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【雑感】2022/3/6 浦和vs湘南(J1-第3節)

マッチレビュー

ゆうき
ゆうき

2022.03.10


本記事はゆうきさんがご自身のnoteで連載中の記事になります。

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リカルドが定例会見でもMDPでも「攻撃も守備も構造がしっかりしている」と評した湘南でしたが、構造がしっかりしているからこそ相手に対してどういうポジションを取るのかという点で前半は狙いが見える内容でした。

ただ、後半は湘南は2枚替え、浦和もビルドアップのスタート位置を少し変更したことで意図的に前進してチャンスを作るということはなかなか出来ませんでした。

試合トータルの内容で言えばこの試合よりももっと良かった試合がここまでの4試合の中にあったと思いますが、勝ちに値する内容だったことは間違いないと思いますし、何より自分たちが「内容は悪くない」と信じ続けた意図的なボール前進から先制点を奪って勝てたのは1%でも疑心暗鬼になりかけたメンタルを補ってくれると期待したいです。


「意図的なボール前進」をするために把握しておきたい湘南の守備の構造は下の図のようなイメージです。

2トップが中央を閉めることで外へ誘導し、誘導した先の2トップ脇のスペースは多少相手との距離があったとしてもIH、続いてWBが次々と縦スライドして相手にプレッシングをかけていくというのが浮嶋さんが監督の時から継続している手法です。

これは個人的に事前に観ておいた開幕戦の柏戦も、前節の鳥栖戦も共通していたので、今年も湘南は5-3-2の陣形を取る限りは継続していくだろうと思います。


そして、これに対して浦和が取った配置は酒井、大畑の両SBのスタート位置を低めにしてIH、WBから距離を取っておいて前向きにボールを受けられるようにするというものでした。これが最も上手くハマったのは33'35~の前進だったと思います。

岩波から西川へパスが出た段階でショルツも大畑もバックステップで手前に引いてきています。そして湘南は約束通りショルツに対して茨田、大畑に対して岡本がスタート位置から距離があったもののプレッシングに出ていきますが、ショルツも大畑も早い段階でポジションを取れていたのでパスを前向きに受けて相手のプレッシングを観察できる状況を作れています。

そして、茨田が出て行ったことによって空いた背中のスペースに関根が入り、大畑が関根へ縦パス、関根が岩尾に落として岩尾が前向きにボールを受けて広く空いたスペースへ一気に運び出していきました。


先制点の場面は少し経緯が違いますが、IHが前を覗いた背後のスペースで前向きにボールを持てる選手が作れるとそこから湘南の3CBにスクランブルを発生させることが出来ました。

湘南がプレッシングの意識共有がはっきり出来ているのでこのプレッシングに押されて上手く前進できない場面は何度もあったので必ずしも良い前半だったね!とは言い切れませんが、やろうとしていることが見えて、その形でチャンスが作れていたのである程度の手ごたえを感じながら前半を終えたのではないかと思います。


試合のスタートは平野と岩尾といういわゆるゲームメーカータイプ2枚を並べたものでしたが、基本的に明本が中央、関根と松崎がハーフレーンにいる状態で、各選手がボールを失った後のプレスバックが早いので柴戸、敦樹のように強い矢印で前向きにネガトラを潰しに行かなくても、前線と中盤で相手を挟み込んでボールを回収できていたのではないかと思います。

ただ、この辺りは湘南の中盤のボール扱いのスキルがここまで対戦した相手と比べれば落ちるという点もあったかもしれませんし、湘南のビルドアップに対しても上手く制御できたかというと、そうは言い切れないのかなとは思います。

前半の途中から湘南は町野が浦和のCH周辺に下りてくるようになってきて、浦和の方が相手を外へ誘導して行けたとしても内・外の2レーンに人数をかけてボールをキープされることが多々ありましたし、配置上、湘南は必ずWBが逆サイドで待っているのでそこへボールを逃がすことも出来ていました。


37'40~は浦和の2トップ(この時は流れの中で江坂と松崎が入れ替わっている)に対して3CBで最初から数的優位が出来ている状態からスタートしています。

3CBの中では一番攻撃への参加が得意、好きな舘がボールを運んで浦和の1stラインを超えるとその先のエリアでは浦和のSHと2CHの3人を岡本ー茨田ー町野ー瀬川の4人がそれぞれ浦和の選手を挟み込むような形で数的優位を作ることでボールをキープし、瀬川から逆サイドの広いスペースにいる杉岡へボールを展開しました。

ただ、この瀬川から杉岡へのボールが浮き球で緩かったのと、ボールの落下点が杉岡を超えしまったので、杉岡がボールをコントロールしたときには酒井が目の前まで詰めていますし、逆サイドに振られた浦和の残りの選手たちがしっかり中央でブロックを作るだけの時間が確保されました。


試合を通して湘南の決定機が無かったのも、浦和のトランジションの速さというのもあったと思いますが、湘南側がボール扱いの技術的な部分でやりきれないところがあったように見えました。


後半になったところで浦和はビルドアップの時に酒井のスタート位置を高めに変更しました。46'05、50'55と立て続けに左からボールが右に渡った時に前半は岩波の脇であったり、湘南のIHの脇あたりにポジションを取っていた酒井がハーフラインくらいの高さでスタンバイしていたので、これはチームとしての方針転換があったのではないかと思います。

試合後会見でこの点についてのQAは無かったので真意はわかりませんが、左は江坂がサポートに入ることで相手のプレッシングの背後で数的優位を作りやすかったものの、明本が中央に留まるので右は松崎と酒井が杉岡と山本にそのまま監視されやすいので、酒井を押し上げればその分杉岡を押し下げることが出来るのでIHの裏にスペースを作りやすくなるということを目論んだのかもしれません。

結果的には岩波がボールを持った時のサポートが減ってしまうので、かえってビルドアップが窮屈になってしまって思うようにボールを持てなくなってしまったように思います。

65'25~のビルドアップは左SBに移った明本が永木の脇にポジションを取ってショルツからのパスを受けて永木の背後のスペースをドリブルで運んで行ったので左右非対称の役割があったのだろうと思います。


湘南は後半に入るタイミングで米本と永木を投入して前半よりも中盤の強度の部分にテコ入れをしますが、前半と大きな違いはあまり感じませんでした。

3-5-2vs4-4-2で生じる3バックvs2トップの優位性と、中盤のミスマッチによるズレで浦和の中盤ラインを超えるところまではいくものの、かつての湘南が持っていたボールを持っている選手を後列の選手がどんどん追い越していくようなアグレッシブさは無かったのでゴール前から浦和の選手が引き出されるというような場面は無かったと思います。

もっとも、山口さんはこれまでのキジェさんや浮嶋さんよりもボール保持ではあまり配置を崩さずに安定してボールを前進させたいのかなというのがここまで数試合を観て感じている印象です。

こうした「静的」なボール前進を成功させるためにはポジショニングはもちろんですが、空いたスペースへしっかりとボールを通せるだけの技術が必要ですし、「ここだ!」という場所を見つけたときに自分でギアを上げる判断力が必要になります。

技術的に足りない部分があったとしても勢いをもって強引に前に出てこられた時に守備側がその圧を受けてしまって一瞬パニックが生じて穴が開くということがあるのですが、今の湘南は穴を開けようと相手を揺さぶるためにボールを扱う技術(いわゆる「止める」「蹴る」)が求められる方向でサッカーをしているように見えるので、昨年は16位でありながら得失点が-5という試合を壊さない安定感があること自体は納得なのですが、勝ち点1を3にするためにゴールを奪わないといけないというところでの火力不足という点で今年も同じようなシーズンを過ごすことになるのではないかと思いました。


浦和は選手のコンディションが一番苦しい試合で個人のスキルの部分で優位に立ちやすい相手との試合だったというのは救われたかもしれません。とはいえ、1勝は1勝ですし、これでようやく内容に見合った結果を得られましたし、ようやく試合が1週間空くところを勝って迎えられたので現場もスタンドもいくらか心穏やかに次の試合へ向かっていけるのではないでしょうか。

MDPでも「チームに迷惑をかけたので必ず何かで返したいですし、今季にかける気持ちが一段と強くなりました」と話していた明本は、この試合でもファウルでは?という場面でも笛を吹いてもらえなかったりしましたが、CF→左SB→CFというとんでもタスクを見事にこなし、最後までゴールに向かってプレーし続けてくれましたし、何より2点目のお膳立てとなるボールキープは素晴らしかったですね。

リアルタイムで「今のお前のプレー良かったぜ!!」と名指しで選手を称賛できないので、今はとりあえず大きな拍手を送ることしかできないですが、声出しが出来る状況だったらゴールを奪った馬渡を讃えた後には大きな明本コールがあったのではないでしょうか。まだまだ神戸戦の借りは返しきれてないと思いますが、ミスをしても、思ったような判定をしてもらえなくても、力強く闘ってくれたのは良かったと思います。


クラブ史上最高勝ち点の74だった2016年も34試合で5分6敗と11試合で勝ち点を落としているので、まだまだ挽回可能です。故障やコロナ療養から選手がどんどん戻ってきていますので、1週間しっかり力を蓄えて次の鳥栖戦でも勝ち点3をもぎ取ってくれることを期待しましょう。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


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