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論理を増強するのは個人の質(2021/5/30 浦和vs名古屋)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2021.05.31


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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18時試合開始だと、20時に試合が終わってそこから晩ご飯を食べるので、いろいろ取り掛かるのが遅くなっちゃいますね。逆に19時開始の方が先に食事を済ませてしまって、試合が終わったらそのままの流れで感想をまとめられて良いのかなと思ったりします。


さて、スタメンから見えた浦和の狙いとしては、相手がスタイル的にウノゼロを美学とした堅守が売りの名古屋が相手ということで、浦和の保持の時間を長くして出来るだけマテウス、相馬というSHを敵陣深くに押しとどめること、最後尾と中盤でそれぞれ数的有利を作って安定してボールを前進することを目論んだのではないかと思います。

サイドについては目論見通り、西と山中が高い位置を取りながら相馬とマテウスを押し込むことが出来た場面もあったものの、名古屋の守備ブロックが非常にコンパクトだったためピッチ中央のエリアでは数的有利を作りながらも稲垣と米本がボールの移動中にボールサイドの2枚をチェックできるポジションを取っていました。

これによって、柴戸や小泉が名古屋の2トップの奥でボールを受けることが出来ても、稲垣と米本の素早くアプローチを受けるのでなかなか中盤で前向きにボールを持てるシーンが作れませんでした。

また、浦和の方もこれまでの試合では2トップの間に入った柴戸へのコースが空くのであれば、まずはそこへ入れて柴戸にターンしてもらって相手のボランチが動いたところを使いたいというパターンがありました。しかし、名古屋の2トップのゲートが空いているのは誘い水で、ここへボールが入った時にはターンしたり、そこでボールを捌いたりする動きが先述の通り稲垣と米本の鋭い出足で牽制されていました。


20分ごろには柴戸がそれまで定位していた中央から左側へ流れて行って稲垣を引き連れることで、入れ替わって中央へ入ってきた小泉がフリーになったり、右のハーフレーンで名古屋のボランチ周辺に入るのを武田ではなく関根にしたりと工夫する場面は見られましたが、コンパクトかつロックした相手にきっちりついていく名古屋の守備を崩すには至りませんでした。


それを踏まえて後半に入るところで浦和の方はいくつかビルドアップの手直しを行いました。これは主に名古屋のボランチ周辺のエリアをどうやって使っていくかということを考えたものだったのではないかと推測します。

武田に代えて敦樹を投入し、敦樹は柴戸と併用されている時には基本的に左のハーフレーンをスタートポジションとして、槙野の少し前から左脇のあたりにポジションを取ることが多いです。そして、状況によって柴戸が最終ラインに下りた時には柴戸がいた中央のスペースへ入ります。最終ラインで槙野が内側から中央に寄りやすくなったり、分かりやすく中央に柴戸が入ったりすることで岩波を自然とハーフレーンへ押し出してあげることになり、相手2トップのプレッシングから解放されて前向きなプレーをしやすくなりました。

また、関根がハーフレーンで下がりながら受ける回数が減ったり、西も関根も外レーンにいる回数が増えたりすることで米本の脇のスペースから名古屋の選手を遠ざけようとしているようにも思えますし、小泉がトップ下に入ったことで米本と稲垣の間にも人がいる状態になるので、ここの出足を鈍らせようという意図もあったのではないかと思います。

これによって、46'10に岩波が2トップ脇から運んだり、48'03にはまたしても岩波から米本の脇のスペースに顔を出したユンカーに縦パスを入れたりと、後半開始早々にボール前進の改善が見られました。


浦和がこれまで4バックのチーム相手にサイドを崩せたのは、相手の最終ライン4枚に対して各レーンを埋めるように5枚並べることで必ずどこかで1人余る状態が生まれているということが理由にあったと思います。しかし、名古屋はこうなることを防ぐためにSBとSHはそれぞれの担当する選手の動きについて行くことが徹底されており、幅を使って攻めようとしてもスタートポジションを高い位置にすればするほど、相手もそこにいる状態になるのでスペース自体は無くなってしまうことになります。

これは札幌のようなチームとの対戦でもそうですし、大分や広島のように5バックで守ることで5vs5の状況になる相手に対しても似たような現象は起きていました。


さらに、ボランチはピッチ中央をスタートポジションにして前にも横にも相手を潰しに出て行きますが、中谷と木本については試合を通してほぼゴール前のエリアから離れることがないため、ボランチの脇まで侵入できたとしても、そこからゴールのある中へ向かって行くことは容易ではありませんでした。

例えばそういう時にドリブルで単独突破してしまったり、アバウトな浮き球を力技で収めてシュートに持って行ったりということが出来ればよいのですが、今の浦和の人員としてはチーム全体で配置のバランスを保ちながらゴール前に入っていきましょうというスタンスです。

ここで無闇に突撃しないことによってカウンターを受けるシーンを作らせなかったり、高い位置で即時奪回が出来たりするのですが、ゴールから離れた場所でどうなろうが、結局ゴール前をきっちり固めれば簡単には失点しないでしょ?と割り切れている名古屋のようなチームを相手にする時には馬力不足になりがちなのはこれとトレードオフというか。

それでも、ACL圏内を狙って自分たちよりも上位のチームを食っていくためには、汰木からのクロスであったり、関根に訪れた2度のシュートシーンのどれかをゴールに繋げる必要がありますし、後半の論理的に開けた米本の脇のスペースをターン一発でかいくぐれるような物理的な力が強くなれば中谷も木本ももう少し早めに対応するために食いついてスペースを空けてくれる可能性も出てきます。つまり、個人の質が高くなるほどチームの論理の有効性が高まるということになります。

この辺は川崎戦のあとに小泉が話していた個々の技術的なレベルアップという話になってくるんでしょうし、ここ最近噂が出てきているように選手を補強して解決していくという話になっていくのかもしれません。


少し話がそれましたが、そういった理由で浦和としては前半よりもボールを前に進められるもののゴール前までは出て行けないという展開の中、名古屋はCFの山崎を下げて長澤を投入し中盤を3枚に増強することで、浦和の前進経路を埋めにかかります。


名古屋の方は最前線が1枚にはなりますが、中盤以降を9枚でがっちり構えられてしまうと、浦和の方もなかなか切り込んで行けず。89分に槙野が稲垣に向かってドリブルをしてひきつけて、稲垣の背後に明本が入ってボールを受けるシーンなどがあったものの、明本からパスを受けた西が珍しく持ち出したボールが長くなってクロスを入れらませんでした。

ただ、それぞれのマーク担当をはっきりさせている相手にはこの場面の槙野のようなパスではなくドリブルでボールを動かして相手が自分のマークに加えてドリブルで近づいてくる選手も気にしなければいけない状況を作るのは有効な手段の一つです。

もちろん、どんな場面でも運ぶのが正解というわけではないですが、相手がしっかりとブロックを固めている時にはパスをしているだけではなく、ドリブルでボールと人が同時に守備者へ近づくことで味方をマークから解放することが出来たりもします。

昨年も大槻さんが後ろから運ぶことについては指摘していましたし、少しずつではありますが岩波も槙野もトライしています。また、柴戸や敦樹などボランチの選手も同様です。適切な配置は取れいてることが多いですし、誰かが動いた後にそのポジションを違う人が埋めに行くという流れはスムーズになってきているので、ここは勇気をもってトライする回数を増やしていけると良いなと思います。

守備をしている時にパスしかしない相手とパスもドリブルもしてくる相手なら、後者の方が考えないといけないことが増えて面倒じゃないですか。



また、前半は浦和がなかなかボールを持てませんでしたが、これは名古屋がそもそも後ろからボールを繋ぎながら進んでいくスタイルではないため、プレッシングが来たら山崎へ入れるという分かりやすい約束事を設定しており、さらに山崎がこの役割を見事に果たしていたことで、プレッシングに出ても誘導する前にボールを蹴られてしまって徒労に終わってしまったことは大きかったと思います。

ボールを奪えても結局低い位置からのスタートになるので、そうなると自分たちでポジションを整える間もなく名古屋の米本や稲垣のネガトラが発動してボールを奪い返されたり、キープできたとしてもかなり遅らされてしまったりと攻勢に出て行くための条件がなかなか整いませんでした。

徳島戦の前半もプレッシングが上手く機能せずにどんどん押し込まれたことで、ボールを奪えてもポジション調整する前にプレッシングを受けて苦しくなってしまうことがありました。徳島戦は敵陣から西川までボールが流れてきた時に一旦時間をおいて、全体が配置を取る時間を確保して保持からサイクルをスタートさせるように試合の流れを変えてチャンスを作りました。

この試合でも、なかなかボールが落ちつけられないのであれば、一旦流れを止めてしまって、自分たちで呼吸を整えてからプレーを始めても良かったのかなと思います。ホームなのでゆっくりゆっくりプレーをしにくい、どんどん攻めないと、という意識があるのかもしれませんが、こうした「パウサ」はボール保持を4局面の循環の中心にしようとするのであれば必要なことだと思いますし、それが出来ている場面もあるので、自分たちで意図的にこれが出来るようになると良いなと思います。


78分から87分くらいまでの間、武藤が左SHで汰木が2トップに入るという時間がありました。これについては守備での狙いがあったのか、攻撃での狙いがあったのか初見ではよく分かりませんでしたし、試合後会見でもそれについてのQAは無さそうでしたので、これは是非いろんな人の意見を聞いてみたいところです。

個人的には3月ごろは汰木はロングボールの出し先になったりする場面もあったので中央からハーフレーンあたりでザイオンや岩波あたりから相手の中盤を越えるボールを入れて起点になってほしかったのかな?という想像はします。ユンカーがあまりロングボールを受けるのが得意ではなさそうなのでそういった役割を期待したのかなと。ただ、それなら興梠を入れても良いのかもしれないなとも思いますし、この辺りはそのうち答え合わせのような場面が来るのかもしれないですし、試合を観返していくとヒントが落ちているかもしれないので、時間がある時にまたチェックしてみても良いかもしれないですね。


これで5月の試合をすべて消化しましたので、また1ヶ月のまとめ的なものを出そうと思います。

今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。


浦和レッズについて考えたこと

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