PKが決まって犬飼のユニフォームを掲げていたのが別の試合だったんじゃないかというくらい遠い昔に感じてしまいます。ホーム5戦のうち、勝ち点を落とした3試合(神戸戦、G大阪戦、清水戦)はいずれも退場者を出しており、それもプレーの構造や戦術的な面で優勢に試合を進めているのにその流れを壊して相手に勝ち点を献上してしまっているというのは看過できません。
34試合もあれば自ら流れを失って勝ち点を落とすこともあるでしょうけど、これが開幕してから立て続けに起こっているということには不満を持っています。ミスをすること自体は仕方のない面もありますが、同じようなミスを繰り返すことについては厳しく考える必要があると思います。
敦樹の2枚のカードについては、カードを出す人もいれば出さずに注意で済ませる人もいるのかなと思ったりはしますが、1枚目と同じ種類かつ、カードを受ける必要のない場面だったのでプレーが軽率だったという見方をするべきかなと。
とはいえ、敦樹が退場するまでも浦和の保持の方が割合としては多かったものの、思いのほか効果的な前進が出来ていなかったかなと思います。
浦和はCHとCF以外が時計回りに配置をずらして3-4-2-1のような形が保持の基本陣形でした。馬渡を最後尾に残して、岩波が中央、ショルツが左ハーフレーンをスタート位置にするような形でビルドアップを開始します。そして、左は大畑、右はモーベルグが外レーンで幅担当になっていて、対する清水はSHが縦スライドで馬渡、ショルツに向かって出ていって、SBが浦和の幅担当に向かって連動して出ていくイメージ。
SHが縦に出ていかないときは浦和の幅担当に向かってプレスバックをするわけですが、いずれにしても浦和は清水の2トップ脇から前進を開始し、SHの脇あるいは背中を取って清水陣内に侵入しようとしていたのではないかと思います。ただ、これが思ったほど上手くいかなかったのは幅担当に対する横サポートの遅さがあったのかなと。
例えば、27'30~はショルツから片山の斜め後ろを取った大畑にボールが入り、大畑に対して原が出てきたので松尾は原の背後を取りに斜めに動きます。ただ、大畑は原に縦を塞がれているので松尾へはボールを出せないのですが、この時に大畑の横サポートの選手がいると、そこを使って松尾の前のスペースにボールを出したり、横ターンして逆サイドまで飛ばしたりと展開が作れそうです。
この場面は岩尾がサポート役に入るならショルツがボールを持った時に止まらずに鈴木唯人ー片山のゲート奥へ移動しつつ大畑の横サポートに入っても良かったかなと。試合時間でいうと、27'28~27'32の4秒間は岩尾はその場に留まっていたので鈴木唯人に消される形になりましたが、この間に先にポジションを取りに行っていたら違う展開があったかもしれません。
ただ、岩尾にこれを求めるのかというと彼自身の身体能力的に簡単ではなくて、それならその役割は敦樹、柴戸、平野の方が良いだろうと思います。そうなると、岩尾はアンカー固定になるのでしょうけど、決め打ちするなら平野でも良いし、柴戸だって出来るし、という印象です。こういうやりくりって考えれば考えるほど難しいですね。。
流動性を伴うと岩尾のスピード感が良くない意味で目立ちやすい気がする。でもアンカーとして決め打ちにするなら岩尾じゃなくてもという感じもする。難しいねー。
— ゆうき (@y2aa21) April 6, 2022
同じような現象はこの直前に右サイドでも起きていて、モーベルグが馬渡からのボールを受けて山原に寄せられているときに横サポートが伴っていなかったため、相手の中盤ラインを越えてもまたボールを最後尾に戻しています。
ただ、この場面は2トップ脇で敦樹が下りながら岩波からのボールを受けた時に馬渡が後ろのサポートの位置を取り続けており、下りていく敦樹には竹内がついたままなのでモーベルグにボールが入ってもそのあとに前進することは難しかったかなとも思います。強いて言えば、馬渡が敦樹に対してもう少し横サポートのような位置を取って、自分で後藤を越えて行っても良かったかもしれませんね。
J1の中での戦術の流行として、数年間はボール保持するために手前に人数をかけるチームが増えて、それに対する守備は中盤でブロックを作って構えるという構図が多かった気がします。
ただ、Jリーグ側が激しさを強調するようになったり、そもそもボールを安定して保持出来るチームは多くないので前から圧掛けたら奪えるんじゃね?ということでプレッシングをガツガツ行うチームが増えてきているような変化が起きている印象があります。
浦和が今季対戦してきた相手は中盤で構えるチームよりも前に出てくるチームが多く、それに対抗する方法としてより手前に引いて「ここまでついてくる?ついてきたら背後空いちゃうよ?」という駆け引きを仕掛ける方が多かったと思います。湘南戦のチャンスシーンはそれが上手く表現できたものでした。
そのため、手前に引くビルドアップ隊と相手の背中を取る選手との間が空いて、空いているスペースを突くためには運んでボールも人も相手を越える回数よりもパスでボールだけ相手を越える回数が増えていて、それが昨年よりもプレーが急ぎすぎている原因の一つだろうと思います。
単純にプレー選択の回数が多いものが習慣として定着していくので、非保持でスピードアップする相手との試合が続くと、意識しなければそういう相手向きのプレーを選択してしまいがちなのかなと思ったり。そういうところで、もう少し静的な局面を作って運んだりしながらボールを前進しても良いのでは?という場面でもパスでボールだけ進めようとしてボールの行き先で詰まってしまっているのかなと。
運ぶことの利点はボールの行き先に要員補充も出来る点と、パスよりもボールの移動に時間がかかるので周りの選手がポジションを取り直しやすいことです。急いだパスが増えるということは、周りの選手がポジションを取り直す時間が短くなるということなので選手個々に単純なアスリート能力としてのスピードが必要になってしまって、岩尾のような選手が上手くハマらない場面が出てきてしまうのではないかと思います。
逆に清水は鈴木善宜にしろ、ヴァウドにしろ浦和の2トップ脇を運んでいく意識は高かったように思います。開幕から鈴木の相方探しとして立田や井林を起用してきましたが、ビルドアップ時に開く速さであったり、オープンにボールを持った時に運ぼうとする意識の高いヴァウドの先発起用が続いているのは納得出来ます。
清水はビルドアップを2CB+2CHの4枚で行い、SBが幅を取りながら浦和の中盤ラインの背後にポジションを取り、SHが内側に絞るという4-4-2がスタートのチームの王道パターンとも言うべき配置を取っていました。
そのため、清水が押し込む時間帯になれば浦和の方は松尾もモーベルグも最終ラインに吸収されるようになり自分たちのペースを回復するのが難しくなったかなと思います。
それでも、結果的には敦樹が2枚目のイエローカードをもらうまでの展開はヴァウドが江坂の脇を運んできていますが浦和としてはそこは運ばせておいて次のボールの出ていく場所を狭く限定できた良い守備からのカウンターでした。
敦樹が退場してからは4-4-1の状態を続けていて、1トップだけでは清水の3枚のビルドアップの方向付けをすることが出来ず、ズルズル後ろに引かざるを得なくなりました。80分になったところで明本と関根を投入して4-2-3のような形にして、リカルドの試合後コメントでも「この交代は勝ちに行くための交代である」と話していたように、保持も非保持も前へ出ていく姿勢を見せました。
個人的にはもっと早く代えないのかなーとやきもきしましたが、ギリギリまで交代を引っ張って、最後に相手に面を食らわせつつ明本と関根が連続的に最大出力を出せる時間の長さが10分程度とリカルドは踏んだのかもしれません。この辺りは現場の人間の勝負勘なのでしょう。実際にそれで流れをフラットなところまでは戻せたと思います。
敦樹の退場後に入った安居と宮本はすんなり流れにフィットしていましたし、明本と関根は言わずもがな。ようやく知念がピッチに立てたことも不幸中の幸いとでも言いましょうか。
しかし、「結果が出なくても内容は良い」という自信の持ち方には賞味期限があると思います。サッカーは内容の良さを競う競技ではない以上、結果を求めて試合に挑むわけで、内容が良くても結果が出ない状況が続けば、結果が出ない原因(ネガティブな要素)を探すことへの意識が強くなるでしょうし、それが強くなりすぎるとお互いを減点評価し始めて信頼関係が壊れていくというのはサッカーに限らずどんな組織でも起こり得ます。
キャンプの時に岩尾が徳島での経験を話していましたが、今まさにそれに似た状況が起ころうとしているような気がします。
お互いに要求ばかりしていて、建設的ではない話ばかりでした。それで結果が出なければ、余計にお互いが疑い始める、減点し始めるということも起きました。
ちょっと恣意的な引用の仕方をしましたが、求めるだけでなく、受け入れて、そこから前へ進んでもらいたいです。
最近は、辛い気持ちになったらあの日の彼の言葉を思い出してクラブを信じることにしています。まだまだ状況は変えられるし、FC東京戦は勝ってからアジアに行こう。
「今でも十分、浦和レッズというクラブはすごく大きいと思っています。しかし、全てが一つになっているかと言われたら、もしかしたらなりきれていない部分はあるのかなと思っています。これだけのチームが、浦和レッズの関係者、選手、現場スタッフ、応援してくださるファン・サポーターの方々が本当に一つになったときは、とんでもない力が発揮されるんじゃないかと、いつも思っています。さらに浦和レッズの名がアジア、世界に轟くようになっていくことが、僕自身が望んでいることなので、まだまだ選手として残り1ヵ月あるので、その中でもやれることはしっかりやっていきたいと思っていますし、レッズが好きなので、良くしていきたいなと、レッズの関係者のみなさんが思っているように、同じことを考えています。
そしてファン・サポーターの方にひと言だけ。いいことも悪いこともすぐにニュースになってしまうのが浦和レッズだと思っているので、僕ら選手は、子どもたちが『浦和レッズのサッカーはすごいね』『僕も浦和レッズのサッカー選手になりたい』と思われるようにプレーしなければいけないですし、いつも応援してくださるファン・サポーターの方々が、小さい子どもたちが『浦和レッズの応援ってすごいね』『俺たちも応援していきたい』と思われるような存在に、今でも十分なっているとは思いますけれども、最初に言ったように、もっともっと大きくしていくと考えるのであれば、もっともっと増やしてもいいのではないかと思います。選手もそうですし、一緒に戦ってくれているファン・サポーターの方々も一緒に、浦和レッズの先を見てやっていけたらいいのではないかと思うので、今はこういった状況なので話したりということはなかなかできませんが、そういった考えをお互いに持って、浦和レッズで一つになって進んでいければいいと思います」
今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。