逃さずにボールを奪ってユンカーの今季初ゴールにつながりました。


2点目の直後の磐田のビルドアップは山本が大井と森岡の間に下りて、遠藤が中央にいるので江坂とユンカーでは制限しきれなくなって前進されていますし、20'48は大森、山本、遠藤が江坂とユンカーの周りを取り囲んでボールを保持しています。

他の試合でも磐田は同様のスタンスだったと思いますが、この試合では健勇が出場できなかったのが大きかったと思います。これまでの試合では後方で誰かがボールをオープンに持てたら、まずは健勇が裏へ走るなどの1stアクションを起こして、それに対する相手のリアクションを見て他の選手が次のアクションを起こしていた印象です。

浦和はこの試合でも基本的には相手を外へ外へ追い出そうとするので、遠藤はほかの試合と比べて中央で前向きにボールを持てる回数がとても少なかったと思います。それによって磐田側のアクションが鈍く、浦和の方は自分たちからアクションを起こさなくても最終的に自分たちが待っている場所へボールが入ってくるという感覚で待ちながら対応できていたのではないかと思います。


浦和は磐田に少しボールを持たれる時間が増えてきたところでゴールキックから相手を裏返してPKを獲得しましたが、左ハーフレーンで敦樹が相手を引き付けたその背中にフリーマンの江坂が入って相手を外したところから一気に前進することが出来ました。

ユンカーは大井の死角に入った後に江坂の対応のために前に出た伊藤の背後へ流れて行って、敦樹が自分の頭上をボールが超えた後にそのまま相手ゴール前までダイナミックに出ていくことが出来ました。やはり敦樹はこうしてBOXtoBOXに動けるのが魅力ですし、それがしやすい配置になっていたことが活きたと思います。

ショルツがPKのボールをセットした時は驚きましたが、冷静に決めていてなるほどなと。DAZNの試合後インタビューではリカルドがキッカーに指名していたとのことで、普段のトレーニングからそういうところを見せていたのでしょう。


ハーフタイムではお互いに選手交代も含めて色々変更がありましたね。ユンカーからモーベルグの交代はコンディション的なこともあって予定されていたのかなと思いますが、関根を早々に下げたのは予想外でした。磐田はCBの大井を下げてFWのファビアン・ゴンザレスを投入したので、システムごとの変更になりました。浦和の方も左右の入れ替えも各所であったので図にして整理しておきます。

磐田は4-2-3-1へ変更しましたが、ビルドアップでは山本が間に落ちたりしたのでそこまで劇的な変更というわけではなかったと思いますが、ジャーメインが前半にアクションを起こす回数が少なかったということもあって、よりゴールに直接的に向かうアクションが起こせる選手を置きつつ、より前に人数をかけておきたいということだったのではないかと思います。

浦和の方はモーベルグが右SHに入ったので小泉が左へ移動しましたが、これに合わせてCBもCHも左右を入れ替えたというのがとても興味深いところです。

中盤についてはやはり小泉は中に絞ってくるので岩尾がへその位置にいるのは継続させる、そのために敦樹は右側に移ってもらったのだろうと思います。岩尾がへその位置にいることでショルツが運ぶコースも確保されますし、大畑は手前からスタートしても中盤ラインに入っても各選手が窮屈になることは無かったと思います。

ただ、モーベルグは外に張った状態からスタートすることが多く前半は酒井がそこを駆け上がれていましたが、後半はそこがちょっと詰まっているような印象でした。4点目が早々に入ったことで酒井に代えて馬渡を入れましたが、馬渡になってからも右SBはあまり前に出ることは無かったと思います。

SBが出なくても、IHのようなポジションから敦樹が飛び出していけば鳥栖戦のようにネガトラでSBの位置が空いているということは防げますし、この辺りは岩尾とほかの選手の兼ね合いのように、SBとSHのキャラクターとタスクをこれから調整して行ければ良いかなと思います。

デビュー戦で結果を出すことが周囲の信頼を掴む最善の方法ではありますが、相手3人に囲まれているような状況でもコースがあれば自分で進んで決めきることが出来たというのは、コンビネーションやパスが主体になりがちな浦和の2列目の選手たちに大きな刺激になってくれると良いなと思いますし、相手にとってもパスだけじゃなくてドリブルも、シュートも気を付けないといけないという気持ちが強くなると思うので、そうなるとよりパスが通しやすくもなるという好循環も生まれそうです。またしても良い補強。


65分に大畑に代えて大久保を入れて、明本がまたしてもCFから左SBへポジションが変わりましたが、保持でのタスクはCFの時とあまり変わらないのでは?というくらいにどんどん前線に絡んでいっていましたね。

71'10~は右からのクロスに飛び込み、その後のこぼれ球の争いに真っ先に対応したのが左SBの明本でした。また、71'53~は右からショルツへボールが移動してきたときに明本は手前に引いて広いスペースで待つのではなく前に出て行って磐田のSBを押し込もうとしていました。

この時に左SHの大久保が明本がいなくなったスペースを埋めに下りてくるのですが、大久保はこうして低い位置で前向きにボールを持つタイプの選手ではなく、この場面は岩尾にボールを当ててから裏へ飛び出していきますがちょっと抜け出す距離が長かったりしたこともあって、徐々に裏抜けを試みる回数が減ってしまったような気がします。

明本が前に行ってしまうと磐田の右サイドのプレーヤーの近くにいるのは大久保だけになりやすいので簡単には前を向けないという状況も相まって、彼にとってはちょっと不憫な状況、タスクになってしまったなと思います。

ただ、こういう時でも何か違いを見せることができないと出場時間は増やせないので、周りの選手に自分の苦手なタスクを補ってもらうようにコミュニケーションを取って得意なタスクを全うしやすくするとか、そういったことは必要になるかなと思いました。

インタビューを読む限り、大久保はよく考えているし、真面目に取り組む姿勢というのは昨年出場機会を増やしていく過程を見ても伝わってくるので、頑張れると期待していますし、いよいよ本格的にアタッカー陣の競争が激しくなっていくことを楽しみにしています。


昨年に引き続き、相手が非保持で強いアクションを起こさないチームであればこれくらいは当たり前のように出来るよなということが確認できたと思います。今季もG大阪や神戸との試合はそういう性質だったとかなと。

なので、相手の順位というよりは相手のスタイルによって、当たり前のように勝たないといけない試合と、自分たちの成長を確認するための試合に分かれていくような気がします。

前者は非保持はあまりスピードを上げずに「ボールが入ってきたところを奪う」チームとの試合、後者は非保持が速く強くボールを「奪いに行く」スタイルのチームとの試合です。そして、代表ウィーク明けの札幌との試合は後者になるわけですが、そういう相手との試合に向けて2週間の猶予があるというのはポジティブだと思います。


終盤の江坂を見ても、関根を早めに代えたところを見ても、開幕から試合に出続けた選手の疲労は1週間に1試合のペースにようやく落ち着いても簡単には抜けていないのだろうと思います。4月は最初に3連戦、中旬からはACLで怒涛の6連戦が待っています。そこに向かうにあたって「現在は今季初めてほぼ全員で練習ができるようになりました。」というMDPでのリカルドのコメントはとても喜ばしいものですね。

勝って気持ちよくなって普段の雑感よりも長くなりましたが、今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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