先週のFFS杯の勝利の余韻もないうちにコロナショックに見舞われてしまい、スタッフも土田SD、西野TDまでも含めて登録したり、控えメンバーに2種登録したばかりのユース所属の早川を組み込むなど、誰がどう見てもスクランブルやんけ!という状態だったので、試合開始時点ではどうなってしまうのだろうという不安はありました。
ただ、その割には相手の京都のプレースタイルも相まって試合全体で強度高めの展開でしたね。これくらいの内容でやれるなら勝ち点0は絶対にNGですし、試合後のフラッシュインタビューでリカルドが言っていたように、今シーズン目指す地点を考えれば、傍から見て同情されるようなことがあったとしても勝ち点3を取っていかないといけないので、とても残念な結果になってしまいました。
京都はチョウキジェのチームらしく、4局面全てで前へ前への矢印を持ち続ける、ボールも人もどんどん相手陣内に入れていくというスタンスだったので、浦和の方は27分過ぎのビルドアップまではほとんど下から繋いでいくことはせず、明本と酒井を左右それぞれ高い位置で張らせて岩波、西川、犬飼からロングボールを入れるという方法で京都の矢印を裏返そうとしていたと思いますし、リカルドも試合後会見でそのようなことを言っています。
(今日の京都サンガの印象と、京都はかなりディフェンスラインを高く上げていたが、どのように点を取ろうという狙いがあったか?)
「前半の立ち上がりに見せた形が一つです。ウインガーを張らせてダメージを与えるのが狙いでした。京都はハイプレスをかけてボールを奪おうとするチームなので、立ち上がりでそれを避けるようなプレーをしました。」
ロングボールを繰り出す3人のボールの質は高いですし、明本も酒井もJ1の中で屈指の強さのある選手なので京都の白井、麻田の両SBにボールを跳ね返させることはほとんどなく、ボールを入れた場所の周辺へボールを落とすことに成功しています。
京都のIHとWGの選手は運動量の面で左右差が大きくて、麻田の側は松田・豊川が一度前に出ていたとしてもすぐに自陣へ引き返して酒井vs麻田のセカンドボール争いに加勢する場面が多く、浦和も関根と安居がそのエリアにはスタンバイしているのですが、すぐにボール保持者を複数人で取り囲まれて同サイドに閉じ込められて前進は出来ない、あるいは奪われてカウンターへという場面が続きました。
それと比べると明本vs白井の方は武田・武冨のサポートは手厚かったわけではないですし、展開としても8'20~や14'00~のように浦和から見て右から左へという横の揺さぶりによって明本にボールが渡ることが多く、そのおかげで左外で明確に1v1に持ち込むという場面が作れたので前半に得点の匂いがしたのは左側でした。
ただ、ある程度ゴール前に侵入できそうな状態でボールを持てたとしても、京都の方はCBがカバーで外まで出て行くのか、CBは中に残ってIHやWGに戻らせることで最後のところはやらせないように割り切るのか、この2つの使い分けがとても上手くできていたなと思います。
ここまで書いてきたような浦和がSBに対してロングボールを入れたとき(京都が矢印を前に出せていない状態)ではCBは中に残って他の選手にSBのサポートをさせて、27'20~のように浦和のビルドアップに対して全体でプッシュアップするときには麻田の背後(ライン際)までメンデスがスライドしてスペースを埋めています。
当然と言えば当然の動きなのかもしれないですけど、この試合では特にメンデスは出るべきか埋めておくべきかの判断を間違えることはなかったと思います。上福元のファインセーブが何本もありましたが、シュートコースがたくさんあったかというとそういう場面は決して多くなくて、むしろシュートコースが多い場面ほど浦和は枠内にシュートを飛ばせませんでした。
ウタカも浦和がCBが低い位置にいる状態からロングボールを多用したことで敦樹、柴戸、安居はボールの出先のサポートをする必要があるので、そこでボールを逃がされてしまうとDFとMFのギャップのところが広く空いてしまってウタカがフリーな状態でボールを持てる場面が多発。
さらに、京都のビルドアップも安居が川﨑を監視していたこともあって京都のCBは早めにロングボールを入れていきますが、31'10~が成功例だと思いますが、豊川が酒井と岩波の間へ走りこんで浦和のDFを後ろに引っ張って、MFとのギャップを作ってフリーなウタカへボールが渡るという展開を作りました。
京都とすれば自分たちがボールを持っていても、持っていなくても、チームで最もボールを扱える選手がフリーでボールを持てる状況が生まれる仕組みになっていたように思います。
後半開始早々の、スローインから始まってハーフレーンを抉られての失点もウタカはペナルティエリアの中央でずっと止まっていたけど、川﨑がハーフレーンから裏に抜けたことで浦和の最終ラインが下がってくれて勝手にウタカがフリーになったという感じでした。
浦和側とすれば柴戸は外に出てスローイン対応、敦樹は馬渡が外に開いているので犬飼との間に下りているという状態でCHが2枚ともバイタルエリアからいない状態。この時に逆サイドの関根が絞って埋めるのか、非保持ではトップ下のような位置だった安居が落ちて埋めるのか、どちらがチームとしての正解なのかは分かりませんが、そこが曖昧になってDFとMFの間のスペースを空けてしまいました。
クロスボールに対して中央にDFを3枚(CB2枚+逆サイドのSBでニア・中央・ファーを埋める)とマイナスのボールをケアするMFを1枚(DFの手前を埋める)の3-1の状態を作るのがオーソドックスなパターンだと思います。今回はその「1」の部分が埋まっていませんでした。
もちろん他にも危ないシーンはありましたが、埋めるべき場所を埋めていなかったことで失点してしまったというのは本気で優勝を目指していくチームであればやってはいけないことです。
逆に浦和のこの試合最大の決定機だったであろう61'48~の関根が強引に麻田を振り切ってマイナスクロスを江坂に渡した場面は京都がこの「1」の部分を埋められていない状況でした。
関根が強引に麻田を振り切ってメンデスを引き出したことと、敦樹がニアに入ったことで武田がその対応のためにより深い位置まで下がったことによって京都は3-1の「1」の部分が不在で江坂の周辺にぽっかりスペースが空きました。江坂はここが空くと分かって関根からパスが来る前に少しバックステップしてシュート体勢を取っていますが、残念ながら枠外。。
お互いにここまでぽっかり「1」の部分が空いてそこへボールが入ったのは1回ずつだったと思います。そこを決めた京都と逃した浦和というのが3ポイントと0ポイントの差になってしまいました。
終盤に行くにつれて京都の中盤も運動量が落ちてきて上下動が追いつかずスペースが生まれてオープン気味な展開になりました。小泉が入ってからは左の大外担当が馬渡になって、明本はより内側でプレーするようになりましたかね。
敦樹も積極的に前に絡んでいましたし、明本も含めて京都のDF陣と勝負する人数はいたと思いますが、今度はそのアクションによって空くスペースを使う選手が少なかったように思います。去年の「誰がアクションを起こすの?
」問題の逆パターンというか。
奥へ奥へ人数をかけていくことで、今度はクロスが引っ掛かった時に対応するために手前のスペースを埋めておくネガトラのフィルター役がいませんでした。先ほど図にした決定機の直後の63'00~はクロスが跳ね返された後の中央のスペースは誰も埋めていなくて、ウタカが下りてボールを拾いに行くのについて行った岩波が一次対応していました。
ボールの行き来が多くなったことで適切なポジションバランスをとるための時間が十分に確保できず、さらにビハインドの展開による焦りも手伝ってアクセル踏みっぱなしという感じでした。勿論、後から試合を振り返ってこの文章を書いているので、どんどん前のめりになった結果ゴールが奪えて勝てていれば、それはそれで良かったねとなるのかもしれません。
ただ、試合展開やスピード感を制御したい、あまりオープンな展開を好まないというのをリカルドになってから積み上げてきたので、特に60分台の中盤の強度で上回ったことでボールを持てる時間が増えた辺りはもっと落ち着いてポジションを取る時間を取りながら相手の矢印を観察し直すことが出来たらよかったのかもしれません。
優勝争いに食い込むためには勝ち点65は必須でしょう。そこに何ポイント上乗せできるかが分かれ道かなと。つまり1試合平均の勝ち点2以上が求められます。平均勝ち点を2にするためには、神戸・ガンバとのホーム2連戦での連勝が必要ということになります。
定例会見では「リーグの序盤でしっかりと優勝の可能性を残しながら進めていきたいです」とリカルドもコメントしています。だから目の前の試合で求められるのはそういうことです。なので、我々もそういうつもりで。
今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
#HungryforVictory って謳うなら負ける言い訳を探してる場合じゃねぇ
— ゆうき (@y2aa21) February 17, 2022