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【解説】浦和レッズは何処へ向かっているのか?今の浦和レッズを語るうえで、外せない前提知識。キーワードから現在地と目的地を知ろう

コラム・考察

KM
KM

2022.12.30


この記事でわかること

  • 浦和レッズが大切にしていること
  • 浦和レッズが今後25年間で目指していること
  • 浦和レッズのトップチームの目標
  • フットボール本部が設立された理由
  • フットボール本部の体制
  • フットボール本部の考え方
  • フットボール本部が行ったこと
  • 浦和レッズのコンセプト
  • 現在のチームがどうやって作られているか
  • 3年計画の本当の意味

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浦和レッズとは

今の浦和レッズを語るうえで、様々なキーワードがあります。

3年計画、フットボール本部、土田SD・西野TD、フロント、監督交代、浦和のコンセプト、浦和を背負う責任・・・。

これらは今の浦和レッズを語るうえで外せない用語です。

耳にすることも多く、こういったワードを起点に議論が巻き起こっていると思います。

しかし、キーワードを単体で、点で捉えるのではなく、歴史の流れなどを踏まえて線で捉える必要があります。

3年計画は3年で優勝するための計画である。確かにその通りです。間違っていません。計画は失敗しました。

しかし、それだけで捉えてしまうと、現在の浦和レッズが何を出発点としていて、どこを目指していて、どう到達しようとしているか、を整理するのは難しいでしょう。

We Are Redsの一員として

浦和レッズというクラブは、Jリーグの中でも非常に特殊なクラブです。

クラブはサポーターの存在を「お客さん」と捉えていない、ともに闘う仲間である、We Are RedsのWeの一員であると、はっきりと公に発信しているクラブです。

「応援する側」と「応援される側」という分け方はしません、とクラブ側から明確に外へ示しているクラブは少ないでしょう。

クラブとチームが頑張ってサッカーをして、サポーターはグッズを買ったり試合会場や画面の前で応援をする、それだけの関係ではないということです。

それをお互いが認知して、サポーター一人一人が浦和レッズを「自分ごと」として捉えているからこそ、唯一無二の埼スタの空間が作られています。

一方で「自分ごと」の意味は、熱く応援することだけではありません。

クラブが目標や考えを持ってプロジェクトを走らせているなら、サポーターもそれに対して能動的に考えて、評価して、時には意見を出して、参加することも求められるはずです。

そのためには、現状が成り立っている前提や背景に対する認識を合わせて、目線を揃えることが必要です。

そこで今回は、「浦和レッズは今、どこへ向かっているのか?」と題して、今の浦和レッズを考えるうえで押さえておきたい前提知識を整理していきます。

浦和レッズを知るための理念、ミッション、ビジョン、バリュー

今の浦和レッズを理解するためには、浦和レッズの理念やビジョンを知ることが必要です。

いきなり堅苦しい用語で申し訳ありません。最初から「3年計画ってこういうことです」と説明した方が簡単かもしれませんが、それは後半までお待ちください。

なぜなら、そもそも浦和レッズって何?から知っていくことが、本当の意味で今のフロントや監督・選手、チームを知ることに繋がるからです。

トップチームに絡めてわかりやすく説明しますし、なんとなく頭に入れておく程度でも良いので、飛ばさずに押さえておいてください。

これを理解すると、浦和レッズが何を大切にしていて、どこへ向かおうとしているのか、が見えてきます。

理念とMVVとは?

理念やミッション、ビジョン、バリュー(=MVV)は一般的に、会社や組織において、組織力の向上や存在意義の確立のために存在するものです。

浦和レッズもこれらを策定していて、公式サイトで公開されています。

この中で理念やMVVがどういう立ち位置なのか、トップチームとの関係性を含めて図で表すと次のようになると思います。

理念やMVVは、組織の存在意義や役割を定義するものなので、上位の概念です。

レディースやアカデミー、ハートフルクラブ事業など、浦和レッズという会社・組織全体に適用されます。

そのため、個別に最適化しすぎず、抽象的で普遍的であるべきですが、今回はその中でトップチームに深く関連している部分を解説していきます。

理念 - 価値観/存在意義

まず理念とは、その組織が大切にする考えや価値観です。基本的には変わらないもので、その組織が存在する理由とも言えます。

「浦和レッズ理念」のページの一番上に「浦和レッズの宣言」としてあるのが、

「浦和レッズは、サッカーをはじめとするスポーツの感動や喜びを伝え、スポーツが日常にある文化を育み、次世代に向けて豊かな地域・社会を創っていきます。」

という文言です。

また、少し下の方に5つの大切にする価値観として、【本物志向】【調和】【革新と伝統】【誠実さ】【事業性】があります。

理念なので抽象的であるのは当然なのですが、イメージしづらいと思うので、なんとなく頭に入れておけば大丈夫です。

ここから、理念を基に作られたMVVをトップチームと絡めて見ていくことで、具体的にイメージしていきましょう。

ミッション - 使命/役割

「浦和レッズの宣言」次に明記されているのが、「根本的な活動方針」です。

これはミッション(使命、役割)に該当すると思いますが、その一つに「さいたまと世界を繋ぐ」という言葉があり、以下を使命や役割としています。

  • 浦和レッズが強くあることで、ホームタウンを始めとしたサポーターがアジアや世界を訪れたり、異なる文化を体験する機会を提供する
  • 世界の各国の町がそうであるように、自分の町のサッカークラブを応援することが誇りとなること、ともにアジアと世界の舞台に立てるように努力する

浦和レッズというクラブが、ホームタウンとの繋がりと、浦和からアジアや世界に出ていくことを使命として強く意識していることがわかります。

トップチームに当てはめると、僕たちサポーターも含めて、他のクラブと比べてもACLやCWCに強いこだわりを持っていますし、それを浦和レッズという組織の価値観としても持っているということです。

ビジョン - 将来像

ビジョンはその組織が長期的に目指すゴール、つまり将来像です。

理念にある価値観や、ミッションにある使命や役割に基づいて、長期的に何を実現したいのか、自分たちが将来どうなっていたいのか、を示しています。

公式サイトには「今後の25年に向けたビジョン」という項目があります。

ここで宣言されているビジョンとは、「世界を目指すために、あらゆる分野でアジアNo.1を目指す」です。

トップチームにおいては、日本のみならず、アジアでも継続的に優勝争いをするチームを目指すことが明言されています。

世界へ向かうために、アジアでNo.1になる。これは理念やミッションとして「さいたまと世界を繋ぐ」という価値観があるからです。

そしてこのビジョンを実現するための目指す姿として、「強くて魅力のあるチーム」「安全・快適で熱気ある満員のスタジアム」「自立し責任あるクラブ」があります。

クラブによっては例えば「多少結果が出なくても若手がたくさん活躍するチーム」とか「プレー以外でもサポーターとの距離が近い暖かいチーム」等があるかもしれませんし、それを望んでいる方もいるかもしれません。

ただそれが良いか悪いかという話ではなく、浦和レッズというクラブが目指している姿は、「アジアNo.1の強豪クラブになること」なのです。

そのために「自立し責任あるクラブ」が作る「強くて魅力のあるチーム」が「安全・快適で熱気ある満員のスタジアム」でプレーしている、そういう光景を目指しています。

バリュー - 行動規範

最後にビジョンの次に来るバリューです。

日々の行動規範の定義ですが、トップチームにとって特に重要なことが一つあります。

それは「本物志向」という価値観に沿った規範です。

まとめると以下のようになります。

  • 試合を行う舞台にはなるべく、試合以外の要素を入れない
  • サッカーという競技、選手の一流のプレー、サポーターの熱気ある雰囲気で、浦和レッズにしかないスタジアムを作り上げること

これが浦和レッズにとって大切なことであり、極上のエンターテインメントになるとしています。

この組織全体に関わる話に、マスコットのレディアがピッチに登場しないことまで明言されています。

チームは強くて魅力的であること、選手はピッチ上のプレーで魅せること、サポーターは熱気あふれる雰囲気を作ること。

これが浦和レッズに関わる人々に求められることです。

トップチームの目標

ここまでで、浦和レッズが何を大切にしていて、何を目指しているのかを、理念やMVVをを通して知ることができたと思います。

ここからこれを、トップチームのフロント、チーム、監督や選手に落とし込んでいきます。

理念やビジョンは上位の概念ですので、当然ながら、トップチームという組織もこれに沿って進んでいます。

具体的な目標

では、トップチームはどこに進んでいけば良いのでしょうか。

ひとつ上の概念であるビジョンを確認してみると、浦和レッズは今後25年間で、アジアNo.1になることを目指すとあります。

ここで注意したいのは、25年間のうち1回でもJリーグ優勝とACL優勝を達成すれば良い、というわけではありません。

ビジョンにもあるように、常に日本とアジアで優勝争いをして、その中で継続してタイトルを獲得していくことが目標です。

つまり、ある一定の期間や、特定の体制の時に優勝争いをできれば良いのではなく、時期や体制に関わらず、長期に渡って浮き沈みの少ない、強いチームであることを目指しています。

わかりやすい言葉を使えば、日本とアジアの強豪チーム・ビッグクラブになることです。

日本とアジアで常に優勝争いをすること。これがビジョンに基づいて一段階具体化した、トップチームの目標となります。

クラブ主導のチーム作りへ

次はこの目標を実現するために、どのような体制で、どのようなアプローチを採用し、どのような計画で進んでいくか、を考えます。

経営と強化の切り離し

そのために立花現社長が2019年末に行った選択は、「クラブ主導のチーム作り」、それを実際に主導する部門を抱える「フットボール本部」の設立です。

ここで注目すべきは、浦和レッズという会社の経営的な観点からある程度切り離され、スポーツ面に特化した、独立した組織体制が構築された点です。

立花社長の構想

この構想に繋がる考えは、現在の立花社長が副社長時代から抱えていたものです。

立花氏は2018年2月に、三菱重工からの出向ではなく、浦和レッズに完全に籍を移す形で副社長に就任します。

その後、同年4月に堀監督、山道強化本部長が解任となると、立花副社長が新たに強化本部の責任者となり、GM職に中村修三氏を迎えます。

この時の会見で当時の立花副社長が、浦和レッズの強化体制の課題について説明しています。

要約すると「強化部がトップチームの強化のみならず、経営的な業務を兼任しており、やることが多すぎて強化に集中できない」ということでした。

実際、この時にGM職に迎えた中村修三氏には経営業務を割り当てず、強化に集中してもらうことが説明されています。

フットボール本部の設立

後のリリースを見ると、完全に切り離すことはできなかったようですし、「浦和のサッカーは勝つサッカー」と放言した中村修三氏の招聘は結果的に失敗でした。

しかし、強化部門は経営業務から切り離して、スポーツ面の強化を専任業務として行う、という考え方自体は続いていきます。

そして2019年末に行ったことが、GM職という一つのポジションを作るのではなく、フットボール本部体制という組織の設立というわけです。

フットボール本部の担当領域

フットボール本部の担当領域はトップチームのみならず、レディースやアカデミーなど、いわゆるスポーツ部門全体を統括することです。

他にもトップチームの投資効率の管理など、ビジネス的な業務も含まれていて、責任者として戸狩本部長がアサインされました。

トップチーム強化部門

さらにその中で、トップチームの戦略立案や強化を専門で担当するチームが発足。

責任者として土田SD、補佐として西野TDがアサインされます。

「トップチームの強化は専門チームが行う」という立花社長の構想が組織体制として整ったというわけです。

今回は便宜上、トップチームにのみ関連する部分もフットボール本部と呼称します。

フットボール本部によるコンセプト策定・運用

こうして2019年末から土田SDを先頭としたチームが、トップチームの強化を担当していくことになりました。

理念から掘り下げてきた今回のお話も、ついに普段見ているチームや試合に繋がります。

フットボール本部がどういう考えのもと、何をやっていくのか、は2019年12月の新設会見で明らかになりました。

過去の失敗から出発

まず土田SD・西野TD体制が「常に優勝争いをする」ために何を出発点にしたのかというと、「過去の失敗」です。

浦和レッズが「常に優勝争い」をしていない課題として「一貫したコンセプトの不在」を挙げています。

「浦和のサッカーは何なの?」と問われた時に、答えられない。一貫したコンセプトがないため、監督・選手に求める基準、サッカーのスタイルがその都度変わってやり直す。

その中でも短期的な結果だけを求め、求められ、それを繰り返してきたと説明しています。

「監督を切ってそれでOKか?」の繰り返し

直近のシーズンを振り返るだけでも、7年近くミシャの強いコントロールのもとでチーム作ったあとは、毎年のようにシーズン中の監督交代を繰り返し、継続性はないままその度にリセットボタンを押してきました。

その時々の監督が求める選手を獲得し、次の監督になるとその選手は力を発揮しづらくなる光景は、見ていても辛いものがありました。

その時々の監督にいわゆる全振りをして、体制が終わればまたやり直す。だから成績が安定しないという流れは、振り返れば2008年以降からずっと同じ道を辿っています。

こういった流れを最大の課題として捉えて、改善していく、これが今の浦和レッズの出発点です。

コンセプト策定へ

その改善への取り組みとして、フットボール本部が主導して「一貫したコンセプト」を策定、それを基にチームを作っていくことになります。

これを「クラブ主導のチーム作り」としています。

これは浦和自身の課題だけではなく、こういった「総力戦」ができないと、J1の上位では戦えない環境になっていることも事実としてありました。

浦和のアイデンティティの確認

こうして、「浦和のサッカーはどうあるべきか」を示すコンセプトを策定することになりましたが、その前段階の根幹となる価値観として、1年前に策定された「浦和レッズ選手理念」から「浦和を背負う責任」を強調して全面に押し出します。

また、「浦和のために最後まで走り、闘い、貫く」というスローガンを「こんなに重い言葉はない」として、当時の選手に伝えたことも土田SDから話されています。

土田SDの危機感

このタイミングで、浦和レッズの選手がどうあるべきか、という価値観が改めて強調されましが、なぜこのタイミングだったのでしょうか。

浦和に所属する選手はホームタウンである浦和という街を代表し、最後まで浦和のためにプレーしなければならない。

その意識を強く求めるこの価値観を強調した背景には、浦和というアイデンティティが薄くなっている、そういう危機感が土田SDにあったことが会見からは伺えます。

ミシャ時代の功罪

このセクションは個人的な推測を含みますが、ミシャ自身のコントロールが強かった時代に、ミシャサッカーを体現できる選手を集めた結果として、広島から選手を数多く獲得したことにも触れる必要があるだろうと思います。

ミシャのサッカーは5年の時をかけて、2016年に一つの芸術として完成します。

当時のJ1歴代最高勝ち点を獲得し、ルヴァン杯も獲得。

不可解なルールによりJ1優勝という記録は残らなかったものの、当時の日本で最高のチームだったことは疑いようがありません。

僕自身も好きでしたし、これは一つの体制を突き詰めた形として、結果を残しました。

一方で、中心選手から聞こえてくる声に「浦和のために」より「ミシャのために」が強調され過ぎていないか?という感覚は当時からあったのかもしれません。

ミシャ時代が終焉を迎えると、目の前の結果を求める裏で「浦和レッズのサッカー」って何なの?という問題に、明確かどうかはさておき、改めて向き合っていたのだと思います。

この時期、あるいはフットボール本部体制が始まってからも、ミシャ時代の選手、特に槙野などからは「浦和のサッカーはボールを持って相手を崩して攻撃する」ことであり、それが「アクションサッカーで魅力的である」という話が出てくるようになります。

個人的には「ボールを持って崩す=アクション」という図式になること自体に大きな違和感はありますし、アクション、つまり主体性を持って戦うことは、例えば2020年の大槻体制でも強調されていました。

またリカルドは相手に合わせて相手が嫌なことを狙う監督でしたので、個人的にはリアクションだったと思うのですが、槙野にとっては攻撃的でアクションサッカーとなるようでした。

いずれにせよ、ミシャに陶酔した選手たちにとって、ミシャのロマンに正義を感じること自体は理解できますし、別の角度から見た「主体性、能動性」を受け入れづらい面もあったのでしょう。

批判めいた流れになってしまったのですが、人によって角度は違えど、浦和レッズを良くしたいという同じ想いを持っていたことは重々理解しています。

それは誰のサッカーなのかという話

ただ捉え方はどうであれ、ここで問題なのは、それは本当に「浦和レッズのサッカー」なのか?それは「ミシャのサッカー」ではないのか?という点です。

また、「浦和レッズは攻撃的でなければ」と個別で監督や選手、スタッフが発信したところで、責任と裁量を持った人物や組織が不在であれば、トップチームという組織全体の合意事項として固めることはできません。

目の前の結果を求める中でこの問題も内在していたものの、明確に認識することや、手を打つことはなく、やはりその時々の監督に任せていく流れを2019年末まで繰り返します。

そしてついに限界を迎えた浦和は、2019年に残留争いに巻き込まれました。クラブの規模を考えれば、まさに大失敗です。

アイデンティティの定義

このようにフットボール本部は「過去の失敗」を直視した結果、「浦和レッズのサッカー」を定義し、ひとつの体制や監督が変わる度に一から作り直すサイクルを終わらせる決断をして、出発します。

しかし「クラブ主導」でチームを作っていく、つまり「浦和レッズのサッカー」を作る以上、サッカーの内容に関わるコンセプトを作る前に、浦和レッズのアイデンティティを改めて定義することは必要だったはずです。

浦和レッズはどういう歴史と価値観の上に成り立ち、何を目指していて、どんな光景を理想としているのか。

新体制発足時にこの「浦和を背負う責任」について当時の在籍選手に伝えたことも明言されています。同時に「理解しきれていない選手もいる」としています。

選手が浦和でプレーする限り、どこを向いて何を体現する必要があるのか、それをこれから在籍する選手には価値観として持ってもらう、そういう価値観を持てる選手で編成する。

そのことで、フットボール本部が考える浦和のアイデンティティの上に成り立つ、サッカーの内容に関わるコンセプトを体現してもらう、という流れだったのではないでしょうか。

土田SDが何を背景にこのような価値観を押し出したかは定かではありませんが、ずっと浦和レッズを見てきた彼なりの危機感がそうさせたのは事実だと思います。

コンセプトの策定

これらを踏まえて、サッカーの内容に関わる3つのコンセプトが作られます。

浦和レッズサポーターなら当然、毎日、朝昼晩に読み上げていると思いますが、おさらいしておきましょう。

  1. 個の能力を最大限に発揮する
  2. 前向き、積極的、情熱的なプレーをすること
  3. 攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること

当時の具体的な説明としては「DFラインを高く設定したコンパクトな守備でボールを奪い、ボールを奪ったらスピードを意識して最短距離でゴールに迫っていく」とあります。

いわゆる守備からの攻撃、ポジティブ・トランジションで一気にゴールに襲いかかるサッカーに主眼を置くことが想像できます。

大枠の思想としても、攻撃的であること、2点取られても3点取ることを目指すとあります。

根拠として、これが埼スタが熱狂するサッカーであり、浦和レッズにしかできない唯一無二の空間になるとしています。

個人的にも、埼スタではスピードのある選手やドリブラーが一気にゴールに迫る瞬間が最も盛り上がると感じます。

当然、完全に同じ監督や選手は2人といませんし、時代の流れや他クラブとの相対的な関係によって、多少の振れ幅はあることは予想されます。

しかし、ひとまずは、その時々の体制に依存しすぎない、目指すべき「浦和レッズのサッカー」は、コンセプトとして定義されました。

コンセプトの運用

フットボール本部主導でコンセプトが策定されました。次は、このコンセプトをもとに強化を進めていく必要があります。

監督の選出や選手の編成という意思決定にコンセプトを適用していくためには、コンセプトを基準にして評価をするシステムが必要になりました。

ここからは西野TDの担当領域となり、積極的なテクノロジーの活用を推し進めます。

具体的には、コンセプトを体現する監督や選手を評価するための定量化です。

コンセプトの指標化や言語化、数値化を行い、データやITソリューションを活用することで定量的な評価の導入、さらにスカウティング業務の改革も進めていくことになります。

これにより、コンセプトに沿った評価基準の取りまとめはもとより、補強ルートにも大きな変化があったことはご存知の通りです。

3年計画

こうして体制やチームが進む方向性が定まりました。

次は、実際にこのプロジェクトを推し進めるための計画が必要になります。

そうして計画されたのが、期限を設定して目標を定めた「3年計画」になります。

ビジョンの上に成り立つ計画

「3年計画」は「3年で優勝する」ことがフォーカスされますが、ここで思い出して欲しいのが、前半で説明した浦和レッズのビジョンです。

「今後25年間で、あらゆる分野でアジアNo.1になる」というビジョン。

その実現のために、どこかで1回優勝するのではなく、「常に優勝争い」ができるクラブになることです。

「3年計画」が発表された会見でも明言されているように、2023年以降は「常に安定した優勝争い」、それによる「リーグ連覇」を実現していくことが計画の前提となっています。

つまり、「3年計画」はビジョン達成のための、中期計画という位置付けになります。

計画の内容

今まで一貫したコンセプトが不在だった浦和ですので、この改革には時間を要するとしながらも、結果も求められるクラブであるということで、3年で優勝するという計画となりました。

具体的には、1年目はコンセプト浸透の期間とし、ACL出場圏と得失点差+10、2年目はコンセプトを全選手が体現する、そして3年目に優勝をする、ということでした。

1年目は大槻監督が留任し、2年目と3年目はリカルド・ロドリゲスが監督を務めました。

この選出も当然、浦和が目指している姿やコンセプトを体現してもらうことを前提としており、監督本人とも事前に合意をしたうえでの就任となっています。

一方で、土田SDが途中で休養したことによる変化、2020年の結果を経てリカルドを招聘する際、フットボール本部のコンセプト解釈がズレているのでは、と指摘されても仕方がない発言があったりもします。

今回は前提の共有なので、この3年間の振り返りや考察は細かく行いません。

ただ前提が変わるレベルの方針転換などは起こっていないので、2019年末から始まった取り組みが、プロセスで失敗が発生しても、監督が変わろうとも続いていることは事実です。

フットボール本部を評価したり、監督が変わっても同じ軸で評価できるのは今の取り組みがあるからです。

そして今まさに、今後25年間でアジアNo.1クラブになることを目指している浦和レッズの、3年計画の3年が終わったということです。

まとめ

今の浦和レッズの前提をまとめると以下のようになります。

  • ホームタウン・サポーターを世界と繋げることを使命のひとつとしている
  • 今後25年間でアジアNo.1になることを目指している
  • 日本とアジアで常に優勝争いをするクラブを目指している
  • 常に優勝争いをするために、クラブ主導のチーム作りを進めている
  • そのためにスポーツ面に特化したフットボール本部を設立した
  • 土田SDを責任者、西野TDを補佐とするチームが、トップチーム強化を専門で担当している
  • クラブ主導のチーム作りのために、選手に求める価値観を定義した
  • 浦和レッズのサッカーを表すコンセプトを作った
  • コンセプトに基づいて、監督や選手を編成している
  • 常に優勝争いをするチームになるために、中期計画として3年計画を進めた

僕たちサポーターが浦和レッズを語る時、主なトピックは目の前の試合やシーズン単位のパフォーマンス、それに関連した監督や選手の編成です。

しかし、それらの議論は現在成り立っている前提の上で行われるべきだと思います。

2022年や、3年計画を振り返るにもこの前提が必要です。

3年計画の目標が未達成、という面では失敗でしょう。ですが、この前提がある場合、それだけで取り組み全てダメという結論にはならないはずです。

逆に、3年で優勝していたり、来季で優勝したとしても同じです。

「今後25年間でアジアNo.1になる」ために「クラブ主導のチーム作り」が進んでいるか?を評価する必要があり、必ずしも優勝できたら全て良かった、とはならないはずです。

今回は前提の解説になりますので、実際に「コンセプトを基準にしたクラブ主導のチーム作り」というプロジェクトが走り始めた、この3年間の実際の内容やオペレーション、進捗がどうだったか?という考察は入れていません。

それは次回行う・・・はずです。

長文を読んでいただきありがとうございました。

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浦和レッズについて考えたこと

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